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インターネット上の編集・制作会議室を実現

デザイン・編集部門の現状

印刷物を製作するためのDTPやプリプレスは,今やデジタルが当たり前となっている。雑誌の編集部や一般企業のデザイン制作部門でもデジタルデータで溢れかえっているが,社内・社外のデータのやりとりは,CD・MOをバイク便・宅配便で送付することや,訪問して直接手渡しするなどアナログな方法となっていることが多い。
このような方法は,その都度電話で連絡をし,待ち時間もあり,結果的には時間もコストもかさむこととなっている。また,メール添付でのデータ送付は安全上の問題が大きく,トラブルを未然に防止するためにも避けるべきであろう。
大企業の社内であればイントラネットや共有サーバで作業をすることもできる。しかし,編集部門やデザイン制作部門の業務は社外の企業やパートナーとのやり取りが非常に多く,現実的ではない。

インターネット上の編集・制作会議室を実現

ある雑誌の編集部では,Webブラウザからデザインデータ,写真データ,校正データをやりとりするシステムの利用を始めた。編集部とデザイナー・地方在住のライターでのデータのやり取りをインターネット上で行う,一種の編集会議室を実現したと言う。

デザイナーがラフデザインをサーバにアップロードすると,確認メールが編集部に自動送信される。編集部でデザインを確認した後,共有設定を行い,メッセージ機能で各ライターに指示を送る。ライターは,原稿と写真を用意するとサーバにアップロードする。編集部とデザイナーはサーバ上の写真を各々見ながら,レイアウトの方針を決定する。デザイナーは写真をダウンロードし,誌面レイアウトをおこない,完成したものをアップロードする。そして,関係者全員が,各々仕上がりをチェックする。

この編集部では,CDやMOのやり取りを無くしたこと以上に,外部スタッフを含めた関係者全員によるインターネット上の編集会議を実現したことが効果的であったと言う。関係者の各々の役割やチーム全員のスケジュールに対する意識が明確となり,質の向上にもつながったと言う。

別の出版社の雑誌編集部でも,同様なアセット管理のシステムを利用しており,フォトグラファーとデザイナー,編集部で撮影データをリアルタイムに共有することができた。従来は,CDやMOなどのメディで受け渡しており,そのためのデータコピーや梱包の手間や時間もたいへんな量となっていた。
データの受け渡し以上に有効なのが,グループコミュニケーションであると言う。クリエイター同士が,リアルタイムに画像を共有しながら完成度を高めていく。そのような共同作業を実現することが重要であると言う。

制作業務における素材・進行情報の共有

ブロードバンド環境の普及により,印刷会社やシステム部門を持たないデザイン制作会社・出版社などでもアセット管理による制作効率化を実現する例が現れつつある。
ASP利用であれば,開発費や高価な機器の導入も不要である。社外のパートナーも利用できる。しかも,操作は通常のWebブラウザを利用する程度のもので,ほとんどの人がマニュアルも読まずに習得できるものだと言う。これらのシステムでは,通信そのものが暗号化され保護されており,ネットワーク上の安全性にも不安がない。
制作業務における素材(アセット)や進行情報のやり取りは,実際にはデザイン制作チーム,編集チームのコミュニケーションそのものと言える。

2005/11/13 00:00:00


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