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印刷CIM実現に一歩踏み出すために

デジタルネットワーク化の意義や内容に対する印刷産業の理解は深まりつつある。結果として印刷CIMの実現を自社の課題としては取り上げないと決めた企業と、一歩一歩進めていこうと決意した企業との区分ができつつある。前者の企業の認識はあまりにもJDFへの拘りが強く、デジタルネットワーク化の全体像を見失っているようだ。
PAGE2006のMIS/CIMトラックは、できるところから一歩一歩デジタルネットワーク化を進めていこうと決意した企業のさまざま疑問に答え、今後の課題を明らかにすることを目的に企画、実施する。
図1は、現時点において整理したCIM実現に関する個々の疑問点および課題と MIS/CIMトラック各セッションで扱おうとしている内容である。疑問点および課題をテーマとして要約して各セッションとの関連をまとめたものが図2である。



デジタルネットワーク化の先進事例から学ぶ

今、最も求められている情報は事例情報である。デジタルネットワーク化がカバーする範囲は広いし過去に類例のないシステム作りになるからであり、何をどのようにしたらどの程度の効果があるのか、喧伝されるような効果が本当にあるのか否かなど、もうひとつ見えないという企業は多い。今までに紹介された事例は欧米の例がほとんどで、ビジネススタイルの違いがあるので、日本でも同様な成果が得られるか半信半疑といったところだろう。

JDFを使ったシステムではないが、デジタルネットワーク化によって業務改革を行い、成果を挙げている企業は日本の印刷企業にも出てきている。セッションE3「全体最適を目指すネットワーク化」で紹介する各種事例からは、外部組織との連携を含むデジタルネットワーク化によって、受注から工程管理、配送にいたるまでの流れがどのようなものになるか、また、その成果はどのようなものかが明確に理解できるはずである。そして、これは、必ずしも印刷CIMの実現とは関わらない部分でもある。ここで、「JDFを使った事例でなければ意味がない」と考えたとすれば、それは「JDF」に拘り過ぎて手段と目的を逆転して認識しているか、これから目指すことを矮小化して捉えているからに他ならない。
いずれにしても、MISの再構築を考えている方々には,セッションE2とともに是非お聞きいただきたいセッションである。

既成概念を超えたMISの構築

これからのMISを考えるときのポイントは二つある。ひとつは、MIS自体の機能を従来の計算と伝票発行機能の枠を超えたものにしていくことである。もうひとつはMISのJDF対応である。
前者については、統合システム化と電子伝票化を前提として、各種のシミュレーション機能を盛り込むことである。従来の計算と伝票発行機能を改善したレベルのMISならばさらなる投資の意味はないし、CIM実現にも役立たない。
いろいろなシミュレーション機能が考えられるが、その一つが工務(生産管理)のベテランが製品仕様やコスト/納期を考慮しつつ仕事をスムーズに流すために行なっているさまざまな配慮を明らかにし,それらのノウハウをシステムに取り込で生産計画のシミュレーションができるシステムにすることである。ノウハウの内容である手順計画の内容を見積もりに使えば見積もりの自動化につなげることもできる。セッションE2「『工務業務』の自動化に向けてのシミュレーション」では、JAGAT会員企業との共同研究の成果も踏まえた具体的なシステムの提言を行う。
工程管理システムと連動し、受注No、出発時間、納品時間デーから出発点と納品場所を全てシミュレーションして配送ルート等を決めるアプリケーションを構築・運用して、売上に占める配送費比率尾を2%強も削減した例はE3セッションで紹介する。

「MISのJDF対応」を具体的に考える

「MISのJDF対応」は非常に大きな課題である。対応の仕方によっては後から多額の再投資をしなければならなくなったり、基本的な作り変えをしなければならないことも起こりかねない。しかしながら、そもそも「MISのJDF対応」とは具体的にどのようなことなのかが明確にされていないのが現状である。

JDF対応の内容のひとつは「XML対応」であり、もうひとつは生産設備とのデータ交換との関連で決めるべき情報の内容項目に関わることである。前者についての回答はほぼ見えているが、後者については生産設備とMISのインターフェースがどのようになるかと関連する問題で、この点については不明確な点が多い。また、既存のMISが、たとえばJDFコンバータのようなものの付加で対応できるならば非常に有効なはずだが、果たしてそのようなことは可能なのか?という議論もなされていない。
従来、MISを自社開発してきた中堅企業はかなりある。しかし、今後、JDF対応をしていく場合、やはり自社開発が良いのか、あるいはパッケージの利用がいいのか非常に迷うところである。
セッションE1「『JDF対応』MISの基本的要件と課題」では、上記のようなMISのJDF対応について具体的に議論する。

どこまでの自動化が可能なのか?

JDFワークフローが生産の自動化に大きく貢献することは間違いない。ただし、全てのケースで同じレベルの自動化はできない。基本的には入力と出力が明確になっていることと生産設備の機能として入力にしたがって必要な処理をこなす仕組みがあることが自動化の前提条件になる。
上記の点で完全データを前提としてデジタル印刷機を出力機として使う仕事は、顧客側での発注処理から印刷・後加工までの全自動化が見えてきている。その姿からは印刷CIMの究極のイメージを描くことができるし、デジタル印刷分野では、デジタルネットワーク化時代の新たなビジネス展開を始める段階にきている。

従来の平版印刷のプロセスにおいては、印刷・後加工における自動化の範囲と内容はかなり見えてきている。しかし、プリプレス工程に関してはまだ見えない部分が多い。プリプレス工程のみではなく、工程管理および後工程との関連でも非常に重要なのが「面付け」と「台割」に関わる部分だが、この部分では、現在さまざまな提案がなされつつある。
セッションE4 「デジタル印刷のCIM」では、デジタル印刷におけるCIMの実現到達度を確認しそれがもたらすビジネスの可能性を探るとともに、プリプレス工程の自動化を展望する。

JDF規格はどこまで現実に迫ってきたか

CIMが従来の自動化と異なるのはMISと生産設備の双方向の連動である。生産設備とMISを連携して双方向の情報交換をすることを前提にすると、今まで人間が介在して臨機応変に処理していた部分をどのようにするかが大きな問題になる。
具体的には、部数や紙の指定など、受注段階で未決定仕様があるときに、それを不明なまま仕事を流していって不都合を起さないためにどのようにするのか、プリプレス部門における品質に関わる細部指示情報の自動処理への反映、あるいは印刷途中に事故が起きて版を作り直さなければならない、飛び込みの仕事が入った、当初の仕事の順番を入れ替えるといった場合に、MISから生産現場への情報の流れとは逆の流し方も必要になるが、そのような場合の処理をどのようにするのか? どのようにできるのか? あるいはこれらについては従来どおりの処理になるのか、といったことである。

以上のような状況への対処はかなり大きな問題だが、基本的にJDFの規格としてどのようになっているのかが明らかになっていない。また、生産の自動化で大きな課題となる台割管理については、CIP4の中であまり議論されていないとも言われている。
印刷CIM実現に大きな課題となるこれらの部分に関するCIP4の動きを抑えていくことは、システム構築およびそのステップアップを考えるために不可欠である。E5セッション「実用度を高めるJDF規格とCIP4の活動」では上記のような点を含めて、最新のJDF規格の内容とCIP4の動きを確認する。

デジタルネットワーク化、印刷CIMに関するほとんどの情報は断片的である。しかし、全体最適というのならば、常に目指すべき全体像に照らして部分を見ていく必要があるはずだ。
セッションE6「MIS/CIMの現状と今後の展望」は、上記の各セッションの結果を踏まえて現時点におけるデジタルネットワーク化、印刷CIMの状況を全体として整理し、今後の進展を予測する。

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2005/12/22 00:00:00


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