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幅広い知識で正しい解決策を見いだす

◆松原 康将

営業と現場の間で入稿の窓口を担当
私は,印刷会社に勤めて15年目になります。現在は業務部で入稿の窓口として,営業と現場の間に立って仕事をしています。入稿から下版,印刷の立ち会いに至るまでの実務作業を行います。私が最も携わっている業務として,某百貨店の通販カタログなどの色調管理の仕事があります。
通販の媒体は,ほかの媒体とは異なりお客様にとってはそのカタログ自体が商品であり,またクライアントにとっては売り上げを大きく左右する大切な商品なので,全体のイメージを重視するだけでなく,色に関しても最大限の配慮を要します。1ページに数アイテムあり,それに加え豊富なカラーバリエーション,これらの色を合わせていくのですから毎回試行錯誤の連続です。
具体的な作業内容としては,実際に販売されるサンプルを取りそろえ,色校正と比較し,クライアントの思いも取り入れ,さらに本機刷りのことも考慮した上で色校正に直接その色の修整方向を記入します。プロセスインキのCMYKのプラス・マイナス(場合によってはパーセントまで指定します)を書き込み,プリプレスにつないでいくといったアナログ的な作業をしています。
大きな問題の一つとして,私たちとクライアントの間で校正刷りと本機刷りとの誤差の捉え方が異なることがあります。全く条件の違う機械で刷っている以上,誤差が生じるのはやむを得ないのですが,クライアント側からしてみれば「何度も色校正を出してようやく良い色になったのに,なぜでき上がったカタログは色が違うのか? これでは色校正で色を合わせている意味がないじゃないか?」と以前はよく言われました。そのつど,プリプレスや印刷現場の方たちと試行錯誤しました。最近ではそのかいもあってか,出難い色やバランスが崩れそうな色のデータを事前に修整し,本機刷りの際に生じていた誤差を軽減することができました。ただそれは現状の条件が同じならばの話で,一つでも条件が変わるとおのずと結果も変わってしまいます。

高品質な商品と信頼を提供したい
私は,自分の携わる仕事はすべて良い商品(印刷物)に仕上げたい,クライアントに喜んでいただける最高の仕事がしたいと以前から思っていました。ある日,書店で何げなく手に取った本がDTPエキスパートの本でした。以前から認証試験のことは知っていましたが,そこまでの知識が本当に必要なのだろうか?それを取得して何に役立つのだろうか?という思いと,そのころの私には,仕事をしながら勉強をする時間の余裕が全くなく,読もうともしなかったのです。しかし本を開いた私の目に飛び込んできた言葉「よいコミュニケーション」「よい制作環境」「よい印刷物」というキーワードに感化され,私の目指すものがここにあるのではと思い,多数の参考書や問題集を購入し必死に勉強しました。それが「DTPエキスパート」認証試験を受けるきっかけにもなりました。
DTPが現れてから印刷業界は目まぐるしい変化を遂げました。それまではコストや時間,技術的な問題で不可能だったことが可能になり,ビジネス環境に新たな展望が開けてきました。と同時に,個々の専門知識ではなく,全体を理解する幅広い知識が必要とされてきています。今は落ち着きを見せてきましたが,MacOS Xへの移行に伴う環境変化,PDF/Xワークフロー,デジカメの普及によるRGBワークフロー,CMS管理など,まだまだ進展していく技術や情報をいち早く得て,それを提案し使いこなしていけることが大切だと思います。それが私の仕事であり,また何か問題が起きた際,すぐに正しい解決策を見いだす能力を身に着けることが私自身に必要なのです。
現在,この業界の仕事は受注の減少が大きく,それに伴い価格競争が激化してきています。企業同士が競い合い,少しでも安い見積もりを提出して必死に仕事を取ろうとしています。そんな折,ついおろそかになりがちな品質面を見直し,低価格でも高品質な商品(印刷物)と信頼を提供していけるようにこれからもがんばっていきたいと考えています。

 

月刊プリンターズサークル連載 「DTPエキスパート仕事の現場」2005年11月号


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2005/10/29 00:00:00


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