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ソーシャルネットワークとブログで変わる世界

個人においても,ビジネスにおいても社会的ブームとなったブログのインパクトの一つは,「情報更新の容易性」であり,既存の掲示板に替わる新たなコミュニケーションツールとして多くの可能性を秘めている。今,多くの企業がブログ機能をもったWebサイトを構築しようとしており,掲示板以上の可能性があるコミュニティ構築に期待を寄せている。ブログで成功を収めるためには,その特質に注目することがポイントである。 通信&メディア研究会では,ブログビジネスに情報流通の仕組みを変える可能性があるかどうかを探った。

ブログとは

ブログは「Webログ」という言葉が短くなったものである。Webログと言われていたこともあるが,最近はほとんどブログである。 ワープロ感覚で文章を書けば,個人のホームページが完成する。20年近く前のパソコン通信の文化は,テキストベースで発言とコメントが繰り返されるという形のものだったが,著者と読者がイコールになるという世界である。それが今ブログでできつつあるのではないか。 先行したブログの仕組みは,SixApart社のMovableTypeというシステムである。現時点で Livedoor,はてな,ココログなどのサービスがある。ココログはNiftyのものだが,SixApart社の製品である。それ以外に韓国のCyworldでHompyというミニブログには1400万ユーザがいる。

ソーシャルネットワークとは

ブログとソーシャルネットワーク(SNS)は全く概念が違うものである。SNSは,友達の友達は皆友達という仕組みである。Googleの技術者のオーカット氏が作ったorkut.comが世界的に有名である。 一番大きいのはアメリカのfriendster.comで1700万人いる。匿名性を排して,なるべく実名でビジネスの仲間作りをしていこうというものである。mixi.jpは,2005年3月ごろ60万人だったのが6月に80万人,8月に100万人となった。 ほかに同窓会サイト「ゆびとま」や,学会,市民グループなどに応用されている。例えば熊本県八代市のように,市で運営するSNSや,神奈川新聞の市民記者ブログサイト「カナロコ」が有名である。 ブログは個人の意見を書くもので,個人の交友関係を定義するのがSNSということである。この2つがRSSにより密接に結び付いている世界が作られることになる。 2005年3月時点の資料で,ユーザ数は111万人,2年で10倍の1042万人と予測している。ブログは書かないといけないので,自分の意識を高めて書いていかなければならないが,SNSは単に参加するだけである。 ブログやSNSの特徴的な仕組みがトラックバックとRSSである。RSS(RDF Site Summary)は,W3Cで決めた仕組みである。Resource Description Framework(RDF)というXMLをベースにサイトのサマリーを取得する。RSSはWebサイトで何が更新されたのかヘッドラインを取得するためにサイトのサマリーを投げる仕組みとして登場した。ブログの中で個人がどんどん新しいブログを書いていくので,そのサイトサマリーを取り出す仕組みということで標準になりつつある。 RSSは,アップルの新しいOSやWindows Vistaのブラウザで標準の機能となる。RSSを取得するにはリーダーソフトをダウンロードする。朝日新聞や日経BP,各種ブログでRSS配信が始められている。

はてなダイアリー

はてなという会社は技術志向の会社で開発力がある。 AmazonとWebサービスを連携し,本の表紙やDVDのタイトルの写真をAmazonからリアルタイムで取り込み,表示する「はまぞう」という機能をもっている。 いろいろな言葉を定義するはてなキーワードがある。「現代用語の基礎知識」と組み,2005年末の「現代用語の基礎知識」にはてなからの新語が100語入るというアナウンスがあった。 Web上ではウィキペディアが有名だが,はてなキーワードには世相を反映した言葉が多く入っている。

Cyworld

韓国のCyworldは面白いサイトである。日本に進出しているが,国民性の違いで,日本では受けないだろう。韓国の人口4000万人のうち1400万人という韓国の国民の3割以上が参加していて,若者のディレクトリと言われている。韓国の若者で入っていない人はいないという状況である。 これも実名制なので,個人情報保護の問題でトラブルが起こっている。いろいろな人が,自分の顔写真,名前が全部分かってしまう。ミニブログという形でいろいろ書いているので,どんな人かということも分かってしまう。従って社会現象化しており,会社や学校ではアクセス禁止という形になっている。

mixi

SNSの草分け的な存在でダントツのユーザ数を誇っている。日本のSNSは,GREEが先行したが,10万人超えた辺りから失速しmixiが一人勝ちになっている。 100万人のユーザのうち,mixiにお金を払っている人は1割もいない。100万人を超えれば広告収入があるし,少しはプレミア会員ということでお金を払っている人もいるので,何とかなるのだろう。だれでも簡単にグループを作れて,100万人の中から同じ趣味の仲間の人たちを集めることができるというのも,mixiの面白い部分である。

カナロコ

神奈川新聞のカナロコは面白いサイトで,市民記者を募集して,みなとみらい線の6つの駅ごとに特派員,記者を任命している。記者,特派員が駅に新しい飲み屋ができたというようなことをブログに書いていく。 皆が勝手にブログを書くのではなく,神奈川新聞社が編集したものである。ブログは編集されていないので信ぴょう性が低いとされがちだが,カナロコではそれをある程度保証している。

BizPal

イーストのBizPalはSNSとブログを合わせたものである。相手をより深く理解するサービスを通じて仕事を応援する。 今までのブログやSNSと違うのは,閉じた空間を提供するところである。例えば,お金を払った人だけが利用できる有料会員,社内限定という空間を作る。そこには管理者が必要なので,管理権限を提供して管理してもらうというものである。画面デザイン,商品データベースなど,ASPサービス型で全部カスタマイズして提供する。

Web・電子メールからブログ・SNSへ

Webは,今まで読むことしかできなかった。基本的にはリードオンリーだったものに対して,誰でも簡単にリードライトできるものに変わったというのが大きい。 インターネットの荒れた世界を示した2ちゃんねるではなく,友好的で優しい世界であるmixiは,個人の名前が出て,だれがだれを招待したかが分かっている。電子メールが冷たい連絡なのに対し,SNSは温かい対話ができる世界にネットワークを変えていくのではないか。

(通信&メディア研究会)

2005/10/16 00:00:00


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