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印刷半減に対処する戦略は用意できたか

毎年PAGEの頃になると議論されることに、本当に印刷ビジネスを変えなければならないのか? 印刷は不滅だ! vs やがて印刷は半減する! などがある。これらをどう考えるかで、今後の対応は随分違ってくるので、また一通りのおさらいはしておきたい。結論は将来に印刷は半減するが不滅であろうということだ。しかし市場が「減る」ことは供給過剰が続くことを意味し、純印刷部門の売上は毎年低下し、印刷業界は生き残りを賭けた「椅子取りゲーム」状態になる。

当然ながら印刷の生産能力の高い会社は生き残るが、それは設備投資が優れていればよいのではなく、保全が上手で償却期間が長く、ミスも少なく、仕事の滞留・待ち時間・段取りなど生産性の改善が行き届いていることが条件で、人材育成や運用・管理システムを重要視した競争になる。要するに管理レベルの高い会社に仕事が集中する。もしくは他社がまだやっていないオンリーワン的な印刷会社である。しかしオンリーワン企業がずっと安泰なのではなく、同業の追手のチャレンジを振り切って前に進み続けなければならない。特殊印刷・加工などがこの分野である。

そこで印刷が減るスピードよりも早めに情報加工や印刷付帯サービスの分野で稼げるようにしようというのが先進国共通のビジョンになっている。各社それぞれの条件下で3年先、5年先のシミュレーションをしてみるのがよい。印刷の半減に向かっていろいろなところで兆しが出ているのに気が付くだろう。半減する根拠はいくつもある。国内の人口減、小ロット化、印刷物を含んだ最終製品の輸入増、輸出用のマニュアルの現地生産化、印刷物の在庫管理の向上で捨てる印刷物の減少、在庫0のPOD化、PDFなど電子ファイル化、娯楽のインターネット化携帯化、ECでの伝票レスやプリンタ化、などなどきりがない。

環境ISOを取得している印刷会社もたくさんあるが、真に環境を考えると、どうせ破棄するものは最初からなるべく印刷にしないでデジタルメディアにしようという力が働き、電子ペーパーの開発に取り組む会社もでている。紙と違和感の少ない方法で電子化したいというのが残されたアナログ分野である。印刷が半減することは印刷業界にとっては大打撃かもしれないが、印刷物の利用者にとっては大きな変化とは思われないので、自然に上記のような印刷の減少が進行するだろう。

印刷物が半分になっても、もともと利用者には見えない使われずに捨てられる印刷物が1/3〜1/2あり、配っても利用者には不要に思えるものが多くあるので、印刷の半減は利用者に気付かれずに起こるだろう。デジタルメディアが増えて便利になったことしか利用者の頭の中にはないはずだ。むしろデジタルメディアには「捨てる」というのはないので(DVDやCDというパッケージは除く)、名簿のように取り扱いが慎重になったものや廃棄コスト削減という視点で積極的に印刷離れする分野も出てきた。

しかし半減しても必要な印刷物は残るのだし、デジタルメディアが多く使われるようになって印刷物の持つ役割は以前よりはっきりしたものになると考えられる。画面よりも文章が読みやすい、写真が画面よりもきれい、などより好まれる印刷物作りが求められるが、それらも「半減」市場での話だから、それで企業が伸びるわけではない。むしろデジタルコンテンツから印刷物へと容易に発注できるようにすることが重要だろう。それはすでに手書きで印刷原稿を作る時代ではなく、1次情報がデジタルで作られるようになり、世の中に自分の意見を最も早く伝える手段はネットになったからである。

かつて電子出版が騒がれていた時は、紙の媒体用に作られたコンテンツをデジタルに乗せることが主眼であって、紙の1次情報からデジタルの2次情報にすればマルチユースができるという考えであった。しかしe文書法などにみられるように原本がデジタルになれば、そこがマルチユースの原点になり、紙は2次情報になる。印刷をするにもデジタルの1次情報を加工しなければならないとすると、その加工能力を高めて紙以外のデジタルの2次情報を作るサービスになることは自然である。つまり最も進みやすい方向である。

今後印刷で勝つにもデジタルメディアに比しての印刷の価値を知らねばならないし、またデジタルの1次情報の加工能力が問われるわけで、両メディアをバランスよく捉える必要がある。PAGE2006の基調講演では、紙のコンテンツを作っている新聞社・出版社や、メディアの発注者側の課題や指向を探って、明日の印刷のビジョンを考えるヒントにします。ぜひこの機会をお見逃しなく!!

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2005/12/21 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会