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印刷CIMにおけるMISと生産設備の連携の形

PAGE2006のMIS/ CIMトラック「MIS/CIMの現状と今後の課題」では、トスバックシステムズの若狭氏から、印刷CIMにおけるMISと生産設備の連携の形について以下の説明があった。

「現在、三井住友銀行に口座を持っている人がUFJ銀行に行こうがみずほ銀行に行こうが自分の預金口座からお金をおろすことができる。それは全ての銀行が共通のフォーマットでお金の動きや手数料決済の情報を扱っているからである。これと同じようなことを印刷物の各種生産機械とMISとの間で行なう手段としてのフォーマットがJDFである。

図1は、いままでのMISと生産設備との連携の形を示している。各メーカーがそれぞれに生産設備のコントロールシステムを持っている。これらのコントロールシステムでは、JDFという同じフォーマットを使っているが、捉える実績情報の内容、通信の仕方はそれぞれに違う。したがって、MISと生産設備との連携のためには、細部においてはそれぞれのコントロールシステムに合わせて整合性をとらなければならない。


▲図1 現在のJDFフロー

ヨーロッパではすでに共通通貨としてユーロが流通しているが、ユーロだけが使われているわけではなくフランもマルクも使われている。現在のMISのJDF対応では、ドルを持ってきたらユーロに替える、フランを持ってきたらユーロに替えてあげる両替屋のようなことをしなければならない。

また、JDFVer1.2を使っている場合には受注の変更情報がリアルに渡しづらい環境にある。すでにJDFを発行している仕事の内容に変更があったときの処理として、上からもう1回被せるか、枝番を付けて違うものとして処理するかになる。

ただし、これは過渡期だからと考えるべきであり、最終的には図2のようなJDFコントロールサーバーをMISと生産設備のコントローラの間に置いたシステム構成になってくるだろう。
2005年秋に発表されたJDFVer1.3では、受注の変更情報はJMFでやり取りする仕様になっている。すでに発行したJDFに再度被せるのではなく、変わった部分だけをお互いにJMFでやり取りしようとするものである。そのような形で図2にあるJDFコントロールサーバーの中のJDFを常に最新にすることができる。実績情報もJDFコントロールサーバーにあるJDFにどんどん付加されることになる。
例えば、プリプレス工程で版を出力したときの面付け、レイアウトデータの所在や、インキコントロールに関連するデータについてはサブミットでファイルを探れといった情報がJDFコントロールサーバーに返ってくる。

図1のシステムでは、いったんMISがJMFを受けてJDFの中にその情報を書き込んで、各生産設備のコントローラーに渡している。しかしこのときには、先に述べたようにそれぞれのコントローラーとの整合性を取る必要があった。それが、JDFコントロールサーバーを中間においた図2の形になると、MIS側ではどのメーカーのコントローラーとの連携においてもひとつの対応で済むことになる。


▲図2 最終的に想定されるJDFフロー

JDFVer1.3が出で図2のような形が可能になったが、トスバックシステムズとしてはこのコンセプトに確実に対応する。今後上記コンセプトに沿って各メーカー、ベンダーが開発を進めていけば、早ければ今年の秋、あるいは年末あたりで足並みが揃うかもしれない。そうなれば、印刷物生産の実態にかなった運用体制ができるシステムに近づいていくのではないだろうか。

以上の内容について、印刷会社側からは、以下のコメントをもらった。
中堅印刷会社である日立インターメディックスでITを担当している尾島氏は、以下のように語った。

「若狭氏が話したJDFコントロールサーバーは理想だと思う。ただ、現実問題としては、どういう商品が出てくるかをユーザ側としてはウォッチせざるを得ない。競争の論理の中で、機器の細かいところの相性を考えたとき、同じメーカーのものなら信頼できるという部分もあるだろう。
現時点では、生産設備を提供する各メーカーがJDFの中継機のように使うという話がある。そして現実の問題として商品を見るとそのような選択肢にならざるを得ないところはあるのだろう。ただし、将来的には、是非、共通なものであってほしいとは思う。」

中堅印刷会社、不二印刷の常務取締役であり、JDF対応を睨んだ社内システムの再構築にも取り組んでいる井戸氏は以下のように語った。
「私も尾島氏とほぼ同意見である。PAGE2006を見ても、ハードに関してはどの機械でもJDF対応と書いている。細かく話を聞き運用メリットを考えていくと、どこまでJDFに対応しているのかと思わせることが結構あった。単にコントローラーあるいは、変換機として1つ入れておいて「JDF対応」としているものもあった。そうまでしてJDFという名前を付けないと新しい機械が売れないのかという感覚に陥るくらいJDFを謳っていた。
そのような中で、いま説明があったような中継機で整合性をとっていくというのは総論だと思う。ユーザサイドは、結局待つしかない。環境が変わっていくのを待つしかないのではないかと感じた。」

2006/03/08 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会