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変曲点を迎えつつある印刷産業

印刷業の景況は上向きと言っていい状況になりつつある。JAGAT会員企業の売上前年比は6ヶ月連続でプラスとなり、上場印刷企業の2005年4月〜12月の売上同期比は4.8%になっている。熾烈な受注競争は続いており上場企業の業績は全体としては増収減益ではあるが、仕事量が回復していることは間違いない。日本経済が、安定的な成長路線に乗り始めたということが背景にあるが、業界固有のマイナス要因の影響が薄れてきたことも大きな要素である。それは、デジタル化の進展によるプリプレスの売上減少である。

図1は、印刷産業の売上げ全体に占めるプリプレスのシェアと、全体の増減に対するプリプレスと印刷・後加工の寄与度の推移を示している。

▲図1

図で見るとおり、プリプレスのシェアは1997年時点では40%強であった。この時点では、プリプレスのデジタル化が普及してその付加価値が急速に低下する一方、印刷以降の仕事量や加工度の変化は少ないので、印刷産業の売上げ全体へのプリプレスの寄与度は印刷以降のそれに比べて1桁近く大きくなっていた。図1で見るように、2000年まではプリプレスのマイナスが大きく印刷産業全体の足を引っ張っていたかが良くわかる。

しかし、プリプレスのデジタル化の進展にともなってそのシェアは年々低下し2004年時点では25%になっている。当然のことながら減少幅も年々縮小している。
2001年、2002年は印刷以降工程もマイナス成長になったが2003年以降は再びプラス成長になり、このあたりになるとプリプレスのマイナスの影響は印刷以降工程のプラスでほぼ打ち消すことができる程度にまで小さくなっている。

プリプレスの付加価値減少の印刷業界内部の要因であるプリプレスのデジタル化はCTPの普及をもって一段落するが、その後も顧客の側での内製化が進むので付加価値減少が止まることはない。しかし、上記のようにプリプレスの売上シェアはかなり低くなり全体に対する影響度もさらに弱くなる。図1の2005年以降のデータはJAGATの推計によるものだが、印刷の伸びがプリプレスのマイナスを上回るようになるので、業界全体としてはプラス成長になることを示している。ただし、ここでは価格変動は加味していいないことにご注意いただきたい。

上記は、印刷業界の景況の反転の大きな要素になるが、印刷産業を取り巻く環境も、業界の景況反転を後押しする方向に動いている。
ひとつは、GDPの成長が印刷需要により大きく貢献をする民間消費支出と民間設備投資が主導とするものになっていることである。業界内の状況としては、マクロとしての供給力過剰の調整が進んでいることである。しかし、長期的な視点で見ると印刷需要が減少に転じる日はそれほど遠くない。図2で見るように、印刷物重要はすでに「伸び」から「横ばい」に入っている。

▲図2

今後の印刷産業を展望すると、世の中のITインフラが整い、その上にさまざまなコンテンツ提供、サービス展開が急速に拡大している。その動きは、出版、広告印刷物需要にプラス・マイナスいずれにしても大きな影響を及ぼしつつある。しかし、一方では印刷業に新たな事業展開の機会をもたらしつつある。
今後の印刷産業の発展は、このような波にいかにして乗っていくかにかかっているといっても過言ではないだろう。

来る3月24日に開催する変曲点を迎えつつある印刷産業」では、さまざまな客観データに基づいて印刷業界の現状と今後の展望を解説する。

2006/03/17 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会