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印刷会社は顧客に直接対面できる立場にあるという意味では大変有利である。そのコネクションをうまく生かして顧客の要望を組み取ることができれば、新たなビジネスを生み出すことが可能である。
普及が進むにつれ、デジタルブックは単なる紙媒体のデジタル化から1歩進んだ利用がなされるようになった。クロスメディア研究会では、データベースと連結し、横断検索型全文検索機能を付加したデジタルブックを提供することでユーザーの利便性を向上、成果を挙げた事例としてイングカワモトの内田氏に話を伺った。
日経進学ナビは、日経新聞の系列のディスコが運営している学生向けポータルサイトである。ディスコでは、資料請求などの紙媒体を削減したいという要望を持っており、デジタルで受験生に志望校を分かりやすく検索させるツールを求めていた。そこで2007年よりイングカワモトのデジタルブック「Smartパンフ」を採用しWebサイト上に掲載している。
「Smartパンフ」の一番の特徴は全文検索機能である。普通のデジタルブックは、1ファイル内の文字検索はできるが、何百冊ものコンテンツをまたいで検索することはできていない。そこで、Googleブックサーチで行っているような検索機能をデジタルブックで実現しようと試行錯誤の末に実現した。
ここでは年間約800冊ある全国の入学案内パンフレットを横連結でつないで検索可能にしている。
800冊と言うと約10万ページあり、中に埋め込まれているキーワードは約2億にも上る。
さらにデジタルブック制作において特徴的なのは、印刷データファイルからではなく、紙ベースのパンフレットをスキャンしてデジタル化している点である。紙媒体で発行された大学案内をドキュメントスキャナで読み込んで自動的にXML情報とxyの座標軸を持たせた位置情報を付加し、データベース化している。XML化された文字情報は検索に使われるほか、インデックスが自動生成される。
多数のパンフレットを迅速・正確にデジタルブック化するために独自に高精度OCRを開発した。さらにキーワード抽出についてもGoogle検索アプライアンスへ連結する機能(オリジナル開発)を持たせた。
日経進学ナビでは「Smartパンフ」の導入によってユーザーの利用度が向上し、大幅にアクセス数が増加した。学校によっては資料請求数が前年の3倍近く増加したところもあるという。
単に印刷用データ、印刷済みコンテンツをWeb化する以外にもデジタルブックの可能性は広がっている。
例えば、昨年展示会に出展した時にデジタルブックを利用したコールセンターの問い合わせ業務ソリューションの紹介したところ、社内文書をデジタルブックで横断検索して管理するシステムとして利用できないかという提案がクライアント側からあり、実際に開発して製品化している。
特に、不況でクライアント側の予算が減少する中、今まで大手企業でないとできなかったような案件でも、ずっと低額で中小規模の企業が受注することが可能になっている。そのような面では今がチャンスの時である。
印刷会社は顧客に直接対面できる立場にあるという意味では大変有利である。そのコネクションをうまく生かして顧客の要望を組み取ることができれば、新たなビジネスを生み出すことが可能である。
(『JAGAT info』2009年6月号より)