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課題が再び「課題」に? 第24期DTPエキスパート認証試験結果報告


第24期DTPエキスパート認証試験(8月28日実施)の合格者を,10月28日に ホームページで発表した。受験者1829人のうち合格したのは860人,合格率は47.0%であった。これで第1期試験以来,12年間で通算の合格者数は1万4712人となった。
また,過去最多の2752人が対象となった 更新試験は,86.0%というこれまでどおりの高い申請率で2366人が受験し,2066人が合格して(合格率87.3%),今後2年間,資格認証を継続した。

24期試験成績
合格率47.0%は,前期に引き続き平均(41.3%)を大きく上回る好結果である。筆記試験だけの合格率は52.9%で,筆記合格者の平均正解率は91.7%と合格ラインの80%を余裕をもって超えている。一方,不合格者の平均正解率は68.2%にとどまり,いつもどおり全体成績のレベルを引き下げており,5つのカテゴリー中C1,C3,C5の3カテゴリーで平均点が合格ラインを下回ってしまった。今回の試験はコンピュータ関連の問題が難しかったとの感想を耳にしていたが,そのとおりC5だけで落とす人が97人と大幅に増えている。しかし,今期1カテゴリー不合格が最も多かったのは前期同様「課題制作」である。
合格率の男女別では,女性が49.9%で男性は45.9%。年齢別では30〜40歳未満が52.7%で最も良く,次いで20代の45.5%。40代以上と20代未満は40%を切る。また業種別で最高は「一般・個人」の53.0%,「印刷・製版」が47.4%で続き,「デザイン・出版」39.2%,「メーカー・ディーラー」32.3%の順になる。これらの傾向はここ数期変わっていない。

再び課題制作が課題に
上記のとおり,今期は筆記試験で通るも課題で不合格となった人が増えて,久しぶりに100人を超えてしまった。提出率,合格率ともに平均より悪く,特に合格率は2001年以降は90%近い合格率を維持していたが,ここへきて3期連続で下降している。実は5〜6年前の試験では,課題は70%台の合格率しか達成できず「課題が課題」としていた時期があった。これはスクール受験の増加により,未経験者が印刷物の設計や工程について十分に理解しないままに稚拙な作品を提出してきたことが主な原因であった。しかし,最近では作品レベルは向上したものの条件違反による不合格が非常に増えてきているのだ。以前とは違う意味で再び課題が課題になってきたと言える。
他人の不正コピーは少なくなったが,ここ数期は過去の試験のデータの流用や制作ガイドのフォーマット化(流用)が目立つようになってきた。背景には企業受験により営業部門など普段Macを触ったことのない人の増加や,会社の業務用Macが使えない,仕事が忙しく時間が取れないといった制作環境の不備による時間不足があると思われる。このため,つい社内に蓄積された過去データをそのまま利用してしまうといったことが起きてしまうのであろう。制作ガイドのフォーマット化は言わば効率化であり,そのこと自身は問題ないのだが,実際の提出物は効率化どころか手抜きであり,そのためガイドと作品に矛盾が生じたり,無意味な記述や全く同一個所のミスタイプが複数人で発見されるといった事態が発生している。
課題は一見いつも同じものに見えるかもしれないが,毎回データは変更しており,制作の要件もその期ごとに「課題制作の手引き」で変更して指定している。このことはこれまでにも警鐘を鳴らしてきたし,試験のオリエンテーションでも説明しているのだが,前述のような制作環境の諸条件により,本人に悪気がなくてもこうしたことが起こってしまうのだろう。しかしながら,試験を採点する立場からすれば,一人ひとりの受験者の事情をおもんぱかって見ることはできない相談である。提出された作品と制作ガイドだけがすべてであり,そこにあるはずのない(支給していない)テキストや図が使われていれば不合格と判断する以外にはないのである。
DTPエキスパートの課題試験はオペレーションスキルの向上やデザイン力を測ることを目的としておらず,基本は印刷物設計プロセスの理解である。従って営業の人であっても,教わりながらでも一度は自分で一通りやってみることに意義がある。合格至上主義に陥って,他人の課題を流用してしまっては試験対策に費やす時間は無意味であろう。

更新試験結果と次回試験
昨年度より受験者の数は更新試験が本試験を上回ってきている。古い期の人が回を重ね続け,これだけの規模になりながら更新申請率は当初より全く下がることなく今日に至っている。合格率もほぼ同水準で推移し,今期も平均合格率87.3%で2000人以上が資格を更新した)。不合格となった301人も規定により再受験が可能であるが,毎回70%程度の人が再受験を希望するので,今回延期申請した人を含め,200人以上が次回の対象者に加わる見込みである。
次の本試験(第25期)は2006年3月12日(日)に東京・大阪・名古屋および福岡にて実施する。また,同時期に実施する更新試験は1期・5期・9期・13期・17期・21期の1991人と対象が6期に広がる。特に注目したいのは取得12年にして6回目の更新となる1期の人たちの動向である。試験の詳細や申請方法などの最新情報はホームページに掲載している。

 
JAGAT info 2005年11月号

 
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2005/11/21 00:00:00


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