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デジタルコンテンツ2.0を考える

デジタルコンテンツという概念をどのように定義するかによって、コンテンツビジネスへのかかわり方も変わってくるだろう。

そもそもコンテンツとはいかなるものか、コンピューターソフトとどう違うのか。通常思い浮かべるものは、映画、音楽、アニメーション、テレビ番組、ゲーム、書籍などで、その表現に必要な情報の内容のことであろう。「デジタルコンテンツ」とは、当然そのコンテンツをデジタル形式で記録したものに他ならない。デジタル化されることにより、それまでの産業の壁を越えて、自在に形を変えることが可能になる。

では一般に「デジタルコンテンツ」という場合、我々は何を思い浮かべるのだろうか? もちろんインターネットによる配信が容易に思いつくだろう。これまで映画、音楽、放送、新聞、出版などの産業は、既得権益もあり、独自に個々の産業として発展してきた。しかし、コンテンツのデジタル化が進むことにより、産業の融合化がはじまっている。

しかし、融合化されたものに対して、誰が先導していくのかという問題が取り残されてしまう。つまり既存メディアのコンテンツホルダーは誰で、新規メディアへの対応をどうするのかにコンテンツビジネスの鍵がある。また新しいものならば、新たにコンテンツを作り上げていくこともできるだろうが、コスト面の問題もあり、既存のコンテンツを資産として活用し、蓄積していくことになる。また差別化のためにメタデータの技術を使うこともある。

「参加型ジャーナリズムの影響は?」
ブロードバンドなどの通信技術の発展により、ライフスタイルだけでなく、ビジネスにおいてもそのスタイルは大きく様変わりしてきている。新聞を購読する層が減り、とくに若い人などは、ネット上でニュースを見るから新聞は要らない、という意見が多い。ネットでは速報性があり、それはテレビ以上の速さであろう。
参加型ジャーナリズムとは、ブログであったり、掲示板サイトであったりするわけだが、その規模はどんどん巨大化している。参加者にとって垣根が低い分、間口が広いわけで、誰でもジャーナリスト、作家になれる可能性があるということだ。2ちゃんねるや電車男を例に挙げるまでもなく、個人の意見がジャーナリズムへ大きな影響を与えている。しかしブログがそのまま出版の一手段となりうるか、という問題提議もある。肝心の「才能」や「編集」が介在しないわけにはいかない。誰がディレクションするのか、既存のメディア側の人なのか新規メディアの参入者なのか、目がはなせない状況にある。

「テレビとネットあるいは既存メディア×新メディア」
紙はなくなるのか、印刷はどうなるのか、といった議論はあらゆる機会にさんざん行われている。しかし、生活者のスタイルからすると身近なだけにテレビがどうなるのかに興味がある。ライブドアとフジテレビ、楽天とTBSなど話題に事欠かない。もちろん他のIT企業だって放送権は欲しいに決まっている。まだ決着が付かないが、メディアを大衆の欲望を具現化させた媒体と規定した場合、何らかの動きは想定できる。

テレビとネットは必ずしも同一のサービスをする必要はないだろう。データセクション橋本大也氏の「テレビブログ」による「テレビとネットの近未来カンファレンス」ではテレビ局の人が、「テレビは寝転がってみるものです。パソコンのようにシャカリキになってマウスを動かすものではありません。」という話があった。つまり受動なのか能動なのかという問題であろうが、パソコンがテレビのような「ながら族」を生み出す可能性だってないわけじゃない。今後のことはわからない。

また最近話題なのが、「テレビとネットの近未来カンファレンス」でも触れていたCMスキップの問題である。HDD(ハードディスクドライブ)内蔵のDVDレコーダーによるテレビ番組の録りだめが進むと従来の広告ビジネスへ影響があるというものだ。ことの発端は、野村総合研究所が5月末に発表したレポートで、「DVDレコーダーを持つ人の過半数は80%以上CMをスキップして」いる、というもので広告主の損失について述べていた。それを受けて、電通は「DVR普及がテレビ視聴に与える影響について」と題するレポートを即座に発表し、必ずしも損失ではないことを語っている。メディアが大衆の欲望を具現化させたものだとすると広告のあり方も再検討するべきなのかもしれない。その一方で、ネットによる新たなビジネスも期待されている。情報やコンテンツがあふれる中、本当に売れる仕組みや新技術が模索されている。例えば、Podcastはドラえもんのポケットか、はたまたパンドラの匣となりうるのか。

この壁はいずれ乗り越えていかなくてはならないものである。逃げていたり、文句を言ってたりするだけでは何も解決しない。なぜなら確実にあらゆるコンテンツはデジタル化されつつあるし、それは道具であり、使った者勝ちであるからだ。既存メディアと新メディアどちらが勝ちかという話も出てくるかもしれないが、どちらが勝ち組でどちらが負け組という話ではない。繰り返しになるが、メディアは大衆の欲望を増大させ、それに見合ったサービスを提供してより増殖していく。人々は自分に都合の良いものを選択していく。それだけの話である。だから飽和状態になったときに選ばれるものが生き残る。

次世代のWebをWeb2.0というように、デジタルコンテンツの次のフェーズであるデジタルコンテンツ2.0を考える必要がある。


技術フォーラムシンポジウム「デジタルコンテンツ2006――テクノロジー、コミュニティそしてビジネス」では、2005年のデジタルメディアの技術や活用を総括するとともに、今後のビジョンをより見通すため、ネット、紙、テレビ、メディア、コンテンツ流通などメディアのビジネスや技術に携わる人を招き、2006年のデジタルコンテンツのビジネスや技術がどのように展開していくのか展望する。
今回、データセクションの橋本大也氏に企画の協力をお願いするとともに、当日のモデレーターもつとめていただく。橋本氏は、大学在学中にはWebのユーザビリティを考える「アクセス向上委員会」、最近では「テレビブログ」を立ち上げるなど、メディアやネットにおいて、常に最先端の話題を提供する。また、百式の田口元氏やKandaNewsNetworkの神田敏晶氏と、斬新でユニークなセミナーを企画・開催し、若き技術者やクリエイターに絶大なる支持を得ている。

2005/12/08 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会