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パブリッシングが変われば、DTPも変わる

印刷物制作はDTPという方法に変った段階で、入り口から出口までデジタルになった。デジタルによる制作プロセスは印刷分野から発生したのではないように、印刷業界がこのまま変らずズッと同じプロセスを使い続けたいと思っても、容赦なく変化していく性質のものである。見方を変えると、これからのDTPの進化は、デジタルパブリッシングの進化の一部あるいは一小間に位置付けられるわけで、DTPだけ都合よく変えようと思ってもそうはいかず、デジタルパブリッシングが変れば否応なくDTPも変ることになる。

Webにおける近年の最大の変化は「CMS(コンテントマネジメントシステム)」の普及であろう、この名前のシステムは以前からあったが、ここで括弧書きをしている意味は、「htmlを知らなくてもホームページができるシステム」という限定した意味合いで使われているからである。レイアウトについては既存のテンプレートの中からどれかを選んで、ページの中身はブランク(空箱)の中を埋めるようにしていけば、見栄えのするWebページが完成するものを指す。これはよく考えるとBlogと同じようなシステムであることに気付く。実際のページの中身の管理は、CMSではRDBなどのデータベースで管理するものが多く、BlogではXMLで管理するものが多いという違いはあるが、共通の概念である。

印刷においても、それがオフセット印刷をターゲットとした自動組版であったり、バリアブルプリントようであったり、システムの用途は異なっても、同様の考え方のものは広まりつつはある。むしろ歴史的にみれば印刷の世界の方が先輩であるのだろうが、近年のBlog利用の爆発的な広がりに比べると、印刷の紙面制作の自動化の方がビハインドに感じられるくらいである。今までWebの世界と印刷の世界は別々に発展してきたが、AdobeのCS2などが典型だが、両者の共通化をしようという考えは次第に明確になりつつある。それで前述のWebのためだけの括弧付きCMSから、本当に汎用のCMSへの移行がこれから起こると考えられる。

それは、出版のプロセスが以前の「印刷用のコンテンツをWebに流用する」ことから、逆転して「Webのコンテンツを印刷用に流用する」時代に変わりつつあるからである。Blogを書き溜めたものをPODで紙の本にするサービスをBlogの各社が行っているが、それはオフィスのドキュメントでも同じで、1年間の電子会議の結果を自動的に整理して紙のドキュメントにまとめて保存するとか、日々の作業をオンラインで記録して自動的にドキュメント化するなどのテクニックが使われだしている。これらに関してPAGE2006では、A2セッション「自動文書生成のフロー」においてとりあげ、原稿管理から、文書構造化、文書管理、レイアウト構造化、自動ページ流し込み、デザインのテンプレート化など、いろいろな視点で取り組みをされているものが、これからどのような流れにまとめ上げられていって、DTP関連でどのような変化がありそうか、課題は何かを考える。理屈上の自動処理は技術的にどんどん可能となっているが、特に印刷物を作る上での「思い」と、効率化の割り切りというのが上記のそれぞれの段階で今は異なっているのが、中期的にどうなっていくのかを考えたい。

以上文書生成に関する自動化が第1の問題とすると、印刷もデジタルパブリッシングも共通の自動化に関する第2の問題は、文書のライフサイクルマネジメントと情報のリサイクルの自動化に関するものである。Webでアクセス可能な情報が莫大なものとなり、それらを整理して見れるようにすることが大問題となり、セマンティックWebやメタデータの役割がクローズアップされていることを、PAGE2005では採り上げた。報告記事「XMPとJDFで、印刷制作のオートメーションへ」のような動きもあるが、まだXMPもJDFも1年という間での大きな展開はみられない。しかし近年はGoogleやamazon.comの書籍内容の検索サービスや、社会的資産としての博物館・美術館・図書館などのアーカイブの動きは随分本格化しだした。その典型は、近年オープンした国立公文書館のデジタルアーカイブである。(参考記事 その1その2その3

博物館・美術館のアーカイブというと「お宝」というイメージがあるが、公共財として考えると他の出版に再利用できるものが大きな影響力をもつようになる。現在TVのデジタル録画が流行であるが、タレントが出ているものやBGMのあるものなどは私的な利用しかできず、結局整理されて分散的に保管されたものを横断的に検索して再利用する有効な道筋は途絶えてしまう。これでは紙の本が図書館で参照できることと比べても、デジタルパブリッシングは大きなハンディを背負っているのと同じで、有効活用を念頭においた大規模な情報蓄積と、そのために必要な技術や作業について、A1セッション「デジタルアーカイブ時代の情報管理」においてとりあげる。今日のデジタルアーカイブのプロジェクトに加わっている斎藤伸雄氏(凸版印刷)と八日市谷哲生氏(国立公文書館)を交えてディスカッションを行う。

将来において明白なことは、地球規模の情報蓄積がデジタルで行われて、それをネット経由で有効利用する技術を身に付け、また有効利用させるサービスが行われ、今までより少ない工数で、より的確なパブリッシングを短時間に、より自動的に行わせることであり、そこに今の努力が方向付けられていることである。このことを実感しないで作成したパブリッシングのビジョンは的外れのものとなるであろう。ぜひPAGE2006で共に、パブリッシングの変化を実感していただきたい。

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2006/01/08 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会