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方法としてのITと、人材のマッチング

あらゆるビジネスがデジタル化・ネットワーク化に向けて突っ走っている今日、まだまだコンピュータを使うところは流動的な状態が続くので、打出の小槌のような技術を導入して安泰にビジネスをしようというわけにはいかない。過去のデジタル経験があるからといって、闇雲に新しそうなものに手を出しても、成功する可能性は非常に低い。しかし未来が暗闇なわけではなく、来るべき社会やビジネスの姿はだいたい予測されている。だからeJAPANでもユビキタスでも共通認識にすることができるのである。

この来るべき社会像と、自分が目下何から取り掛かるべきかというギャップで、誰でも悩んでいるといえる。グラフィックアーツにかかわる人ならば、今までの紙の上の表現のノウハウを活かして、デジタルメディアにもビジネスを見つけることが共通の課題だろう。そのためにお互いの経験や知見をもちよって、いくらかでも未来を見通せるようにしようというのがPAGEというコンベンションであり、展示会+コンファレンス・セミナー+ジョイントイベントその他いろいろなイベントを総合したPAGE2006が2月1日から3日まで、池袋サンシャインシティーで開催される。

PAGEの開催は1988年の第1回から数えて、PAGE2006で第19回目になり、その間でテーマも展示の内実もいろいろな変遷があったが、一貫して追及しているのは、新たなビジネスを見つけることと、問題解決をすることである。新たなビジネスはいつでもいろんなことがいわれているが、それは冒頭にいったように『闇雲』なアイディアもあり、それらを確からしい未来から逆算して整理するという姿勢を堅持している。問題解決については、PAGEには各ベンダーからソフトやシステムのソリューションが提示されるが、それだけで問題解決がされるわけではない。金を出してソフトを買えばデジタルメディアの仕事が成り立つなら、今日誰も困ってなどはいない筈である。

展示会でたとえどんな新しい有益なシステムがデモされ、説明されても、『カタカナ語が多くて聞き取れない』『アルファベットの略語が解らない』という来場者ばかりでは、そのシステムが導入されて活用されるはずはないのである。つまりソリューションは使う側の人材にかかっている。自分で新しいことも勉強しようという意欲があって知識もある人に来て見てもらわなければ、ベンダーとしては展示会に出展する意味は無い。問題解決のためには適切な人材の確保が必須条件であることは明らかだ。

PAGEの最初の10年間はDTPの立ち上げを主眼にしていた。だから利用者側にまだ完成していないDTPのことがわかるキーマンが必要になる。JAGATがDTPエキスパート認証・登録制度をPAGEと平行して進めてきた理由のひとつは、ユーザ側に新たなDTPワークフローの構築でリーダーシップをとれる人材を育成することであった。DTPエキスパート認証試験は2005年秋時点で累計14712人の合格者を世に出しており、日本の印刷のDTP化における一定の役割は果たすことが出来た。つまりPAGEの側からすると、DTPエキスパート及びそれに向けての挑戦者という質の高い来場者を同時に生み出していたので、PAGEの出展者と来場者の歯車が噛み合ったといえる。

1997年はそれまでの写植製版の専用システムに代わってDTPが主たる生産方法になることが明白になった年で、PAGEのコンセプトも練り直すことになった。PAGE98はデジタル化を果たした次がどこに向かうかをテーマにして、ミルズ・デイビス氏に基調講演を行ってもらった。1997年から2001年にかけては、アメリカでグラフィックアーツの世界のビジョナリーといわれる方々を招いて、デジタル化・ネットワーク化による『確からしい未来』を探る時代であった。この辺のいきさつはPAGE報告に残っているので興味のある方はご覧頂きたい。

これらを受けて日本流に翻訳した確からしい未来から逆算をした結果がPAGE2002以降のテーマであり、PAGE2003は『見つけようグラフィックビジネスの明日』、PAGE2004は『ITとパートナーシップで築くトータルサービス』として印刷のバリューチェーンの構築を目指しポスタルフォーラムを併設するようになった。PAGE2005は『メディアは循環型ビジネスへ』をテーマに仕事を取ったり取られたりの繰り返しから脱して、顧客と共に成長するビジネスモデルを指向した。こんどのPAGE2006のテーマについては、メディアビジネスにコーディネーションが必要な理由をお読みいただきたい。つまりこれら毎年のテーマは一貫した文脈の中でいろんな角度から議論をしながら、未来像をより確かなもにしようとしていることをご理解いただきたい。

印刷の未来は、印刷に迫りくる外部・周辺メディアの変化にどう対応するかにかかっている。それらを最も凝縮して短期間に理解できるようにした仕掛けが、PAGEのもろもろのイベントである。すでにグラフィックアーツのビジネスの一角を占めるようになったクロスメディアに関しても、DTPの時と同じようにクロスメディアエキスパートのカリキュラムと認証制度を立ち上げて、外部・周辺メディアの変化に対応できる人材を発掘して、顧客の問題解決や新たなビジネスの構築に立ち向かえる業界になれるように再スタートするのがPAGE2006である。ご期待ください。

2005/12/07 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会