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今,なぜフリーペーパーが活性化しているのか?

広告+αの販売促進ツールとして活用されてきたフリーペーパーは,2003年ごろから読み物が主体となった雑誌形式の「フリーマガジン」が台頭し,メディアとしてのカテゴリーを確立した。創刊10周年を迎えるフリーペーパー『東京シーサイドストーリー』のクロスメディア戦略展開について産経新聞社営業局プロデューサー小松利央氏にお話を伺った。

多彩なターゲットメディアを発行

産経新聞が発行しているターゲットメディアは,有料紙が3紙,有料誌が4誌,無料誌が2誌ある。タブロイド紙の『夕刊フジ』,スポーツ紙の『サンケイスポーツ』,旧日本工業新聞の『フジサンケイ ビジネスアイ』の3紙と,クラシックファン向けの月刊音楽情報誌『モーストリー・クラシック』,月刊オピニオン誌『月刊 正論』,100万部発行のテレビ情報誌『月刊TVnavi(テレビナビ)』,月刊ペット雑誌『ル シャン』の4誌が有料である。無料誌としては『東京シーサイドストーリー』のほかに,20〜30代のOL向け『メトロポリターナ』を東京メトロの主要駅100カ所に配置し,毎月20万部発行している。
以上のように,産経新聞は新聞を核として,多種多様なメディア発行にチャレンジしている。新聞は幅広い読者層に訴求しているが,他方で読者層を絞ったメディア(ターゲットメディア)の重要性に早くから気づき,現在ではかなりのシェアを占めている。

クロスメディア戦略

『東京シーサイドストーリー』は1996年3月の創刊以来、臨海副都心公式メディアとして,都内全域の産経新聞に折り込みの形で届けられているほか,東京湾岸地区の各施設に配置し,毎月40万部発行している。
創刊当時,東京都からの全面的な支援と地元の進出企業との協賛などで成り立ってきた。創刊8年目を迎えた2004年にタブロイド判から雑誌の形にモデルチェンジした。タブロイドよりも持ちやすく,保存性に優れ,インクも手に付かないというメリットで雑誌タイプに決めた。
しかし,形を変えるだけではインパクトが弱いので,新しいコンセプトをもったフリーマガジンを目指して,ITとの連動を模索した。読者(ユーザ),『東京シーサイドストーリー』,モバイル,地元施設,フジサンケイグループとの連携をいかに図るかである。
リニューアルと同時に,モバイルサイトを立ち上げたhttp://t-seaside.jp/ts。パソコンではなく,モバイルである理由は移動性である。24時間,どこにいてもアクセスできる。さらに速報性,即時対応性,汎用性があり,広域でネットワーク化が可能だった。
しかしながらモバイルサイトを立ち上げる場合,キラーコンテンツ,目玉コンテンツがないとなかなかアクセスは上がらない。お台場にはレストランが250店舗,ショップが1100店舗ほどあるが,レストランを使ったコンテンツをビジネスパートナーである東京ベイスタジオが開発した。「360°パノラマビュー」という店内の模様を360°ぐるっとモバイルで見ることができるもので,これしかないと即刻採用した。
現在,このシステムを採用しているところはほかにはない。当時は世界で初めてのシステムで,金沢のIT会社が開発した。『東京シーサイドストーリー』と誌面連動したものができるのではないかと始めた。
『東京シーサイドストーリー』は40万部発行しているが,紙にはコスト面からも限界があり,それ以上の広がりはない。ところがITには広がりが無限にある。バーチャルな形でページをめくるように見られることで40万部の限界を打ち破れるのではないかと考えている。
全部で50カ所のリンクを貼っているので,例えばコカコーラのホームページに行くこともできる。広告だけではなく,編集紙面の中のURLが載っているところはすべて飛ぶように設定している。
臨海副都心まちづくり協議会のホームページにシーサイドストーリーのコーナーがあり,同じようにデジタル版シーサイドが見られるようになっているhttp://www.seaside-tokyo.gr.jp/story/
デジタル版シーサイドは拡大も縮小もできるし,管理画面からページのアクセス,広告のアクセスなどもすべてデータとして出てくるので,再び編集に活用したり,営業に活用したりという2次利用もできるシステムになっている。

フリーペーパービジネスの5つの要素

『東京シーサイドストーリー』を,収支から結果まですべて見ているが,全国のフリーペーパーが収支的にどこまで利益を出しているのか,疑問をもたざるを得ない。現実に『東京シーサイドストーリー』は,毎月1200万円くらい経費を掛けている。会社としては,平均で1500万円のグロス売り上げがある。お台場は夏場とクリスマス,特に夏場が一番活況を呈する時期は2000万円を超える時もあるが,半期で約1億円の収入を出さなければならない。そのためには5つの要素がある。
第1は,お台場にはいろいろな商業施設,博物館,遊技場がある。施設にたくさんの人に来てもらい,お金を落としてもらう。『東京シーサイドストーリー』はそのためのお手伝いをしているので,まずお台場の主要な施設をカバーする。
第2は,新規の広告主やお台場に進出している企業に対してである。2006年3月にパークシティ豊洲という三井不動産の大型分譲マンションに付設して,秋には大商業施設ができる。「ららぽーと豊洲(仮称)」と呼んでいるが,そういう東京ベイエリアの商業施設にQRコードを使った動画コンテンツを見せる。
メーカーによる新商品も,テレビCMは版権や肖像権の問題がクリアできればCMビデオを流すこともできる。これはまだ新聞ではやっていないが,『東京シーサイドストーリー』では積極的にやっていきたいと考えている。そういう形で既存の広告主,新規広告主を取り込んでいく。
第3はモバイル広告である。2004年4月には7万1000ページビューだったのが,2005年8月号では40万ページビューと着実に伸びている。いろいろなコンテンツを出したことや,日々更新を掛けて紙面にはない新しいニュースをモバイルで流したことが理由である。
モバイルの良いところは,紙面で誤植があった場合,即日モバイルで訂正できるところである。従来なら産経新聞の本紙にお詫び訂正を入れることもモバイルでできるという速報性がある。
第4は40万ページビューとなれば,一つの媒体として認知される。モバイル広告では1ページビュー3〜4円というのが相場である。パソコンの1ページビューは0.5円くらいなので,比べると単価が高い。単純に計算すれば,40万ページビューすべてバナー広告やテキスト広告を貼り付けてしまえば,毎月120万円の収入になる。これが産経新聞が目指している収入の一つである。
第5はパノラマビューによる参加店からの会費収入である。そしてECでお台場の逸品などを携帯で取り上げたり,紙面と連動させたりする。『R25』がネットプライスでやっているが,同様なものをお台場で行い,その上がりの割合を産経新聞が受け取る。この5つの収入構造をこれから10周年に掛けてやっていきたいと考えている。

(通信&メディア研究会)

2006/01/23 00:00:00


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