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DTP制作におけるコラボレーションの進展

Adobe Creative Suite2と新たなDTPワークフロー

アドビシステムズでは,2005年7月にプリント・Web・モバイルのための統合デザインプラットフォーム,Adobe Creative Suite2日本語版(以下,CS2)を発売した。CS2には,Photoshop,Illustrator,InDesignから構成されるスタンダード版と,Acrobat,GoLiveが加えられたプレミアム版がある。
アドビシステムズのクリエイティブプロフェッショナル部の岩本崇氏に,CS2の新機能とDTP制作におけるコラボレーションについてお話を伺った。

アプリケーション連携の強化

CS2の大きな特徴は,アプリケーション連携の進化である。デザインワークフローにおけるハブ機能として,Adobe Bridgeというアプリケーションが加えられている。また,Web・モバイル制作を行うGoLive CS2では,IllustratorおよびInDesignからのデータインポート機能が強化されている。
さらに,従来はアプリケーションごとに設定する必要があったPDF書き出し設定を,CS2上では,各アプリケーションで共有するようになった。CS2では,漢字の作字や記号をサポートするSING外字ソリューションが提供され,外字も各アプリケーションで共有することができる。

Adobe Bridge

Bridgeは,CS2に含まれるアプリケーションで,ファイルの一覧表示や検索,ファイル管理を行う。プレビュー表示の大きさは,無段階に変更することができる。多くのファイルを見る場合は小さく表示し,詳細を見る場合には大きく表示する。ファイルを探し出すという作業は,クリエイティブワークとは全く別の部分の話である。必要なファイルを探し出すという作業は,デザイン制作時間全体の1割強,2割近くをスポイルしている。Bridgeによって,この無駄な時間を効率化することができる。

ビュー方法には,1点1点を大きく表示するフィルムストリップ表示,作成日やサイズや解像度を確認することができる詳細表示などがある。例えばPDFファイルをフィルムストリップ表示すると,PDFファイル全体を読み込むことなしに全ページのプレビュー表示が可能である。ファイル検索では,メタデータによる検索が可能である。

Illustrator CS2

Illustrator CS2のライブトレースとは,画像を簡単にベクトルデータに変換する機能である。ストリームラインというアプリケーションのトレース機能を取り入れ,強化したものである。中間ファイルをもつことにより,画像の種類や内容によって柔軟にトレースデータを作成することができることから,ライブと名付けられている。
ライブペイントは,トレースされた部分に着色を行う機能である。従来では,パスが連結されていない部分があると着色することができず,パスを選択して連結するという煩雑な作業が必要であった。ライブペイントでは,連結されていない個所を検出して自動的に補間し,着色することができる。

InDesign CS2

InDesignの新機能として,Photoshopレイヤーカンプ,オブジェクトスタイル,スニペット,またアンカー付きオブジェクトや,WordやRTFファイルなどのテキストデータ読み込みの強化が行われている。

BridgeでInDesignのファイルをプレビューすると,メタデータとして使用フォントの情報やスォッチの情報も確認できる。すなわち,ファイルを開くことなしに,ドキュメントで使用されているフォント・スォッチが確認できる。
InDesignでは,新しくオブジェクトスタイルの機能が追加されている。オブジェクトを選択し既に保持されたスタイルを適用すると,簡単にその設定を適用することができる。オブジェクトスタイルには塗り線や,ドロップシャドウという影の効果の設定なども適用することができる。

また,InDesign上でPhotoshopのレイヤーコントロールを行うことが可能になった。画像を選択し,オブジェクトレイヤーのダイアログを表示させると,レイヤーが設定されていることが分かる。従来なら,Photoshopを起動して最新の画像に変換し,またInDesignで作業する必要があった。あらかじめPhotoshopのレイヤーに設定をしておけば,InDesign側で設定を変更することができる。Photoshopのレイヤーのコントロールと同様に,PDFのレイヤーのコントロールもInDesign上で行うことができる。

プリント関連では小冊子作成のためのインブックレットという簡易面付け機能が追加された。本格的な面付けアプリケーションを使用しなくても,簡単に作業ができる。中綴じ,無線綴じ,観音の3面付け,4面付けといった簡易面付け機能をサポートした。これで両面の印刷をすれば,簡単に中綴じの小冊子を作成できる。
いろいろなトンボを付けることもできるし,仕上がりのプレビューを確認し,OKなら印刷を行う。このように,小冊子の作成をInDesignから行うことができる。

InDesignスニペットとは,ページ上のテキスト・グラフィックなどのオブジェクトをスニペットファイルとして保存し再利用できるライブラリーの一種である。特徴的なのは,ファイル自身が更新されると,レイアウト上でも更新内容が反映される。また,グループ内での共用も可能である。

ストックフォトサービス

従来,オンラインのストックフォトを利用するには,複数のWebサイトにアクセスして必要な画像を検索する必要があった。アドビストックフォトスでは,Bridgeをとおして世界の23万点以上のストックフォトから,必要な画像をキーワードやメタデータによって容易に検索・閲覧し・試用し,購入することができる。低解像画像のダウンロードは無償であり,必要に応じて高解像画像を購入し利用する。

InCopyとInDesginの連携

InCopy CS2は,ライティング・編集のためのアプリケーションで,InDesign CS2と連携したコラボレーションを実現するものである。InDesign CS2を使用する編集者の指示に従って,ライターはInCopyを使用して記事を作成しInCopyファイルとして保存する。でき上がったInCopyファイルを編集者に送信すると,編集者はInDesgin上でそれをレイアウトするという流れとなる。InCopyでは,文字組版エンジンを始め,多くの機能がInDesign CS2と互換性が保たれている。また,Wordからのインポート機能, OpenType対応,外字ソリューションSINGにも対応している。

InDesignとInCopyを連携する際に,InDesign上でパレットが表示され,何らかのジョブをライターにアサインし,でき上がった作業の結果をチェックイン,チェックアウトする機能,さらにコメント情報をやり取りする注釈ツールが付いている。

ライターの作業ファイルは常に監視されており,ライター側で更新作業を行うと,編集者側にアラートが表示される。その際に「リンクを自動修復」すると,編集者側のファイルに即座に反映される。結果的に,ライターと編集者とでお互いの作業を干渉することなく,お互いのいい部分だけを取り出す形で新しいワークフローが実現できる。

(Jagat Info 2005.11月号より)

2005/11/12 00:00:00


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