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本質的な問題解決を着実に積み重ねることと、パートナー企業とのコラボレーションが、今更ながら重要である。PAGE特別連載 その4
この連載の前回の記事「災い転じて福となす ゼロリセットでスタート 」では、従来の膠着状態が崩れるところにチャンスがあるという旨を書いたが、チャンスを活かして自分が一歩進む前に、自分の身が持たないことがないように頑張らなければならない。今回の「災い」の度合いはメディアビジネスにとっては大変に深刻なもので、某首相は「100年に一度」と言ったが、100年前がない業界にとっては史上初、史上最大の危機である。大体今は100年前とは比較が出来ない社会になっているので、「100年に一度」は何も言っていないのと同じである。
まだリーマンブラザースの破綻の前の2008年8月に、トヨタがマスメディア広告を3割削減するという発表をして、その後の電通の売上発表にも如実にクライアントのマスメディア離れが反映するようになった。直近では2009年1月13日に電通の12月度単体売上高が発表されたのを見ると、全体で前年比87.3%であった。11月は86.2%であったことを考えると、年末のかきいれ時に復活を果たすことはできなかった。内訳は新聞82.2%、雑誌84%、テレビ90.2%と、11月が極端に新聞の落ち込みが目立ったのと比べると、均ならされた値に落ち着いている。しかし意外なことにインターネットを含むインタラクティブメディアが以前は100%以上で伸びがずっとあったのが、97.7%と前年を下回っている。
アメリカのAmazonのクリスマス商戦は過去最高というし、世の中全体ではネット広告がダウンすることはありえないので、電通の推計がマスメディアクライアント寄りになっているのではないかと思わせる。しかもクリエーティブとかマーケティングという電通の独自の力のあるところも80%台になっていて、クライアント企業や広告の質も変わってきていることがわかる。なにしろ前年比100%に達するものがないのは前代未聞ではないだろうか。
日本のマスメディアがあおって不況を作り出しているのではないかという説もあるが、アメリカでも自動車のビッグ3だけでなく、ハリウッド映画、ブロードウェイミュージカルなどなどにもマイナスの異変が起きていて、新聞社トリビューンの会社更生法のように既存大スポンサー依存のメディアビジネスはヤバくなっている。マスメディア自身とマスメディアに依存したビジネスの両方に何か時代に合わない点が出てきているという論調が多い。マスプロダクツの販売にはマスメディアは効率の良い方法だが、社会の成熟とともにマスプロダクツが売り難しくなっているという構造的な問題がある。
今期決算では赤字が予測されるメディア企業は多いが、構造的な問題は景気とは別で、不景気が構造上の問題の呈露を前倒しにしただけであるから、本来なら経営・ビジネスモデルにメスを入れなければ乗り切れない。つまり慣れ親しんだビジネスのやり方を自分で壊して、新鮮な眼で自分のビジネスの足元を見つめて作り変える知恵とエネルギーがないと、このメディアの史上最大の危機は乗り切れないだろう。経験や人材という点ではマスメディアはネットメディアの比ではないものがあるが、マスメディアは多くの高給取りを抱えた巨大メディアとなって身動きが遅く、かえって臨機応変に動き回れるところの方が突破口を先につかむことができるだろう。
実は2000年以降のIT化の進展の過程で、突破口のヒントはすでに相当ある。しかしそれらは個別企業の些細な改善として見過ごされていることが多い。PAGE2009 では、2~3年先をターゲットに活動を始めている方々に4トラックのコンファレンス に登場してもらって、それぞれの試みや試案を発表していただく。また以前からPAGEコンファレンスを契機に発表者や参加者同士の話し合いが始まり、その関係が発展して業務のパートナーシップが築かれたりしている。A0セッション ビジネスを推進するメディア戦略・戦術 では、印刷物を作ってビジネスをしている発注企業の側でどのような革新・進展が起こっているのかを採りあげる。大きなERPシステムが現状の困難を救うのではなく、仕事の現場の問題解決を着実に積み重ねることと、パートナー企業とのコラボレーションが、今更ながら重要であることがわかる。発注側と受注側の両者が共に参加してもらえれば、今「出来ることからする」という第一歩を印すことができるだろう。