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クロスメディア戦略の鍵はモバイルの活用にアリ

クロスメディアという言葉が周知し、マーケティングにおいても手法のひとつとなった。インターネットの登場で従来のマーケティングとは違った効果・仕組みが考えられるようになり、どの企業もクロスメディアの戦略的視点が必要とされている。
そこで、PAGE2006コンファレンス「クロスメディアのポテンシャル」では、すでにクロスメディアを活用したマーケティングを行っている企業を招き、取り組み事例や課題について話し合った。その結果、クロスメディアマーケティングには、モバイルの活用がキーポイントとなっていることが分かった。
以下は、携帯電話やWebサイトを軸として情報配信、販促を行っている天丼「てんや」と、東京メトロ「Let's Enjoy TOKYO」のプレゼンテーションの要約である。


■てんや倶楽部

てんや倶楽部は、ユーザの声を経営政策に反映させ、ユーザとの「対話」に積極的に取り組み、信頼関係を強化・組織化することをコンセプトにおいたCRMの取り組みである。 以前90万枚の折込チラシを配布したが、1レスポンスあたりのコストが250円で、レスポンス率は2.4%という数字であった。そこでメールとWebによるプロモーションのストーリーを検討し、2001年にASPを利用してローコストシステム構築を行った。その結果、5年目を迎えた現在、1レスポンスあたりのコストは13.6円、レスポンス率は37.6%となった。てんや倶楽部の会員数は、現在66648人である。 てんや倶楽部の目指すところは来店促進である。お店とのリアルの関係が根幹となり、メール、折込チラシ、はがき、FAX、店内POPのメディアを活用し、何度もお店に足を運んでもらう仕組みづくりをしている。

てんや倶楽部の入会から来店までの仕組みは、まずPC、携帯サイトで入会し、カード引き換えメールを配信する。ユーザはお店で引き換えメールを提示してメンバーズカードを受け取るという流れになる。 月々の優待情報、クイズ・プレゼント、ワンクリックアンケートなどのキャンペーン情報をモバイルメディアの特性を活かした内容のメール配信を行い、答えを求めるために来店するという仕組みである。 また、中高年の男性が多い顧客層の対応としてモバイルのものと内容を変えてPCへのメール配信を行っている。

メールの配信は、ターゲットや配信時間帯の細かい設定を行う。月々の優待内容・配信のタイミング・メールの種類の組み合わせで、来店レスポンス率を一定にコントロールすることができる。

また、てんや倶楽部は、新メニュー投入意思プロセスでも活用することができる。本部の協議結果で得たメニューと店舗の店長の意見収集結果で得たメニューが異なることがある。そこで、てんや倶楽部のメンバーに携帯のワンクリックアンケートを行う。配信後1時間以内に4,000〜7,000件に及ぶレスポンスがあり投入決定のメニューが協議開始から3時間で決まるということもある。

■東京メトロ『Let'Enjoy TOKYO』

東京メトロが展開するメディアには、東京地下鉄株式会社の公式サイト、Let'Enjoy TOKYOを含めたWebサイト、中吊りポスター・車体広告の車両広告、駅ポスター・イベントスペース・特殊広告・ちらし類の駅広告、毎月20万〜50万部発行する各種フリーペーパーがある。

Let'Enjoy TOKYOは「目的地囲い込み型探索ツール」として幅広い顧客層に対して豊富な情報を提供できるWebサイトを目指して、2004年4月1日に開設された。サイトでは東京の情報を満載し、発信することでお出かけを促進するとともに収益源の役割を担っている。さらにユーザと双方向の情報発信が可能なコミュニティサイトとしての仕組みも持っている。
例えば、サイトの情報には、バナー、ジャンル区分したカテゴリー、特集、メトロ情報、投稿機能などがあり、これらは収益源となっている。
Let'Enjoy TOKYOの告知展開に関しては、東京メトロの持つ媒体である駅貼りポスター、中吊りポスター、リーフレット配布、パスネットを最大限に活用してLet'Enjoy TOKYOのブランドイメージを訴求した。

目的地囲い込み型探索ツールとしての機能は、メトロ沿線情報を発信し、目的地までの経路検索、周辺地図サービスを提供することによってお出かけを誘発している。携帯サイトでの利用も可能で、携帯版もPC晩と同じデータベースを使用し、同等の情報量を提供している。こちらは、出先でのお出かけを誘発することを目的としている。
現在、8駅で試験運用中だが、出口周辺案内図、出口看板にQRコードを設置し、クリックのみでLet'Enjoy TOKYOのデータベースにアクセスできる仕組みを提供している。
Let'Enjoy TOKYOの会員による情報提供は、東京であまり知られていない情報が集まりやすいというメリットがある。会員がお出かけ先の情報を画像とともに投稿できるとともに、会員自身による情報発信を可能としており、双方向性をもったサイトを構築している。

PAGE2006コンファレンス デジタルメディアトラック「クロスメディアのポテンシャル」より

2006/03/09 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会