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新たなステージに入った動画コンテンツ

完全無料の映像配信サイト「GyaO」

動画配信のビジネスに新たな波が押し寄せている。「GyaO(ギャオ)」という無料の映像コンテンツ配信サービスが今春,2005年4月25日にサービスを開始した。約6ヶ月で一挙に会員数を300万人集めた。11月中旬には400万人に達している。GyaOは有線放送の最大手である株式会社有線ブロードネットワークス(USEN)が運営し,ISPやネットワーク事業者を問わずに利用できる動画配信サービスである。性別や誕生月,郵便番号,eメールアドレスなど個人を特定しない情報を入力するだけで会員登録できる。 会員は,映画,音楽,スポーツ,ニュースなどのチャンネルを全て無料で見ることができる。

USENは2004年からエイベックス・グループ・ホールディングスへの資本参加やギャガ・コミュニケーションズの連結子会社化を行ってコンテンツ力の強化に務める一方,自社コンテンツの作成にも力を入れてきた。

民間調査会社のネットレイティングスが2005年10月27日発表した9月のインターネット利用動向調査によると、主な動画配信サイトの総利用時間シェアでGyaOが58%を占めたという。2位のヤフー(10%)とBIGLOBEストリーム(10%)を大きく引き離した。日経メディアラボでは,楽天の三木谷氏が「GyaOの台頭が、ネットと放送の融合をにらんだ(TBSとの)経営統合を目指すようになった背景にある」というコメントを紹介している。

USENは8月期の決算で、コンテンツ調達費用がかさんで赤字決算を報告した。しかし,他のサイトが有料で映像コンテンツを配信しているのと異なり,テレビと同様に番組中にCMを流して収益をあげる方式で,今なお会員の増える勢いが衰えない状況であり,今後も引き続き注目を集めていくだろう。

ビデオ対応のipod

今秋,2005年10月にアップルは動画が再生できるiPodを発売した。320 x 240ピクセルのQVGAの画面に。写真やMPEG-4・H.264のビデオを再生が可能できる。30GBと60GBのモデルがあり,60GBの場合は最大1万5000曲の音楽と150時間のビデオが保存できる。

iPodは音楽を再生できるMP3プレイヤーとして,登場以来爆発的な人気を集め,Appleの好業績を支える大きな柱となってきた。10月に発表したAppleの2005年度第4四半期決算では,iPodの出荷台数が世界で645万1,000台(前年同期比220%増)になったと報告している。 アップルのコンテンツ配信サービスiTunesでは,現在100万曲の楽曲を提供するとともに podcastでは自分の好みのラジオ番組やオーディオ番組を登録すれば,最新情報を随時アップデートすることができる。ビデオ対応のiPodの登場により,さらにビデオコーナーも加わった。好きなアーティストのミュージックビデオなどを300円から購入したり,ピクサーのショートアニメーション「Tin Toy」や「Geri's Game」などの作品を試聴してから300円で購入できる。

iPodはコンテンツを保存するだけでなく,自宅のPCに転送して再生したり,友人のiPodに転送することが可能である。コンテンツの著作権管理技術をあまり厳しくしていないので,幅広いコンテンツの楽しみ方をユーザに提供し,多くのユーザから支持を得られた。

WebサイトではGyaOが無料の映像配信を提供し,気軽にいつでもパソコンでみたいテレビの感覚を持つ層を取り込んだ。携帯MP3プレイヤーではiPodが有料の映像コンテンツを配信し,買って手元でいつでも楽しみたいレコードやCDの感覚をもつ層をとりこんだ。インフラとコンテンツを提供する側と利用する側の層が厚くなり,映像コンテンツのビジネスは新たな段階に入ってきた。

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2005/11/17 00:00:00


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