本記事は、アーカイブに保存されている過去の記事です。最新の情報は、公益社団法人日本印刷技術協会(JAGAT)サイトをご確認ください。

変化するメディアの制作、編集、視聴環境

PAGE2006(2006月2月1日-2月3日)では、クロスメディアコンファレンスという、メディア関連の組織や団体主催でイベントを開催する枠組みがある。約6万人が来場するPAGEの会場で、各組織や団体の事業に関連の深い活動を紹介していただくことにより、JAGATと参加組織が相互に事業を発展させていくことを目的としている。

PAGE2006クロスメディアコンファレンスに先立ち、1月19日、プレス向けのプレイベントをに開催した。PAGE2006クロスメディアコンファレンスに参加する組織の方々が一同に介すのは今回のみ。それぞれの組織から、PAGEで行うイベントについて紹介していただくとともに、それぞれの立場から新たなフェーズのクロスメディアに関する意見などもお話いただいた。

編集能力の底上げをする「編集学校」
編集工学研究所編集学校ワークショップ

編集工学研究所は、工作舎「遊」の編集長であった松岡正剛氏が編集という方法をエンジニアリングする研究を目的に設立された。ISIS編集学校を中心に、コンテンツ制作から、研究開発、人材育成などに取り組んでいる。


編集学校は、松岡正剛氏が長年培ってきた編集ノウハウを核に、インターネット上での教室形式で、師範代・師範と数人の仲間たちと成長していくように組み立てられている。メディアやインターネットを含めたクロスメディアにおいて、編集の重要性は増していくという考えから、編集工学研究所では編集学校という学ぶ場を設けたという。2000年の開講以来、全国で約3000人の卒業生を送り出している。

編集学校では、情報を簡易化したり、対応関係をつけて系列化するなど、8段階のプロセスを学ぶことができる。今後は、3000名の卒業生と編集工学研究所の新たなメディア展開が期待される。

玉石混合の情報があふれているインターネットに、ポータルサイトサービスが登場した。しかし、編集されているわけではないため、信頼できる情報かどうかは各個人が判断しなければならない。数年前には、ネットコミュニティで共同知が作れるのではないかということも語られた。しかし、期待された電子会議システムは、荒らされたり、「出会い系」になってしまうなどの問題があり、発展していない。

最近、ブログでコンテンツをやりとりして共同知を作るという動きがある。編集工学研究所では、ブログで発信する個人の情報に信頼性を持たせるため、編集者の重要性が増すと考えている。数多くの一般の視聴者やライターがコンテンツをつくりはじめている。編集学校はブログやSNSのレベルアップも目的のひつつとしている。編集学校では、インターネット上のコンテンツ全体をメディアとしてとらえ、編集者のランク別資格化やコンテンツの階層分けを考えている。このためにも、目利き力のある編集者を育成する必要が高まっている。

松岡正剛氏は「図書街」というプロジェクトもプロデュースしている。インターネットの世界にスコアをつけたいということが発端ではじまったプロジェクトである。図書街は、東京ドーム4個分くらいの仮想空間に、100万冊が収容できる本棚を置く。その知の空間にどのようなコミュニケーションが生まれ、コンテンツが生成されるのか、という実験が行われる。図書街プロジェクトは、独立行政法人 情報通信研究機構(NICT)のユニバーサルコミュニケーション分野のメインの研究として位置づけられており、慶応義塾大学 金子郁容氏を中心に進められている。

 PAGE2006では、インターネットの編集学校で行っている内容を、リアルな場においてワークショップ形式で体験する。


テレビ業界とネット業界のお見合いの場
第3回テレビとネットの近未来のカンファレンス

(テレビとネットが生み出す新しい新時代TV体験を大胆予測!)

今回で第3回目となる「テレビとネットの近未来のカンファレンス」は、KNN 神田敏晶氏が主催し、データセクション 橋本大也氏がコメンテーターをつとめている。また、テレビブログを運営するメタキャストとコラボレートして運営されている。

何年も前から「テレビと通信の融合」と言われてきたが、いまだにネット業界とテレビ業界はが互いをあまり知らない。「テレビとネットの近未来のカンファレンス」はテレビ業界とネット業界がお見合いするような場として開催されている。テレビ業界とネットの業界の現場にたずさわる人、橋本大也氏のようなネットワーカーやハブ的な存在の人たちを招き、プレゼンテーションを行ったり懇親会をしたりすることで、テレビとネットの業界の将来を見通したい、と神田氏は語る。

第2回のカンファレンスは「CMスキップとVideoPodCastingがもたらす影響」がテーマだった。カンファレンスへの期待は高く、募集を開始すると100名の定員が数日から、早いときは1日で定員に達してしまうという。カンファレンスでは、神田氏も参加し、海外のネットやメディア事情をビデオレポートする。技術の側面や生活の側面からその変化について紹介している。


PAGEで開催する第3回目では、第1回と第2回のことを振り返るとともに、神田敏晶氏と橋本大也氏が「ネットサービス10番勝負」を行う。それぞれが良いと思うWebサイトやサービスを10個づつ紹介して勝負する。また、テレビブログを運営するメタキャストも講演者の一人として参加し、テレビブログプレイヤーという新しいソフトウェアを紹介する。

テレビブログは、テレビ番組に関するコメントをブログで書くことができたり、テレビの番組表を掲載している。この番組表にはトラックバックをつけることができる。トップページには、番組のトラックバックランキングを掲載し、今どの番組が注目されているのかを知ることができる。例えば「西遊記」を見た人がおもしろいと思えばトラックバックする。ハードディスクレコーダーに録画をする人が増えている。大量の番組が録画できるようになってきているので、トラックバックランキングを参考にして、評判の良かった番組を見る、ということが可能になる。

PAGEで開催する第3回テレビとネットの近未来のカンファレンスでは、パソコンに録画して、テレビブログで人気の高いものだけを見るという視聴スタイルや、ユーザーが牽引する新たな展開などについても議論される。

ニッチを集める大きなビジネス
ロフトワークブログとクロスメディアとロングテールの幸せな関係


制作代理店のロフトワークは、現在約4500人のクリエイターが登録する無料のコミュニティサイトを運営している。サイトにはブログや作品をアップするストレージの機能がある。登録したクリエイターのためのリアルな場でイベントなども行っている。コミュニティサイトは無料なのでここからロフトワークへの収益はないが、制作案件によって膨大な登録者から最適なクリエイターと組んで、クライアントのニーズにマッチした制作物を制作するという部分がロフトワークのビジネスであり、大きな強みとなっている。制作する分野は映像、Web、携帯コンテンツ、グラフィックデザイン、ファインアート、店舗デザインなど幅広い。

ロフトワークがPAGEで行うセミナーのテーマは「ブログとクロスメディアとロングテールの幸せな関係」。メディアが急激に変化するとき、様々な概念や言葉が登場する。一昔前でいうならマルチメディア、今ならWeb2.0やブログなどだろう。それらを単なる流行の言葉で終わらせずに、どのように関わればビジネスとして成り立つのか。AmazonやGoogleにみられるように、ニッチの部分をたくさんあわせたロングテールの部分を大きなビジネスとして成長する企業が登場しているという現状がある。

講演者にMovableType の開発元シックス・アパートの関信浩社長と、ウェブプロデューサーとして著名なメディア・広告領域ブロガーの高広伯彦氏を招くとともに、制作側の立場からロフトワーク 諏訪光洋氏が、最新の受注案件からSNSやブログなど組み合わせた制作関連の事例などが紹介される。新しいメディアとしての「メディアとしてのブログ」、「広告」、「制作」の観点から、「ビジネスのもっとも盛り上がる部分はどこか」について活発な議論が期待される。


企業との連携プロジェクト
デジタルワークスフロンティア「クロスメディア時代の人材育成コラボレーションプログラム」



デジタルハリウッドでは『デジタルワークスフロンティア「クロスメディア時代の人材育成コラボレーションプログラム」』を開催する。最初に、デジタルハリウッドの杉山知之学校長が、クロスメディア時代の人材育成をテーマに講演する。次に企業との連携カリキュラムを紹介する。デジタルハリウッドでは、企業内のノウハウを後継者育成につなげるための講座や、企業と連携した収益ビジネスもてがけている。最後に、2004年4月に開学したデジタルハリウッド大学院の多様な産学協同プロジェクトや、カリキュラムを紹介する。

開学して2年目になるデジタルハリウッド大学院では、16人の卒業生のうち、6名が起業している。大学院に入る人の多くは起業を考えているという。入学前に思い描いている具体的な事業に対し、それを実現するために必要知識をデジタルハリウッド大学院で習得しようと考えている。

デジタルハリウッドは1994年から11年間、クリエイター育成を行う教育をリードしてきた。その一方、企業と提携したビジネスや産学共同プロジェクトなどにも力を入れている。PAGE2006では、これまで学校という位置づけが強かったデジタルハリウッドが、拡大をしつつある企業連携の部分を中心に、多様なプロジェクトやIT系のサービス、映像コンテンツ事業などの事例が紹介される。

これまで、テレビやゲーム、Webの業界に多くのクリエイターを輩出してきたデジタルハリウッド。PAGE2006への参加により、出版・印刷業界へのネットワーク拡大についても期待を寄せる。

企業情報のXML活用
XMLコンソーシアム基幹系情報システムへのメタデータ活用


XMLコンソーシアムはXMLの普及・啓蒙を目的に設立された団体である。XMLコンソーシアムのメタデータ活用部会は、最近ドキュメント部会を吸収し、ドキュメント・メタデータ活用部会として、メタデータの標準やSNS・Blogにおけるコンテンツ連携モデルの検討、XMLを活用した技術、商品の調査などを行っている。特に、Web2.0と企業情報系におけるXMLの活用を中心にテーマとしてとりあげている。

XMLコンソーシアムは地味な印象をもたれがちだが、2005年の愛知万博では、メタデータを保有した地図や辞書など17のWebサービスと連携させて、パビリオンの周辺情報を提供する仕組みも提供したという。

コンプライアンスの意識が高まっていることもあり、企業情報システムは今非常に保守的になっている。Web2.0のような概念を取り入れようという企業は少ないという。しかし、その活用は業務効率に大きく貢献するとXMLコンソーシアムでは考えている。人事、総務、経理などをXMLにして、オープンな規格で連携するためヒントが、PAGEで開催するセミナー「基幹系情報システムへのメタデータ活用」で紹介される。

2006/01/26 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会