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メディアは「道具」なんだから、変わって当然

2005年は個人情報保護法案の施行もあって、日本中どの会社でも個人情報の扱いやポリシーに関していろいろな取り組みがなされた。それでも実態としては、はっきりした変化は見られないのではないかと疑問を持つ方もいるだろう。しかしパソコンソフトの不正コピー問題でも、いろいろなキャンペーンと合わせて不正企業の摘発などをしているうちに、ここ数年で日本はちゃんと人数分購入する方向になってきたことを考えると、法や制度の変化は情報関連ビジネスの根幹にかかわるものとなる。

しかし個人情報保護法でもコピー問題でも、デジタル技術によって悪意のある使い方も促進されるので、野放しにできないからルールを変えざるを得なくなったというように、技術革新がルールの作り変えを促していて、相互作用のような関係にある。WEBの出始めの頃はWEBが社会を作り変えるとか人間の意識を変えるというような、先走った短絡的な意見も相当あったが、実際にはリアルワールドのルールから情報システムは全く自由というわけにはいかず、両者がバランスして始めて「進歩」になるといえよう。

ではメディアやコミュニケーションにおける今日の進歩とは何か? 今後、顧客データを取得したり管理する局面では、担当者は個人情報の扱いを気にするので、どんな情報システムが使われるかは変ってくる。2005年はパソコンがスパムメールの攻撃に遭ったので、メールマーケティングは個人情報保護とのダブルパンチでやりにくくなる。それで「プッシュ」のメルマガに代わって、利用者がRSSリーダで興味のある情報を取得するとか、ソーシャルブックマークなど「プル」の方法が盛んになるといわれる。実際にはRSSリーダはまだそれほど普及していないが、WEBブラウザに標準装備される日は遠くないだろう。

WEBでは「掲示板」からBlogへの変化というのも随分進んだ。掲示板は1980年代からのパソコン通信時代に始まったもので、2チャンネル・電車男など話題も多いが、書き込まれる内容の管理がなかなか難しく、これ以上広がりそうにはないし、むしろ掲示板の性質の違いに応じて別の進化の道を辿るようになっている。書かれた内容の如何よりは対話モードを楽しむ分野は、チャット/メッセンジャーなどを経てSNS(ソーシャルネットワーク)などに集約されつつある。閉じた仲間だけの世界を作るもので、日本人にはあっているメディアかもしれない。

一方、社会に向かって何かを主張したい人はBlogに向かう。今まで掲示板で意見を述べると、言葉足らずのところを突っ込まれたり、見当違いのコメントが入ったりで、挙句の果ては喧嘩状態ということもよく見受けられた。一般に書き込んでいる人に他人の発言の削除権限はなく、管理者を通じて整理してもらわなければならないので、短期間に大勢がワイワイ言い出すものは収拾がつかなくなる。しかしBlogは自分で管理するものなので、コメントの制限をしたり、見当違いのコメントは消してしまうこともできる。要するに言いたいことを言うという点では大きな進歩である。

SNSが紹介制・メンバー制で閉鎖的なコミュニティにすることで不愉快な闖入者を排除しているのに対して、Blogは検索エンジンにかかりやすいもので、発言内容の波及効果が現れやすい。有名な社長Blogなどは毎日100単位でトラックバックやコメントがつく。よく見るBlogはRSSで見忘れないようにして、次第に意見の似たもの同士がつながりあうことで、中身のあるコミュニケーションが成立していく。「主張」と「共感」が次第に「広がり」になるという点で民主主義的なものだと言えるだろう。

こういった新たなメディアを広報・宣伝に使おうという考えは昔からあったが、商業臭さがあるものはすぐ見抜かれてしまうし、逆に叩かれるネタにされる場合もあり、どの会社でも使えるものではない。最初からユーザのコミュニティ意識がある頒布会とか、ベースの確立したところでないと双方向性メディアは扱い難いだろう。そういう意味ではまだマスメディアや印刷物・SP広告というのも活躍の場がある。つまりネットメディアの弱点を突いて提案をしていけばよいのである。

でも印刷物で出来ることは過去にすべてやったよ、と思う人もいるかもしれない。いやそう結論付けるのは早計だ。従来の印刷物では発注したり制作したりする段階では、その印刷物を誰がどのように使うのか、よく考えずにアバウトに処理していた。しかし、例えばQRコードやICタグなどを使えば、利用者を紙から他の電子メディアに誘導することもできるようになり、eビジネスの流れの中に印刷物も組み込むことが出来る。こういったことは印刷のPOD化・バリアブルプリント化で起こり始めている。

2006年2月1日〜3日のPAGE2006は、顧客のビジネスの流れに沿っていろいろなメディアを組み合わせて活用するために開催されます。メディアの「進歩」とは、解像度とか色域とかの物性の問題ではなく、効用あらしめる組み合わせ方こそが「進歩」なのだ。今後のメディアの使われ方をPAGE2006で確かめて、その中でそれぞれの会社のビジョンを考えていただきたい。

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2005/12/28 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会