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デジタルはソリューションになるのか?

ニュースで騒がれた、某A元建築士が耐震強度計算の結果を偽装して、インチキの建築確認申請書を作成していた件では、計算のプログラム自体はちゃんとしたものであったにもかかわらず、その結果をカット&ペーストして書類にする際に数値の改ざんをしていたという。たいていのこの種の計算ソフトは、使い勝手を考えて人間が数値を編集可能にしているので、国交省認定のプログラムで計算したなら検査は一部省略していたというが、それでかえって文書の内容が信用できるとは限らないものになっていた。
国交省は数百ページの書類のチェックが事実上出来ていないことから、電子データで申請してもらってプログラムでチェックすることも考えるという。デジタル化すると本当にソリューションになるのか? 未だに人はコンピュータを神格化する傾向があり、国交省認定のプログラムを信用しすぎたために、それがあればよしとして、数値の改ざんの可能性を軽視していたのではないだろうか。

2005年は個人情報保護法案の施行で、名簿を収集して販売する、あるいはDM宛名を販売するビジネスが打撃を受けるのかと思ったが、相変わらずのようで、DMソリューションビジネスと看板を架けかえるところもあれば、アングラ化する業者もあったようだ。個人情報保護法案はIT業界にとっては特需のようで、それは個人情報を扱うところはシステム的な手を打たざるを得なくなったからだが、そのことの有効性は疑わしく、アングラの世界のデジタル化も急速に進んでいる。

不正が入り込めないように関係者の間で秩序が確立するまでの間は、ドサクサでの怪しいサービスがやりやすく、それが新手の犯罪の温床になってしまうようだ。つまりシステムの側だけデジタルに替えてもミスや不正を防ぐ人的な慣行の作りが間に合わないというギャップが起こることに問題があるのであって、紙を使ったやり方に戻るのが根本解決でもなければ、デジタル化で解決するものでもなく、またデジタル化がカオス化をもたらすわけでもない。

ではデジタル化する意味はどこらへんにあるのだろうか。国交省が考える、電子データをプログラムでチェックする方法も、悪意を持って臨めばきっと抜け道も見つかるのだろうが、申請された後のデータの管理を徹底させることは可能になる。紙の書類は実はちゃんとみていなかったことと比べれば、電子化することは大きな進歩である。要するに紙の上のデータが作りっぱなしで、文書作成の労苦を承認しただけでその後は無管理状態であることは多くの分野で共通なのだろう。もっとも、データを適切に管理するとか有効利用する視点がないと、デジタルに替えても無管理状態は同じで、そういうプロジェクトは続くはずがない。

コンテンツのデジタル化とともに、データの管理や利用方法も変わってくるといえる。WEBでは同じ内容を繰り返すことなく元情報にリンクをはって使えるように、過去の全データがアクセス可能になることは、コンテンツを産み出す側にとっては、質的にも生産性でも革命的なことである。グーグルなどがインターネット上以外のTVや図書などなどいろいろなデータを検索・利用可能にすることに取り組んでいるが、こういった技術はいろいろなところに広まっていくだろう。企業内における情報も、学校や公共施設においても、また家庭内でも、どこでも起こっているデータのデジタル化によって、紙の上の情報利用とは別次元のことが起こることが予測される。

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2005/12/14 00:00:00


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