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オープンソースのCMSの実力

Webサイトを構築する上で、コンテンツだけを用意してサイトを簡単に立ち上げるケースに、WebCMSを利用する方法がある。さらに低価格で立ち上げるにはオープンソースのCMSを利用することができる。CMSには、HTMLのようなタグを書かなくても簡単にWebを立ち上げることができる環境が整っており、ブログもそうであるが、ちょっとしたポータルサイトを立ち上げる際に、しかも時間とお金を掛けたくない用途には、オープンソースのようなCMSを利用できる環境が整ってきている。

XOOPS

XOOPSというのは、PHP-NukeやPHPというプログラミング言語を利用して似たようなWebサイトを構築するツールがいくつかあったが、そのようなものから枝分かれてしてきて生まれた。そしてXOOPSから枝分かれしてXOOPS Cubeが生まれた。
XOOPS Cubeコアという部分がXOOPSコアになり、ダウンロードしてすぐにサイトの構築に利用できる。XOOPSコアをインストールする環境は、Apache、PHP、MySQLが必要で、XOOPSのためのサーバ環境である。

通常レンタルサーバというようなサービス名称のものには、大抵、Apache、MySQL、PHPがセットになってインストールされているものが多い。手っ取り早くサイト構築する時にXOOPSを薦めるのは、このサーバの組み合わせのためである。Apache、MySQL、PHPというサーバ環境なら簡単に用意できるというのが、XOOPSの優位性の一つとして挙げられる。
XOOPS利用の基本は個人レベルのコミュニティサイトである。個人が自分の趣味で自分のサイトを作る。コミュニティサイトなので、例えば趣味のサークルのためのサイトや学校の同窓会など、もともとは個人のコミュニティサイトのための機能が多い。

ただ、オープンソースということで、だれでもただでダウンロードして使えることから、企業の中でグループウエアとして使っている会社もある。あとは普通の企業ポータルで、インターネット上に公開して顧客に見せるようなWebサイトにXOOPSを使っている例もある。

Plone

PloneもオープンソースのCMSで、無料で配布されており、オープンソースの中でも人気のあるソフトウエアの一つである。人気の理由は機能が多いことで、日本でも普及し始めているが、欧米ではかなり普及して実績もある。また、標準技術が使われており、アクセシビリティなど、目の不自由な人にも対応している。
使用技術も、ZopeやPythonなど、奇麗なアーキテクチャーの設計になっているので、非常に開発のベースとして使いやすい。

一番下にPythonというスクリプト言語があり、PythonでZopeというWebアプリケーションサーバが書かれており、ダイナミックWebサイト、動的なWebサイトのベースになっている。そのZopeの上にCMF、コンテンツ管理用のフレームワークを載せて、それを使っているのがPloneになる。

CMSの利用の目的は

昔は、コンテンツとデザインとロジックが混在し、非常に開発やメンテナンスの効率が悪かった。今でもHTMLで静的サイトを作る場合はコンテンツとデザインが混ざり、メンテナンスしにくい。CGIも、ロジックとデザインが混在しメンテナンスがしにくい。
これに対してWebアプリケーションサーバが出てきて、動的なWebサイトを作れるようになった。HTMLではなく、プログラムにより動的にHTMLを作る環境がWebアプリケーションサーバである。しかし、Webアプリケーションサーバは技術者向けで、普通の人が使うには難しい。

CMSの出現により、基本的にはコンテンツを作成するだけでWebサイトができる。身近なものでは、ブログ、Wiki、また昔からの掲示板などがある。これらはコンテンツ管理システムの機能を非常に絞ったものである。
CMSはベースにロジックが必ず入り、Webアプリケーションサーバやフレームワークとの依存関係になる。CMSを使えば、デザインは不要とか、組み込まれたまま使うとか、最初だけテンプレートを入れてWebサイトができる仕組みになった。

CMSが出てきたことで、コンテンツとデザインとロジックが、分かれるようになり、データはデータベースに入るか、あるいはXMLになり、デザインはテンプレートに書かれる。このように分離されてきたことで、関わる人の役割も、コンテンツを書く人と、デザイナーとエンジニアの仕事の分離が進んでいる。
CMSは、そのまま使えれば簡単である。ロゴや色を変えるだけで、あまりデザインを変更しない利用では、普通のWebサイトやメンバー制のポータル、イントラネットポータルはすぐできる。
カスタマイズが多い場合は、難しくなる。

Ploneは公開デザインと裏のデザインを分ける場合、高度な技術が必要で難しいため、デフォルトで使っている人が大半である。
しかし、高度なことを行う場合は、どの技術でも難しい。難しさではなく、やりたい時に実現可能かが重要で、商用製品などではできないことがあり、Plone環境のZope、PythonとかXOOPSではPHPなどを利用すれば、ほぼできる。予算やスケジュールの都合はあるが、技術的には可能でそれが重要である。
気軽にサイトを立ち上げる場合、お金を使えないので、コスト競争力は、重要である。最悪なのは、安くやるベンダーに下手に頼むと、最初安くてもその後コストが掛かる場合がある。コストが安いだけではだめで、優れた技術でなければだめである。 (クロスメディア研究会)

出典:社団法人 日本印刷技術協会 機関誌 JAGAT info 2006年6月号

2006/06/11 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会