一昨年頃から「クロスメディア」という言葉が使われだし、最近は聞きなれた言葉の一つとなった。
「クロスメディアの定義は?」と問われたとき、万人に共通する答えを用意することは難しい。例えば広告業界は、それを「アナログ」から「デジタル」へ、そして「マス」から「パーソナル」へのクロスオーバーを指しているとしている。ある広告代理店によればクロスメディアマーケティングの目的は「複数のメディアのメリットを活用し、多様化する消費者動向に適した新たなアプローチ手法の生産及び、ROI(Return On Investment)の最大化をはかるマーケティング活動」としている。一方、印刷業界を代表するJAGATでは、情報資源を紙、DVD、インターネット、モバイルなど多様なメディアへ効率的かつ効果的に展開することとし、特にメディア制作の担い手である業界に向けて、クロスメディアパブリッシングの分野でのプロデューサ的な人材と技術的な知識をもつ人材の育成をサポート・推奨している。
このように業界によってとらえ方が違う中で、一つだけ言えることはクロスメディアの中核としてモバイルは外せないということである。
携帯電話がより生活の中へ
生活者の間に携帯電話やWebが普及するに従って、メディアは双方向性を高め、複数にまたがって使われるようになった。特に携帯電話は通信のインフラからiモードの登場でITインフラとなり、Felicaが搭載されて生活インフラへ変化した。
ITインフラとしての携帯電話の役割は、マスメディアで告知して携帯電話でレスを受ける、印刷物では表現しきれないところはWebで説明を加えるといったリアルとモバイルの橋渡しであった。そして電子マネーであるFelicaが搭載された携帯電話は会員証、ポイントカード、チケット、自動販売機、ATMなどの利用が可能となり、リアルの生活の中で欠くことのできない存在になりつつある。
マーケティングにおける携帯電話の最大の特徴は、すでに死語になりつつあるが「One to One」である。そのOne to Oneの中核にある携帯電話が、あらゆるメディアを橋渡しする重要な媒体となっている。企業はマスメディアだけでは説明できない部分を、「携帯へのメルマガ」や「QRコード」を使って補完情報を提供するとともに、モニターを募集したり、クーポンで店舗に誘導したりしていた。
Felicaが搭載された携帯電話はさらにメディアとしての付加価値が期待でき、これらマーケティング活動のROIを高めるだろう。
クロスメディアマーケティングにおける携帯電話の役割は、関心を持ったユーザにアクションを起こさせ、商品価値について理解を深めることであり、さらにサンプリング、クーポン、顧客の囲いこみなどによりマーケティングゴールまでの動線をより確実にすることができるのである。
PAGE2006コンファレンス「デジタルメディアトラック」では、モバイル、Web、クロスメディアなど時代のマーケティングを象徴するテーマを取り上げている。とくに「クロスメディアのポテンシャル」セッションは、クロスメディアの事例を数多く知るよい機会である。各パネリストに紹介いただくクロスメディアプロモーションの事例のキーポイントは「モバイルの活用」である。
インターネット広告の代理店セプテーニは、「アフィリエイト」をキーワードにクロスメディアマーケティングの取り組みを紹介する。
天丼チェーンてんやを運営するテン・コーポレーションはてんや倶楽部を中心としてクロスメディアによる入店から来店までの仕組み、ブログ、メール、FAXによるマーケティングの取り組みを紹介する。
英語の通信教育、出版社として知られるアルクは、コミュニティサイトやブログによるユーザの囲い込みの事例を。
東京メトロは、地下鉄というインフラ上で展開する駅・街中のクロスメディアの取り組みを紹介する。
制作ビジネスを担う側も、プロモーションを展開する側も、クロスメディアビジネスにおけるヒントを得られることが大いに期待できる。
2006/01/24 00:00:00