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増加するRGBデータ入稿

 デジタルカメラの普及により,印刷用原稿としてRGBデータが入稿されるようになった。デジタルカメラによるRGBデータの入稿やワークフロー構築について三浦印刷の森澤威氏にお話を伺った。

RGB入稿の問題点

 デジタルカメラ対応は,1995年にLeaf3ショットカメラバックを当社プランニングセンターに導入したのが最初である。当時はデジタルカメラの販売機種も少なかったが,その中でも高品質なLeaf3ショットを選択し,社内で撮影することで技術的なノウハウを蓄積することを目的とした。

RGB入稿には以下の問題点がある。
・カメラマンにデジタルカメラの知識やデジタル処理が要求される
・ポジ原稿という色見本がない
・カメラマンと印刷会社の責任や役割領域が曖昧
・入稿RGBがどこまで処理済みかわからない

カメラマン側では,
・従来のライティング技術が生かせない
・RAW上のデジタル処理や色調の確認方法が困難
・思ったとおりの仕上がりで印刷されない
印刷会社側では,
・入稿RGBの品質にバラツキがあり修正が困難
・カメラマンの撮影意図なのか?色処理忘れか?
・どこまで修正すればよいのかわからない
・短納期のため時間をかけられない

 実際にクライアントやカメラマンと打合せすると上記の問題が複合的に絡み,クライアントの要望やカメラマンのスキルに合わせた対応をその都度提案する必要があった。
 しかし,この方法だと高品質は維持できるが,短納期に対応できない,CMYK変換後の色補正でDTPオペレータに負担がかかる,カメラマンのスキルも向上しない,という問題が発生した。
 この段階で双方にメリットをもたらし,作業効率を向上させるためには,カメラマン側で標準化すべきことと印刷会社側で標準化すべきことを整理する必要があると感じた。そして当社の標準化への本格的な取組みが始まった。

役割分担と責任の明確化

カメラマンは
・RAWで画像補正し,カメラマンの意向を反映する
・印刷会社で作り込むものは色見本をつける
印刷会社は
・印刷用に適正なCMYK変換を実施する
・色見本があるものは印刷会社で作り込む

 こうした役割の明確化は,社内スタジオでは問題なくルール化できた。クライアントから直接入稿する場合では,RGB入稿の問題点を事前説明することによってスムーズな入稿に改善することができる。要は問題点をお互いに共通認識することが最初のステップとして重要なのである。

当社のRGB入稿時のワークフロー

 カメラマンは撮影時にライティングを調整し,取り込まれたRGBをRAWソフト上で確認しながら基準画像処理を実施する。この処理においてホワイトバランス,グレーバランス,ハイライト,シャドウの補正をする。ハイライト,シャドウ設定はヒストグラムを確認し,不要な領域を切り捨て,再現したい領域をレベル補正で設定する。
 この段階でRGBの調子が決定し,16ビットから8ビットへの適正なダイナミックレンジの移行がなされるのである。そして受取側であるDTPオペレータがPhotoshopを使用し,当社用CMYKプロファイルによる変換を行う。通常はプロファイル変換だけでも問題はないが,クライアントの要求品質や色調指定によってはCMYK変換後に補正テーブルや特定色域を付加して対応する。

 基準画像処理がなされていない場合は,専用変換ソフトを使用し,原則スキャナ分解と同様にセットアップする。これは個別にセットアップする品質案件には適している。しかし,専用変換ソフトはオーバーコレクション気味で彩度重視に変換される傾向があるため,当社では階調重視の画像に対しての使用は避けている。特に高品質案件では,後処理が必ず発生するため,DTPオペレータにとって修正しやすい画像を提供することが基本となるからである。

 以前は色見本が添付している場合は,必ず専用変換ソフトを使用していたが,最近はPhotoshopのプロファイル変換と色調補正で対応している。特に変換点数が多くなると作業効率が重要になるため,時間のかかるセットアップよりプロファイル変換の方が有効である。そしてRGBの段階で基準画像処理がなされていればプロファイル変換でバラツキもなく平均以上のCMYK品質になる。

入稿データの標準化

・解像度:350dpi
・形式:8bit RGB-TIFF
・サイズ:印刷仕上がりサイズ
・推奨環境:AdobeRGB
・シャープネス:OFF(あるいは最弱)
・添付書類:使用ファイル名明記のハードコピー

 デジタルカメラでは撮影時に印刷仕上がりサイズが決定していることが望ましいが,撮影時にはサイズが決まってないことも多い。その場合,最終デザインで大きく使用されることも考慮してデータを書き出す必要がある。
 注意点としてデジタルカメラの最大CCDサイズで常に書き出してしまうと,サイズが大きくなりハンドリングが悪くなるので,事前に印刷で使用する可能性があるサイズを踏まえて書き出しサイズを決めておくべきである。

 また,撮影環境のプロファイルを埋め込んで入稿すれば,印刷会社側で適正にRGBの色再現が可能になる。これはプロファイルをとおして確実にLab情報が伝わるためである。
デジタルカメラで使用されるプロファイルとしてはAdobeRGBとsRGBがあるが,当社では印刷再現領域をカバーできるAdobeRGBを推奨している。
 AdobeRGBとsRGBではデバイス値が同じでもLab値が異なるため,適正なプロファイル環境で開かないとCMYK変換後の数値が変わってしまうので注意する。

 さらに,入稿RGBデータには,ホワイトバランス,グレーバランス,ピント,ライトのトビ,シャドウのツブレ等の色調や調子再現の問題がある。
 これらは,RGB上で対応すべき問題である。これを後工程のCMYK上で対応しようとすると品質も劣化し,膨大な作業時間が発生してしまう。
 このようにデジタルカメラの標準化には前段階におけるRGBでの標準化が重要なキーとなる。

まとめ

・RAWでの基準画像処理(グレーバランス,ハイライト,シャドウ設定)はカメラマン側で実施
 →カメラマンの意向を反映する
・撮影およびRAW処理の目安
 →マクベスチャートを活用し数値で判断する
・印刷会社側は適正なCMYK変換を実施
 →RGBでの階調,グレー,ハイライト,シャドウを維持し印刷仕様にする
・印刷会社側で色を合わせ込む場合,印刷再現可能な色見本を添付
 →Photoshopや専用変換ソフトを活用する

 今後は,印刷会社においてもRGB画像処理を取り込まなければならない。より川上のクリエイティブワークに関わることが情報加工産業にとっては重要になる。なによりCMYK画像修正で培った画像加工ノウハウはRGBしか知らない業界に対しても優位性を十分に発揮できるはずである。

(テキスト&グラフィックス研究会)

2006/02/12 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会