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デジタルワールドの5年間の変化 その2

JAGAT技術フォーラム座長
和久井孝太郎

デジタルワールドの5年間の変化をふりかえる (1) より続く

2.4 インターネット基盤を支え続ける「ムーアの法則」

デジタルワールドの仕組みの進化を語る上で忘れてならないのは、急速な高性能化と低コスト化の同時進行に関して、トップを走り続けているIntelの共同設立者の一人であるゴードン E. ムーアの「ムーアの法則」が40周年を迎えたことである。
「ムーアの法則」については、(文献1)でも取り上げて超高速計算のコストとスペースが限りなくゼロに近づくと論評した。もとのムーアの法則は、半導体チップに集積されるトランジスタの数は約2年ごとに倍増するというものであった。
現実にも、1975年当時のマイクロプロセッサ8080のトランジスタ数は、約1万であったものが30年後の今日では10億を突破している。

私たちが直接関係するパソコンのコストパフォーマンスはどうだろうか、直近の5年間の変化を見てみよう。(文献1)で紹介したノート型PCでCPUの動作周波数400MHz、主記憶装置64MB、ハードディスク記憶装置6GB、CD-R/DVD-ROMドライブ内臓、Windows OSインストールもので価格は22万円程度であった。
それが5年後、昨今のネット販売のDELL PCでは、14.1インチWXGAディスプレイ ノート型PCでCPUの動作周波数1.5GHz、主記憶装置512MB、ハードディスク記憶装置100GB、DVD+/-RWドライブ内臓、Windows XP OSインストールもので価格は89,980円となった。
現在では、PCのマルチメディア活用時代になって、以前のように計算速度の比較だけでコストパホーマンスの比較はできないが、筆者の感覚的な数字として今でも10年で40倍(5年で6倍強)の進歩としておきたい。このことは携帯電話などでも当てはまる。

2.5 日本のインターネットその他のトピックス

このようなテーマこそ、インターネットの検索エンジンの独壇場であるが、次章の『クロスメディア』に話をつなぐために幾つかの過去5年間のトピックスを紹介しておきたい。

2.5.1 ブロードバンド元年(2001年)
この年はPCの新OS、Windows XPとMac OS Xが発売された。そして何よりも、わが国の情報通信ネットとしてのインターネット特性に激変が起きた。
2000年末にNTTのフレッツADSLサービスがスタートしたが、2001年6月に開始されたYahoo!BBのADSLサービスを契機にプロバイダーの料金破壊が一挙に進み、さらにはNTTが回線を開放したことで、わが国のブロードバンド利用者が急増した。  詳細‥

2.5.2 日本のインターネット企業
2000年1月、海の向こうでは米国の代表的なインターネット企業であるアメリカン・オンライン(AOL)と米国のリアルワールドにおける著名なメディア企業のタイムワーナーの合併が発表された。
今日2000年を振り返れば、なんといっても世界的なITバブル崩壊の年であった。そして、ネットベンチャー企業の多くが淘汰された。しかし、生き残った企業の多くは新たな創造力によって第2の発展期へと入っている。  詳細‥

2.5.3 飛躍し続けるデジタル携帯電話
NTTドコモのデジタル携帯電話(デジタル・ムーバN)がお目見えしたのが1993年であった。いわゆる、第2世代の携帯電話(使用電波2GHz帯、通信方式PDC)の登場である。その後、2000年10月以降は全ての携帯電話がデジタル方式となった。
2001年には電波の有効利用、通信品質のさらなる向上、国際ローミング(サービス持ち歩き)などを目的として、周波数帯3GHzを使う第3世代の携帯電話をNTTドコモの通信方式,W-CDMA(FOMA)、さらに2002年にはボーダフォン(最初の名前はJ−フォン)が通信方式W-CDMA、KDDIが通信方式CDMA2000でサービスを開始した。  詳細‥

2.5.4 ブログの普及
インターネットの普及と共に、自分のホームページを作って情報発信する人たちも増える傾向にあった。しかし、ホームページを制作するにはPCの一般的な操作とは別にHTML言語を使いこなすことが必要だった。
これに対して、従来のホームページと同様な効果を持ちながら、ページの制作が日頃のPC操作の感覚で簡単にできて、ホームページに勝る便利な双方向機能を持つブログが登場して事情が一変した。 詳細‥

2.5.5 ウィキペディア(Wikipedia
インターネット上で皆が協力して進化させることができる、従ってワールドワイドで広い意味での双方向性を持つ、無料巨大百科事典の名称である。米国で2003年ジミー・ウェールズによって設立された、非営利のウィキメディア財団によってウィキペディアなどのプロジェクトが運営されている。

ホームページ上で発表されている同財団の目的は、ウィキ(ソフトウエアの一種)を用いたオープンなコンテンツの知的資源を開発するプロジェクトの推進と得られた資源を無料・広告なしで広く公衆に提供することである。多言語百科事典ウィキペディアの運営に加えて多言語辞書兼シソーラスであるウィクショナリー、警句箴言集のウィキクォート、主に学生向けの電子書籍であるウィキブックスのサポートである。

ウィキペディアが、文化の遺伝子の一種である膨大で多様で日々に変動するキーワードの意味内容を、不特定多数の知恵を合わせて淘汰する。人類の知恵の向上に、大きく貢献するプロジェクトの一つとして筆者は高く評価したい。

2.5.6 インターネット放送
かつて1961年に大阪有線放送として誕生した有線音楽放送や通信カラオケなどのメディア企業が、2002年には第一種通信事業者免許を取得した。さらに2005年に入ってUSENと社名を変更、ネット上の民放ともいえる広告付き無料のインターネット放送GayOのサービスを開始した。

そのUSENが今年、財団法人デジタルメディア協会(AMD)の第11回AMDアワードで大賞/総務大臣賞を受賞した。受賞理由は、「ネットとTVの融合に揺れた年の最も壮大な実践として讃える」である。さらに、受賞者プロフィールには「株式会社USEN、1964年設立、社員数5708人、業界最大手である放送事業のほか、カラオケ事業、ブロードバンド事業、コンテンツ事業、店舗事業を展開」と紹介されていた。

2.5.7 変わり始めた広告地図
2006年2月、大手広告代理店の電通が2005年の日本の広告費を発表した。これによると、総広告費は5兆9,625億円で前年比101.8%となり、6兆円の大台に手の届くところまで来た。インターネット関連の広告費の大幅増加が伸びに貢献した結果である。

メディア別に見ると、構成比の高い「テレビ」が前年比0.1%の減で3年ぶりに前年実績を下回った。「新聞」も1.7%減で、「雑誌」「ラジオ」を含めたリアルワールドの主要4マスメディア合計も0.7%減となった。

販売促進(SP)広告費の分類に含まれるDMは+3.1%、折り込み広告が+0.7%、交通広告が+2.0%、POPが+2.1%。この分野で伸び率が最も高かったのは、展示・映像関連で+6.2%、最も落ち込んだのは電話帳広告であった。

インターネット広告費は、2,808億円で前年比+54%で全ての広告費の中で最も高い伸び率を示した。続いて伸びが高かったのは、衛星メディア関連広告費で487億円+11.7%であった。

2005年日本の広告費 6兆円

この項続く デジタルワールドの5年間の変化 その3

デジタルワールドの5年間の変化 (4)
デジタルワールドの5年間の変化 (5)
デジタルワールドの5年間の変化 (6)

2006/05/29 00:00:00


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