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よいコミュニケーションの標準化を目指したい

◆佐藤 聖

8年前、大学を卒業後、父の経営する設計事務所に就職。CADを使って図面を書き、役所に確認申請を出しに行く。それが私の仕事でした。世間ではWindowsが流通し始め、パソコンがだれでも手軽に楽しめるそんな時代の幕開けでした。
実際、父の会社でも今まで使っていた製図台を一斉に処分し、IBMのパソコンを導入。手にするものも今までの製図用のロットリングペンからマウスへと変わりました。
CADの導入により、今までは目を凝らしながら書いていた1ミリ以下の線の処理も、パソコン上ではいとも簡単に、拡大、縮小、コピーなどを行うことができ仕事の効率も格段に上がりました。CGも以前より身近なものとなり、お客様によっては完成予想図が見たいなどの注文が出始めたこともあって、3Dソフトを導入。独学で習得しました。
今にして思えば、これがDTPに興味をもち始めたきっかけだったように思います。

その後、本格的にDTPの仕事に関わりたいと思い、父の会社を辞職し、希望を胸に印刷会社へ就職しました。夢にまで見たデザインの仕事に就くことができました。それまではWindowsしか使ったことがありませんでしたが、Macのマウスのボタンが一つしかなくて使いづらかったのを今でも覚えています。しかし、現実はそう甘くはありませんでした。仕事のほうは連日深夜まで続き、体のほうもついに限界にきてしまい、1年ちょっとの勤務で辞職しました。
それから再度住宅設計の仕事に就きましたが、やっぱり自分にはDTPしかないと思い1年半余りで辞職。

印刷に関わる仕事を探す中、「デザイナー・DTPオペレータ」の募集を見つけ、早速面接を受けました。
私は、DTPオペレータを希望していましたが、会社側はDTPが分かる営業が欲しいとのことで、営業をしてみないか?と持ち掛けられました。私は、営業経験は今までなく、正直すごく迷いましたが印刷の仕事に関われればと思い、入社を決意しました。

入社して数日がたち「佐藤君、こんな資格があるんだけど」と資料を渡されました。それがDTPエキスパート認証試験へ向けての始まりでした。渡された資料(カリキュラム)に目をとおし、取りあえず分からない個所には赤線を引き始めると、カリキュラムはあっと言う間に真っ赤になってしまいました。今までデザインにしか関わっていなかったので、印刷方式や刷版、製本、XMLやSQLなどさっぱり分かりませんでした。参考書、問題集を買いそろえ、先輩方よりアドバイスを頂き、ようやく試験に合格することができました。

営業を続けてちょうど1年になります。印刷物を受注し、デザインを制作者に伝え、工程を管理し、そして納品をする。営業の仕事は多岐にわたります。以前デザインをしていた時、自分は指示を受ける側でしたが、営業になり指示を与える側に代わり、人に意図を伝えることの難しさを実感しました。
資格を取得して特に変化したことはありませんが、DTPエキスパートカリキュラムの表紙にもある「よいコミュニケーション」の大切さを以前にも増して感じています。
 1.受注時のお客様とのコミュニケーションはきちんと取れているか?
 2.受注した情報を正確に制作側へ伝えているか?
 3.印刷側へ正確に伝えたか?
この辺りの標準化こそDTPエキスパートの使命であると私は考えています。
2年前より福島県の裏磐梯で、ボランティアの自然案内人をしています。県外から来たお客様に散策路を案内します。ちょっとした日常の会話からガイドは始まり、コースを楽しんで帰ってもらいます。今にして思えば、この経験があったので営業にスムーズに入っていけたような気がします。

「よいコミュニケーション」は、いろいろなものが電子化され、人対人のコミュニケーションが減る現在にこそ、その重要性は増すのではないでしょうか?

 

月刊プリンターズサークル連載 「DTPエキスパート仕事の現場」2006年5月号


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2006/05/01 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会