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捉えがたい標的 陽炎のようなWEB2.0

PAGE2006のBlogにも少し書いたのだが、次世代WEBとしてのWEB2.0が話題である。最初に静的HTMLのWEBがあり、それからCMSなどを使ったデータベース的WEBが起こり、さらに異なるサイト間が連携してアプリケーションを作るとかサービスを行うWEB2.0に進化するという見方だ。PAGE2005報告でも、WEBサービスやアフィリエイトなどを採り上げたが、2005年秋にはオライリーがWEB2.0カンファレンスを開催するなど、一般的な認識として広まりつつある。これには異存がない。WEB2.0に向けてインターネットの状況がすぐに動き出すかどうかについては、CNETで江島健太郎氏述べているように、単なる線形の伸びではなく幾何級数的な展開をするかどうかであるが、それは???という気がする。

確かに今でも最先端の部分はどんどん新たなテクノロジーを吸収して前に進むであろうが、取り残されている分野(eJapanとか、学校のeLearningなんかが典型)があると、量的にグングン行く(幾何級数的)ことにはならない。インターネットの普及は、パソコンの前に座って電源を入れるというスタイルの限界を突破していないのである。かつてTVでインターネットとかゲーム機でインターネットという挑戦もあったが、それらの層は携帯アプリの利用者になっていった。今はインターネットをやりたいからパソコンを覚えよう、という時代でもないのだ。だからパソコンベースではWEB2.0の爆発は難しいと思う。

インターネットのショッピングで、注文のフォームを埋めていくのに、次の空欄の箱に移るのに『タブキー』を押すという習慣は、コンピュータを触った人なら理解しやすいが、今までコンピュータを知らない人には意味不明なことである。白紙から始めた携帯の方がそのようなギミックを排した設計になっている。では携帯がガンガン進んでWEB2.0を先取りしていくだろうか? 今までWEBでサービスしていた内容は携帯でも受けられるようになりつつあり、それはもっと進むだろう。しかし携帯とWEBでは技術の文化が異なる。両者が別々の開発をしているようでは、WEB2.0でクロスデザイン(クロスプラットフォーム、クロスブラウザ云々)を掲げても、魅力半減になってしまう。

携帯は未だに電話会社ごとにインフラからプラットフォームまで垂直に統合している世界であるし、インターネットはインフラ、接続サービス、アプリケーションなどが組み合わせ可能になっている。コンテンツを作る人は今は二股をかけざるを得ないのだが、携帯も水平分業になってもらいたいものだと考えているだろう。s●ftbankなどがIP携帯の革命を起こせばそうなるかもしれない。WEB2.0を指向するさまざまなアプリ開発が、今日のWEB1.5的状況を流動化する可能性よりも、携帯の世界の水平化の方が、きっと大きな流動化をもたらすのではないか。

私もWEB2.0を支持することは変わりない。WEB2.0のキーワードをあらわすこの図は非常に面白い。あなたが興味を持っているものがこの中にいくつありますか? まずは長期的な動向としてWEB2.0を含め、メディアとその利用がどういう方向に進みつつあるかを考えてみよう。これらのキーワードを意識して日々のニュースをふるいにかけて読むのがよいだろう。ただし、あまり部分的な技術変化に意識が囚われてしまうと(かつてgeekというよな人に振り回されたことが、ITバブルの一つの要因でもあったように)、木を見て森を見ず、になってしまう。

あなたが別にWEB2.0の幾何級数的展開に期待して、それに乗じて大躍進をするというベンチャー的野望がないのなら、無理に最先端のアプリに自分の仕事を結びつける必要もないだろう。それよりもeJapanとか学校のeLearningのように遅れている「足元」の改善を手助けして、得意先とよい関係を築いていくことが先決ではないだろうか? そして動向を捉えるセンスを常に磨いておきさえすれば、得意先の環境が進んで新たな飛躍のチャンスが来たときに、タイミングを逃すことなく技術を活用することができるだろう。


PAGE2006コンファレンスは、印刷からWebまでの各種メディア制作の2〜3年後のビジョンを考えるために,グラフィックス,デジタルメディア,MIS/CIMの大きく3つのトラックを設け,その中の各セッションでは先進的な取り組みをしているスピーカー・パネラーがプレゼンテーションとディスカッションを行います。紙と違ってデジタルメディアの変化は止まらない。起こっていることの理解のスピードを上げるために、またメディアビジネスの本質の理解のために、ぜひPAGE2006にご参加ください。

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2006/01/11 00:00:00


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