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受注単価をキープするには「他所で出来ない品質/技術」の実践に尽きる。
4大マスメディア(TV、ラジオ、新聞、雑誌)の凋落傾向に北米に端を発した金融不安が印刷業界に暗い影を落としている。各社売り上げダウンをどう食い止めるか?ダウン分を何で補うか??に苦心惨憺されていることと思う。
しかし、組版関係のソリューションとして注目されている「Web to Print」「自動組版」等は、よくよく考えてみれば「コストダウン」の道具であり、その分、より多くの仕事を受注して売り上げダウン分を補おうというものであり、自動組版にしたから単価をキープできるものではない(むしろ対極)。そう考えていくと食い止めるための解(答え)は随分限られてしまうことになる。
その少ない解の中でまず最初に挙げられるのが広色域印刷であり、少しでも受注単価を食い止めるためには有力なツールとなる。今まではただ派手な色が出ていれば良いというものだったが、家庭用のテレビ品質が良くなり、ノートパソコンにもAdobe RGB相当のディスプレイが使われる昨今、ユーザー側の認識も大きく異なってきたといえる。
話は変わるが、一つの例として挙げておく。熟練者がよく言う「昔の仕事は丁寧だった」ということを真に受けて、昔の品質に近づけようとなど絶対に思わない方が無難である。おそらく10年位前のデータを見たら愕然とされるはずだ。やっぱり品質は確実に進歩しており、デジカメ時代の品質は銀塩時代と比べたら二ランクくらい上の品質である。つまり一般人の目も昔よりは確実に進歩しており、広色域印刷を受け入れる環境は確実に広がっているといえるのだ。
話は戻るが、受注単価をキープするには「他所で出来ない品質/技術」の実践に尽きるのである。JAGATでは12月17日広色域印刷を一同に集めたテックセミナー「広色域印刷2008<実用段階への進化> 」を開催する。売り上げキープの一助にお役立ていただきたい。
メタメリズムとは日本語で条件等色といい、環境(条件)に寄っては異なる色が同じ色に見えてしまうことをいう。例えば赤い光の下では赤い色と白が同じ色に見えてしまうが、これも条件等色である。印刷インキはCMYKで条件等色をわざと利用して色再現しているとも考えられ、光源が異なればまったく異なって見えやすいデバイスなのである。
JAGATでは医療との共同研究の一環として「胆道閉鎖症チェックシート」を作成する作業を手伝っている。赤ちゃんの便の色をチェックするのだが、正確な色にするために分光レタッチという技法を駆使している。RGBのバランスだけで色をレタッチするのではなく、分光スペクトル曲線自体を近似させて色を再現すれば、光源が変わろうが色変化は少なくなる。医療やそれに準じた正確な色再現品質が求められる場合には必須の技術なのである。
CMYK印刷でチェックシートを印刷しているのだが、光源によって色が動くというメタメリズムの問題が問題になっており、多色印刷による広色域印刷が望まれている。経験上も実感していることだが、多色印刷だとメタメリズムの影響は受け難いのだ。色数(いろかず)分の分版が分光的な位置づけになっていると考えていただければよい。
同じように紙質による色変動も小さくなる。筆者の経験では和紙に印刷したりする場合、多色の方が色は安定している。トラッピング的には逆に思うかもしれないが、こんな印刷も「他所では出来ない」の一つであろう。
ところが実際の印刷現場では「インキジェットタイプの色校正システムが、印刷のようなメタメリズムが出難い」と問題になっているようで、印刷インキに近づけるべきだという動きがあるようだ。しかし、クライアントの立場で言えば、印刷のメタメリズムは大問題なのだ。医療現場で蛍光灯の種類が異なるくらいで色がシフトしているようではチャートとして使えない。つまりそんなことならインキジェットの方が良いということになってしまうわけである。インキジェット方式の印刷機が一般化すればこれも有りだが、現在のところは多色印刷やカラマネ技術を使って管理するしかないわけである。つまりノウハウがポイントになってくるということだ。
12月17日のテックセミナー「広色域印刷2008<実用段階への進化> 」はこの辺について一日で理解できるように凝縮した内容になっている。広色域印刷で売り上げダウンを補おうと考えている方は是非受講していただきたい。
2008年12月17日(水)
「広色域印刷2008 <実用段階への進化> 」
各社の広色域印刷ソリューションの仕組みや特徴・事例を発表いただき、印刷の付加価値向上の可能性について考察する。