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DTPエキスパートから学んだこと

株式会社阿部紙工 制作部部長 武田正敏

 
社長からの一言
2003年5月ごろに社長に呼ばれ,「DTPエキスパートに合格したら,掛かった費用は会社が負担するからぜひ制作部からチャレンジしてください」と言われました。
今まで弊社での合格者は1人しかおらず,毎回社長は制作部にエキスパート試験の案内書を渡していましたが,受験者が現れなかったことで切り出されたことでした。
確かに受験する立場から考えると,受験料2万円の負担は大きく,それが合格した場合という条件は付くものの受験を誘うのに効果があると思いました。まず,自分が受験するということを表明し,制作部で受験者を募ったところ,9人の募集がありました。思ったより多かったので,頼もしさを感じました。
早速アスキー発行の問題集を受験者分購入し,お盆休みの最終日の試験日に合わせた各自の自学自習が始まりました。

他社訪問で刺激を受けたこと
ちょうどそのころ,弊社では他社より遅れていたCTP導入について,そのプロジェクトが機種絞り込みに向け,動いていた時期でした。私はその責任者に指名され,各メーカーのCTP導入先の現場を訪問させていただいておりました。
その中で東京のM印刷さんの訪問をさせていただいた時は,訪問目的のCTPについてよりも,品質追及への社を挙げての徹底ぶり,そして社員教育に対して時間を割き実践されていることに感銘を受け帰って来ました。
このM印刷さんでは,DTPエキスパートを51人が取得されていて,それは従業員の69%になるというお話でした。ご案内していただいた取締役のOさんを始め,工場長,制作部と営業は全員,さらに印刷オペレータが7人などと取得は進んでいました。私はそのお話を伺い,カルチャーショックを受けました。
仕事の中で,DTPの引き出しを出し入れする制作現場,または顧客との会話の中で知識武装が必要な営業と違い,直接DTPと関わりをもたない印刷現場のオペレータが取得するというのは,相当に本人の意志の強さと会社の教育のバックアップがないと成し得ないのではと感服いたしました。
このような会社さんなので,DTPエキスパート取得にとどまらず,印刷技能士取得などにも積極的であり,また社内資格制度もあって,社員の自己啓発とそれを計画をもって推し進めていく会社とが,車の両輪のように相まって,前進されているんだなと思います。

第18期DTPエキスパート認証試験
試験会場は仙台市で会社から9人が会場に集いました。全員試験が初経験でその問題量の多さに圧倒されたようでした。時間配分がつかめず,問題を残してしまった同僚もおりました。私も前半の試験は右一列の解答欄に問題を見ずにマスを埋めるだけになった有り様でした。

課題制作について
課題提出期限は,10日少ししかなく切羽詰まったものでした。私だけが課題Aのマニュアルを選び,ほかは一様にBの旅行パンフレットを選びました。課題制作はその日の仕事をやり終えてからの夜に集中しました。お盆休み後の週ということもあり,仕事はあまり動いておらず,残っているのはエキスパート受験者のみという光景でした。またそれだけでは足らず,休みもつぶし課題制作に取り組みました。
課題制作は,課題制作ガイド作成に一番時間が取られ,そのガイドを見てだれでも一様なDTP作業になることが求められます。慣れないガイド作成に戸惑いましたが,職場で課題制作の参考書を買い求めてあったのが,大変参考になりました。
課題制作を通じ,理想の制作指示のあり方を学びました。現実に現場に流れてくる仕事は新規組みで細かなところまで指示が明確になっているものはほとんどないので,だからDTPサイドでオペレータに渡す前に指示書を作りなさいと言っているのが,このガイドなのかと思います。
ガイド作成からDTP作業の指示だけでなく,全体的な作業のスケジュールにも目を配るというプロデュースの要素もあることを学んだと思います。前述のM印刷さんのように営業でDTPエキスパートを取得している会社さんだと営業と現場の意志の疎通が取れるんだろうなということと,その一方で営業が取得するのだから,現場はそれ以上にスキルを高める努力をされているんだろうと想像されます。

第18期の結果
11月に結果が発表されました。結果は9人中1人の合格でした。全敗でなくほっとしたものでした。
筆記試験でわずか2,3点足りなく落ちた者が2人いました。結果を知った時は,大変残念がっておりました。

その後の認証取得者の推移
第19期は東京で3月に実施され,福島からだと旅費がかさみ,また日帰りの強行軍でありますが,3人受験しました。模擬試験を行ったことが功を奏したのでしょう。結果的に再受験者の2人が合格しました。3月の年度末の忙しい時期に時間を作り,がんばったと思っています。
この2人の合格者を出したことで,仙台開催の第20期のリベンジに第18期の不合格者が闘志を燃やすきっかけになったのは言うまでもありません。
第20期は6人の受験者で,私ももう後がないという気持ちで臨む決意をしました。2004年版のアスキー発行の問題集をまた受験者分購入しました。そして2003年版の問題集も併用し,7月の土,日の休みから勉強を開始しました。1年前の反省から何回も何回も反復し,条件反射的に回答をしていくまでに問題を解くことと肝に銘じました。
会社に入ってからこれほど勉強したことはなく,受験以来のことでした。夏だったので,日が昇るのが早いので平日は少し早起きし,勉強しました。
それと模擬試験の効果もやるとやらないでは違うことも分かりました。
結果的に11月の発表で,リベンジの2人と新規受験の1人合計3人が合格しました。私の受験番号が合格者発表に載っていると教えられた時は本当にうれしかったことを覚えています。
また,第22期の昨年8月の仙台会場に2人受験し,リベンジの課長が11月に合格した報告をもらった時は大変喜びました。第22期では問題の傾向もPDF/XとかXMLとかの問題の分量が多くなっていると聞いて,業界のトレンドを押さえた勉強も欠かせないと思っております。

DTPエキスパートを受験して思うこと
現在までの合格者は8人になりました。今のところ,取得者は制作の役職者のみなので,非役職者にもチャレンジを促していきたいと考えています。
DTPエキスパートに取り組んでいる時と現実に戻った時にかい離を感じるのは,いまだに弊社のMacがOS9でIllustrator8,QuarkXPress3.3で動いていることです。
「PAGE2006」でも欲しいなと思うソフトはOS X動作のみなのです。さらにAdobeのCS2環境でアプリ同士の連携が良くなり,新たな提案もなされています。現実を目の当たりにした時にDTPの制作方法が変わっていないことを思い知らされます。Macの数が多いとちゅうちょしてしまいますが,少しずつOS Xを増やすなどして仕事のやり方を変えていかなくてはと思っています。

 

 
JAGAT info 2006年3月号

 
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2006/03/26 00:00:00


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