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メディアビジネスにコーディネーションが必要な理由

PAGE2005の企画を2004年に行って以来考えつづけていたことは、ネットの上にコンテンツがあり、ネットを経由してコンテンツを加工し、ネット上でサービスを提供し、ネット上で取引がされるように向かっていることと、現状では以上のそれぞれの局面で課題があり、個別の取り組みがされているが、ゆくゆくはそれらは一つながりのものになるであろうということである。

世の中では携帯が巨大なメディアになりつつあり、いろんなコンテンツが携帯めがけてビジネスの機会をねらっている。しかし携帯の能力に限りがある限り、なにもかも携帯に集約されることにはならず、パソコンも家電もゲーム機も存続しつづけるだろう。しかしそのどれもが携帯との関わりをもち続けるだろう。
こういうのがユビキタスの一つのイメージである。ユビキタスというと今と全く異なる何かが生まれると考えるよりも、いままでバラバラに行われていたメディアの利用や提供が連携するようになることだと考えた方がいいのではないかと思う。

例えば携帯でTVを見るのがふさわしいか、それとも携帯で今夜借りたいビデオの索引を見るのがよいか、と想定してみよう。昼休みとか帰り道でビデオのダイジェストを見て選んで、2泊3日というところをクリックすると、自宅のビデオサーバにDVD級画像のダウンロードが始まって、帰る頃には見れるようになっているようなのが便利ではないだろうか。

こういう一続きの中に、コンテンツ提供のビジネス、再エンコーディングや配信のサービス、ショップ機能、課金・支払い、会員制サービスなどなどの個別業務が埋め込まれることになる。印刷というのもこういったネット上のメディアの取引にフックしてサービス提供することが多くなるだろう。

例えばblogに書き溜めたものを本の形にプリント製本するサービスというのが既にあるが、気に入ったビデオがあったなら、そのシナリオの復刻版が手に入るとか、ポスターが買えるとか、関連した小説が買えるなど、Amazonが関連したお勧め販売をしているような中に印刷物も連動してビジネスをすることがあり得る。スポーツなどでも同じで、イベントにリアルタイムにフックして関連印刷物を製造・販売するということは起こるだろう。 このようにすると何がよいのか? 

ネット上のビジネスでは従業員はコンピュータであるようなものなので、リアルワールドにおける販売店の乱立による販売管理費の増大というマイナス要因がない。このコストの低下により事業リスクも少なくなるので、あまり売れないかも知れないコンテンツも市場に登場することができる。つまりコンテンツビジネスの機会増大をもたらし、利用者側からはより需要にマッチしたコンテンツが見出せるようになると考えらる。

この経費削減の狙いはすでに、営業マンの販促ツールがネット上でオンデマンドで入手できるシステムとして動き出している。今まで蓄積した顧客のプロフィールをベースにして、明日訪問する顧客に何をもっていってどんなことを説明するのがよいかというお膳立てをイントラネットでするようになるだろう。すでにプリントオンデマンド分野では営業マンが個々に必要なマテリアルの手配をイントラネットで行うことは始まっているが、JDFのような業務情報交換の延長上には社外のいろんなメディアやマテリアルの調達も可能になるはずだ。

このようなメディア利用の複合化と一貫した利用環境を想定して印刷のビジネスビジョンを考えてみてはいかがだろうか。いいかえればユビキタス時代にはどのように印刷を含むメディア提供(裏返すとメディア利用)がされるのかを探るために、コンテンツ提供側、コンテンツの管理・加工をするシステム側、利用者側(クライアント、顧客、エンドユーザ)、メディアのプロデュース側など、いろんな立場から検討してビジョンを持ち寄って、刷り合わせて、協同で新たなビジネスに育てていくことがこれから必要なのではないだろうか。つまりネット上のビジネスになるようにコーディネーションしていくことが、3者共通のメリットにつながることをPAGE2006では提言したい。

PAGE2006の基調講演トラック

最初のA0セッションではコンテンツホルダーの方々のビジネススタンスを伺いたい。印刷会社の売上の内訳の大半が印刷以外の要素であるように、出版社などコンテンツを提供するビジネスにおいても、書籍の量産配布だけでなく非常に多様に付加価値のつけられる領域がある。現在のビジネスモデルがどうなっているのかを解きほぐして、IT時代にふさわしい要素を見いだし、グラフィックスのノウハウを活かして伸ばすビジョンを探る。

午後の部は、膨大な情報を扱い技術をとりあげる「デジタルアーカイブ時代の情報管理」、高パフォーマンスな文書システムを考える「自動文書生成のフロー」、印刷会社の取引先(顧客企業)の戦略に迫る「顧客の考えるメディアの活用価値」、メディアの仕掛けの大元であるプロデューサー側から見たクロスメディア問題「プロデューサーの求めるコンテンツ制作環境」の4セッションとなる。

A0 基調講演 「出版とコンテンツビジネス戦略の「現在」」
コンテンツ元年と言われる現在,そのビジネスの代名詞のひとつである紙媒体,出版はどのような戦略を「現在」組み上げているのか。紙,出版をベースにしたコンテンツ資産活用の多元化と,ありうべきビジネスモデルを広い視野で考える。

A1 デジタルアーカイブ時代の情報管理
あらゆる情報がデジタルで生成され,過去の情報もデジタル化されてゆく。 企業の資産として,地域の文化財として,また公共・国家規模のアーカイブがさまざま取り組まれている。このような大規模な情報蓄積とその利用のニーズに対して技術的にどう立ち向かっていくのかを考える。

A2 自動文書生成のフロー
構造化文書を自動編集・組版するとかWEBで発信することが行われている。 さらに原稿管理や原稿チェックのシステムが構築されることで,入稿前の段階から構造的に情報を管理して,文書作成を意識しないで自動的にパブリッシュする方向もある。 原稿管理から,文書構造,レイアウト構造,スキン(デザイン)までのフローを自動化という視点で検討する。

B1 顧客の考えるメディアの活用価値
エンドユーザーのライフスタイルの変化,経済環境,産業構造の激変に伴い,印刷会社の取引先(顧客企業)も戦略の組み替えを本格化させはじめているわけですが,実際にメディアの活用価値をどのように捉え,さらに外注/内製,発注条件をどのように考えているのか,なかなか真意が伝わってきていません。そこに焦点を当てて,セッションを組みたてる予定です。

B2 プロデューサーの求めるコンテンツ制作環境
クロスメディア化が進む中,メディアの仕掛けの大元であり,資金調達,バジェット配分の責任者であるプロデューサーが,これからのメディア活用,コンテンツ制作の環境としてどのような形態を求めているか。そのキャスティング,コーディネーションのありうべき姿を探る。そしてその中で,印刷会社の立つべきポジションを考える。

関連情報 PAGE2006 コンファレンス概要

2005/11/08 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会