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自動組版でDTPが前進する?

DTPが日本でも印刷物制作の標準になって数年経過した。数年? 振り返るとまだ数年しかたっていないのに、随分長くDTPに浸かっていた気がする。DTPとともにネットワークも充実してきたので、机を離れることは少なくなった。トレーダじゃないけども、朝から夜まで画面の前にへばりついている人も多くいるだろう。レイアウトに文章を流し込んで修正が入って、またゲラを出して、また修正して、オレはこんな人生でいいのか、みたいにグチったら、ワシなんかは画像を拡大してドットの修正しているだけで1日が終わったとかいう話もあった。

確かにコンピュータという道具は使ってはいるが、コンピュータを成り立たせている論理性とは程遠いDTP生活な人もいる。でもこういう現実は宝の山のようなもので、チャンスがここにあると考える人がいる。業界のさる著名人の方は、以前は全く別の職種に勤められていて、そこでは作業者の一挙手一投足をストップウォッチで計って、生産性の改善に努めるというやり方だったので、その方が版下製版の作業場を見たときに、チョロイ仕事だと思われたのだろう。業界内で大変に競争力を発揮された。今のDTPもまだそういう段階を抜けきっていない。

印刷業の生産管理問題を取り上げる時に、いつも他業界と比較して生産性向上に賭ける執念が比べらものにならない(印刷業のそれが高いというわけではなく)という気がする。それは印刷という仕事の特殊性の故だと言われてきたが、本当だろうか? 確かにアナログ工程の場合は特殊な要素があったが、デジタルデータとパソコンになった今は何が特殊なのだろう。印刷業は過去からの仕事の内容や商習慣という変り難い「慣性」と、変化の激しいITの板ばさみになっていることが今日の「困難さ」の原因であって、仕事の改善という点ではIT以外のソリューションはないといえる。

そのような状況なので、DTP周りの自動化に多くのところが取り組んでいる。PAGE2006でも自動組版的なシステムの出展が多くなってきたことも、IT以外に制作改善の方法がないことの現れだと思う。しかしすぐにDTPの現場が自動組版化して作業が改善されるかというと、そうはいかない。万能の自動組版「薬」となるソフトなどないからである。DTP現場の改善は、ソフト半分、仕事の仕切り方半分だと思う。仕切り方が全部だという人もいるかもしれないが、幾ら有効なソフトであっても、ソフト設計考え方と、使う側の仕事の流れがが合わないと効果がないのは明白だ。

組版やレイアウトの自動化という点でどのような視点の相違があるかを考えると、かつての業界側の要望を超えて、今日では非常に多様な自動化の要求があるように思える。PAGE2006で初めて出るものもあるので、詳しくは会期後に改めて書きたいが、頭の中で考えて大雑把に分けると、素材派、自動編集派、ビジュアル派、出版派の4つの異なる指向があるような気がする。

素材派とは、IT屋さんに多いシステム指向で、素材となるデータに、その素材がどう扱われるべきかを表すプロパティを付与しておいて、なるべく素材が一人歩きできるようにする考えである。これはワンソースマルチユースには向くが、ともすると旧慣習との摩擦で潰れてしまいかねない。営業マンの持ち歩き用販促資料を半自動で作り出すなど、グラフィカルな部分の仕様はあまり厳密なことを言わなければ使える。

自動編集派は、GoogleNEWSのように、統計や相関を数値的に処理して、「らしい」モノを自動的に寄せるもので、ITぽいがマーケティング的な媒体などにはよいかもしれない。これは元々素材にプロパティがついていないので、それを類推すること行う。新聞の案内広告の並べ方の処理とかも似ている気がする。今後パーソナライズ・バリアブル印刷でも使われることが多くなるだろう。

ビジュアル派は、見栄えのコントロールを自動的にすることを第一義にするもので、基本レイアウトへの素材のあてはめとか調整、文字の太さやサイズの調整などを自動化する。WEBのスタイルシートのようにスキンをかぶせるとか、今までにない斬新なやり方がいろいろ考えられる。チラシなどにはよいが、ページをまたがるものは難しい。

出版派とは書店派ともいえ、書籍のようにフォーマットは決まっていて、Blog本ではコンテンツの如何に関わらずに一定の様式に押し込んでしまう方法だ。オンデマンド本もこういうものである。これはBlogに限らず、Web上のサービスとしてセルフサービスの本作りになっていくだろう。

この他のモデルもきっとあるだろう。当面は自動組版はDTPのフロンティア領域であり続けるだろう。しかし今まではDTPオペレータレベルの作業を自動化しようという発想が多かったが、ネット時代は発注者のセルフサービス用の自動組版が多くなりそうである。セルフサービスが登場することで、人的ノウハウの価値が逆に見直されるとよいのだが。

PAGE2006 開催中!!

2006/02/01 00:00:00


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