本記事は、アーカイブに保存されている過去の記事です。最新の情報は、公益社団法人日本印刷技術協会(JAGAT)サイトをご確認ください。

着実に前進する印刷CIM実現への動き

Page2006のMIS/CIMトラックは、昨年同様6つのセッションを設けて開催した。参加人数は241名で昨年よりも8%ほど少なかったが、昨年はJDFドルッパと言われたDrup2004の余波もあった。各セッションへの参加状況を昨年と対比してみると、この1年で印刷CIMやデジタルネットワーク化実現に向けた動きがまた一歩前に進んだことが感じられる。

Page2006のMIS/CIMトラック6セッションで参加者が最も多かったのは、JDF云々には直接関わりのないE3セッション「全体最適を目指すネットワーク化」とE2セッション「工務業務の自動化に向けてのシミュレーション」であった。昨年は、「わが社の経営課題とCIMの位置づけ」や「全体最適化を実現するMISの要件」の参加者が少なく、「JDFの実装の課題と見通し」および「JDF対応製品と運用事例」という、JDFに直接関連するテーマの参加者が多かった。今回は「実用度を高めるJDF規格とCIP4の活動」への参加数は少なく前回とは全く逆の参加状況である。各セッションの参加者属性を見るとPage2006ではメーカーの参加者が減って印刷会社の参加者が全体の8割となり大幅に増えた。
上記のような各テーマへの参加者数および参加者属性の変化は、この1年間における技術面の進歩と印刷業界側の意識の変化を反映していると思われる。

2年ほど前のJDFフォーラム・ジャパンでは、工程管理面でのJDF規格の不備、不明確さがかなり指摘された。今回のMIS/CIMトラック「実用度を高めるJDF規格とCIP4の活動」では、それらが順次整備されていることと、それ以降に日本のCIP4メンバー企業がCIP4に出した要請も着実に規格に盛り込まれていることが報告された。JDF規格は着実に実用度を高めており、それ自体に対する基本的な部分の問題指摘はなかった。
この2年間、CIP4のメンバー企業も増え、各システム間の連携を個別に規定するICSの範囲も広がり、具体的なシステムの相互互換テストも2ヶ月に1回のペースで行われてきた成果であり、ベンダーの参加者の減少、JDFに直接的に関わるテーマを掲げたセッションへの参加者が少なかった理由もここにあったと見ている。

印刷業における認識も、将来像を具体的に考える中でJAGATが述べてきた方向に動いてきていることが、今回の参加状況に現れていると思う。
印刷CIM実現のステップとしてJDF対応の生産設備導入を考えたとき、一時にJDF対応の印刷機に入れ替えることはできない。古い設備の更新あるいは設備の新設・増設時に対応機を導入し、その機械についてはとりあえずプリプレス設備との連携で各種調整機構のプリセット自動化でメリットを得ておくことになる。CIP3におけるインキキープリセット機能の導入でも、全ての機械を入れ替えなければ意味がないと考えた企業はないだろう。
つまり、MISと生産設備の連携は印刷CIMの最も大きな要素ではあるが、それがいきなり最重要課題となるわけはない。ロードマップの最初のステップは、生産設備の導入は上記のようなことになるだろうし、MISの側では、印刷CIMの実現を念頭においてJDF対応を考慮しておくことを前提として、まずはMIS自体を進化させることである。具体的には、統合システム化と電子伝票化を基盤として、外部組織を含めた情報共有や各種シミュレーション機能を盛り込んだMISを作ることである。このこと自体はJDFとは関わりのない部分である。以上が、JAGATが述べてきたロードマップの大枠である。

Page2006の MIS/CIMトラックで、工務業務の自動化をテーマにしたセッションやコンピュータの働かせ方として各種のシミュレーション機能、情報共有機能の活用事例紹介のセッションに最多の参加者があったのは、これから一歩一歩印刷CIMの実現に向かっていこうと考えている印刷企業各社の検討内容が、より具体的なものになってきたことを示すものと見る。
「JDF」への関心がもうひとつ盛り上がらないという声がメーカー側から聞こえてくるが、 道具の話に関心が持たれるのは初期段階である。上記のように見れば、状況としてはこれからが本番と前向きに捉えていいのではないだろうか。

MIS/CIMトラックの概要は、これから順次紹介していく。

2006/02/08 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会