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てんやにみる顧客をつかむプロモーション その1

優良顧客をつなぎ止めるメールプロモーション

テンコーポレーションは、関東圏で約120店舗の天丼、天ぷらのフード店「天丼てんや」「天ぷらてんや」を展開している。「外食業は人間業」というスローガンを掲げ、単価500円の天丼を中心に、うどんやテイクアウトのお弁当を販売し、1日に約4万5000人が来店する。
「天丼てんや」では優良顧客を囲い込むため、てんや倶楽部という会員組織へのメールプロモーションを行っている。
てんや倶楽部は2001年6月に発足し、既存の来店客を中心としたメール会員組織だ。入会金、年会費などは無料で、メンバーズカードの掲示で50円引きの優待が受けられる。そのほかに会員限定のお得な情報、プレゼント情報が届き、懸賞やモニター活動への参加権もある。
発足以前は、折り込みチラシと店舗にあるアンケートはがきで顧客とのコミュニケーションを続けてきた。
しかし、費用対効果の薄さと、郵送による顧客とのコミュニケーションはタイムリー性や双方向性の欠如といったいくつかの課題があった。そのため顧客自らの意思で登録してもらい、パーミッションを得た会員を組織化し、メールを配信していくことにした。 こうした中、日本コンサルタントグループの「ふーぷ」というASPシステムと出合い、てんや倶楽部の運営が始まった。発足から2年目には月々総会員の28.3%に値するレスポンス(レジでの優待利用のカウント)を得て、コストはチラシを取り込んでいた時の10分の1である1レスポンス当たり25円まで下げることができた。現在では総会員数の37.6%のレスポンス率で、コストはさらに下がり、13.6円である。始めた当初の会員数は約1万700人だったが、現在では7万人に近づく勢いである。
会員確保は、店舗で常時配布している会員募集カードやリーフレット、フライヤーといった印刷物にホームページのURLを掲載したり、QRコードでモバイルからホームページへ誘引している。
しかし、それだけでは売り上げにはつながらないので、店頭の印刷物からWebへ、Webからメール、メールから来店へという道筋を作り、来店して初めてメンバーズカードが手渡されるという仕組みを作っている。
発足当初はパソコンのメール自体をプリントアウトしたものや、モバイルの画面をクーポン代わりにしていたが、2004年4月からメンバーズカードを導入して、カード提示での優待へと切り替えた。インターネットとメールのみでサービスを提供すると、外出時に携帯するのを忘れてしまい、利用されないことがある。そのためもう一度印刷物に戻り、常に「てんや」の存在が目に入るカードを作り財布の中に携帯してもらえるようにした。メンバーズカードを導入してから、入会数、使用頻度も増え、レスポンスがアップした。

顧客参加型メールを配信する

メール会員には、パソコンと、モバイル両方の入り口を設け、それぞれの特性に合わせた情報提供をしている。
例えばモバイルメール配信では、毎月の優待情報の案内、クイズやプレゼント、ワンクリックアンケートを絡めた送受信を行っている。
単純な情報配信ではなく、顧客から返信や回答を得ることでコミュニケーションを取っている。目的は常に、いかにして「てんや」を想起してもらうかである。大量のメールが届く中で、いかに開封してもらい、インパクトを与えて来店につなげるためには、読むだけ、受信させるだけではなく、返信や回答してもらうことが非常に有効である。例えば、答えを求めに来店してもらう、または店のホームページを見てもらうといった、顧客に積極的に参加してもらえるような内容のものである。3択、4択といった簡単なワンクリックアンケートを実施していても、顧客のほうからびっしりと意見を書き添えてくれるということも数多くある。
パソコンのメールは、毎月1日に全会員に向けて配信し、当月の優待内容の案内のほかは定期配信していない。入会時に登録してもらった性別、年代別、地域別、店舗別といったセグメントの組み合わせで配信できる。
コストを考えると、内容やデザインの変更が難しいフライヤー類も、メールならば利便性が良い。雨や雪といったその日の天候に合わせたメール、ランチやディナーといった時間帯に、主婦をターゲットにして配信するといった選択も簡単にできる。
これまでの1日の最大レスポンス数は約2000名で、これは「てんや」5店舗相当の来客数に値している。しかし優待を伴っているため、乱発すると原価の圧迫や単価の低下につながってしまう。そうした事態を避けるために、メールの配信ターゲットを選択したり、時間帯をきめ細かくコントロールして一定のレスポンスを保つようにしている。
そして一方的なプロモーションにならないために、会員がメルマガで得た情報と同じものを、従業員も共有するような工夫をしている。メールで配信した内容を、ポケット豆知識という販売用のあんちょこにして、全店舗スタッフに配布している。来店した会員は、メルマガで送られてきた情報を、従業員とコミュニケーションをしながら再確認・共有できる。
大量メールという一方的なプロモーションではなく、さらなる販促、CSアップにつながるように店側と顧客の良好な関係を築いている。こうした単純で当たり前に行われている多角的な情報提供は、顧客にはっきりした来店目的を抱かせるのだ。
またこのプロモーションは、従業員のES(Employee Satisfaction)アップにも一役買っている。
同社では、社長が店舗のスタッフをたたえる直筆のファックス表彰というものがある。表彰されるための元ネタも会員からメールで募集することによって得ている。店舗に置いてあるはがきでは、どうしてもクレームや要望が中心になってしまうが、メールであれば、「お褒めをください」という情報収集も可能であり、とても役立っている。

その1 | その2

『プリンターズサークル6月号』より

2006/06/12 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会