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ネットワークによる分散環境の中で、バリアブル印刷のビジネスを効率化してきたアメリカのレポート。
JAGATトピック技術セミナー2008 (2008年12月11日開催)では「次drupaにはデジタル印刷はどうなる?」という特別セッションを行った。drupa2008では従来なら当然オフセットで印刷すると考えられていたものも直接コストや維持費などを度外視すればデジタル印刷でもできるデモがされた。次のdrupaではいったいデジタル印刷はどこまで進むのであろうか? またどう使われるようになるのだろうか? それを考えるために、日本でデジタル印刷に関わってこられた方々のお話をお聞きした。その中で日本印刷産業連合会のデジタルプレス研究委員会のワーキンググループ座長の共同印刷株式会社eビジネス推進本部部長下垣弘行氏は、同委員会の調査として11月9日から1週間アメリカのシカゴを中心に行った印象や個人的な感想を話された。以下はそのアウトラインである。
デジタル印刷というと、バリアブル印刷あるいはショートランの印刷というイメージが多いが、アメリカではショートランという話はほとんど出ず、デジタル印刷=バリアブル印刷という状況であった。また、デジタル印刷はオフセット印刷とのコスト比較はアメリカでも5年ほど前は話もあったようだが、デジタル印刷はオフセットの置き換えではなく、むしろハイブリッド印刷とか、共存ととらえられていた。例えばあるCATVの番組表はもともと全部オフセット印刷でページも固定だったが、中身の番組表はオフセット印刷のまま、表紙は配る人によって変えて部数を増やした話があった。この番組表はCATVのユーザーを取り込むためと、一度入った人が離れないようにするためのもので、その効果がかなりあったようだ。「こういう形で生産量はアップするものだ、オフセット印刷と共存するものだ」というのを何社か同じように言われたという。
バリアブル印刷のダイレクトメールがモノクロからカラーになったり、テキスト表現が画像へということが増えている。アメリカは日本では想像しがたいくらいダイレクトメールはたくさんあるので、配った先でいかに特徴を出すかということが差別化につながり、バリアブル印刷や後加工がキーになっている。バリアブル印刷とWebの連動ということで、ユーザーによって変えるパーソナルURLをダイレクトメールの中に印刷している。デジタル印刷も画質的にそう変わらなくなったので、バリアブルに加えて後加工が重要になっている。
デジタル印刷のためのスキルについての感想として、まずITスキルと印刷スキルは異なることがどこの会社でも言われていて、日本の場合は印刷をやっている人にITスキルを求めることもあるが、それははっきり違い、職として変えるというのが印象的であったという。バリアブル印刷をする場合にはほとんどのところがシステムハウスと連携していた。パーソナルURLも、Webに関しては印刷会社がやるのではなく、システム会社がしている形が多かった。また、日本と少し違うと思ったのは、デジタル印刷機のメーカーがかなりユーザーの教育をしていて、ベンダー側にそれぞれ専門の教育係のような人がいてサポートしていたという。
バリアブル印刷の中心マーケットはアメリカでは「ハブ型ネットワーク組織」という言葉が出てきた。アメリカは土地が広大なので、フランチャイズとか、支店がたくさんあって、さらに代理店がある。その代理店がそれぞれチラシを作ったりしているが、それを一括して受けられるようなものにするといいという。それをすると最終的にはバリアブルの大量の印刷になるし、ハブ型のようなものをやろうとすると、閉じられたネットワークではなく、インターネットのようなオープンネットワークにうまく対応できるようなシステムがないと難しいという印象をもたれた。
アメリカでもITスキルと印刷スキルは違うという話だが、バリアブル印刷のデータベース構築まわりの専門家が印刷の側にも大体1人いたが、日本の場合はそれも難く、スキルレスなシステムでもっと簡単にデータベースが構築できる方法が必要かもしれない。ITのスキルとはちょっと違うが、顧客の懐に入って仕事をする、あるいは吸収するというスキルが必須で、それと従来の印刷を絡めるとうまくビジネスができるのではないかというプレゼンテーションをされた。