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情報誌・雑誌出版の課題と,進化したDTPの姿

出版社から見た従来のDTP制作

現在,印刷会社におけるデザイン・レイアウト制作は,ほとんどがDTPによっておこなわれている。
2〜3年前までの印刷会社で導入されているDTPと言えば,コンピュータはMacが一般的であり,印刷向けの日本語フォントは1書体でもかなり高価,専用プリンタも高価であった。さらに,DTP用のアプリケーションも専門的なもので,DTPや日本語組版の知識やスキルを持ったオペレータが必要とされていた。また,写真はアナログ撮影によるポジ入稿が一般的で,印刷会社にスキャンしてもらわなければ,高解像の印刷用画像を得ることは出来ないものであった。
したがって,国内の出版社から見ると,このような専門的な知識やスキル,高価な設備が必要である業務を専門の会社に業務委託することはきわめて自然であり,効率的であったと言える。

出版社を取り巻く状況の変化

しかし,出版社を取り巻く状況は大きく変化しつつある。
多くの出版社では,情報誌・雑誌を出版するだけでなく,同時にWebでの情報発信をおこなうクロスメディア化を進めるようになった。そのためには,発信する情報(コンテンツ)を内部で共有することや,データの2次利用も想定し保持する必要性が大きくなった。
また,特に情報誌分野では,Webやフリーペーパーとも競合する面が大きくなっている。したがって印刷物であっても,従来以上に情報の鮮度が要求されるようになった。さらに,出版市場全体の成長率も低下しており,内製化によるコスト削減を要求されることが増えている。
このように,DTP制作の内製化が情報誌・雑誌の編集部門の課題として挙げられるようになってきた。

情報誌の編集部門におけるDTP制作の実現

角川書店が全国各地で編集発行している情報誌「ウォーカー」は,全国共通の編集記事と地域版の記事,さらにはテレビ情報や映画館の上映スケジュールなどの分野から構成されている。
約1年ほど前から,これらの記事の制作進行管理をおこない,編集部門でのDTP制作を実現,さらには全国共通の記事を共有することで,編集業務の効率化をおこなったという。

編集部門でのDTP制作が実現した背景には,システムの導入のハードルが低くなったことや,自動組版の導入も比較的に低コストで実現したことなどがある。また,デジタルカメラによる撮影が一般化し,大部分の画像データを編集部内で作成している。
印刷業界から見たDTPの進化は,一般に高機能やスピード,生産性に注目していることが多い。しかし,編集部門での内製化を志向する出版社にとっては,自動組版などによる操作のスキルレス化,Windowsプラットフォーム利用によるシステム全体の導入コスト低減など,導入の容易さが重要なポイントとなっている。

(関連セミナー)
【Adobe InDesignによる編集制作の効率化】

2005/10/18 00:00:00


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