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正しく色を評価してビジネス展開を

掲載日: 2012年12月17日

標準印刷や校正紙を正しく評価するには、色のスキルと知識が必要になる。色や光源(LED)のスキル、知識を新しいビジネス展開に活かしてみたい。

物を正しく見るためには

対象物(色)の見え方は、観察者や対象物が置かれている環境や照明、発光している光源の特性によって大きく変わることは周知のとおりである。そこで色を正しく判断するには、この観察環境や条件の標準化が必要となる。校正刷りなど印刷物を正しく評価するためには、標準光源や色見台などの設備が必要となる。
こうした色を正しく評価、判断できる主な環境項目として、以下のものが挙げられる。

1. 周囲の色  2. 照明光の特性(分光エネルギー分布)  3. 照度  4. 対象物の反射光(自発光、うつり込み)

対象物の周囲の状況、場所では、その色によっては眼に対して対比、同化、順応などの現象が起きてしまい、正しく色を見ることができない。色を正しく評価、判断するには、周囲光は無彩色であることが望ましい。
画像を扱うPCのデスクトップの壁紙をグレーにしたり、色見台自体のハウジングも無彩色が使われていることでわかる。

照明光では、限り無く白色光であることと同時に高演色性(演色評価数)の光源が求められる。標準光源の色味は、太陽光(白色光)のように分光分布特性においてエネルギーの過不足なく、すべてのスペクトルを含んでフラットであれば色再現性(演色性)も良いのだが、現状ではそのようなLED光源は見当たらない。

実際の光源と基準となる光源を観察し、色の差を表しているのがこの演色評価数で、その光源の良し悪しを示し、その差をRa(平均演色評価数)で表す。
理想のRaは限り無く100であり、印刷物を評価する環境では、高演色性でRa99などの蛍光灯(演色昼白色 色温度5000K)が使われていたりする。
照明光の分光特性が異なると、同じ印刷物でも色の見えが変わってしまい、自発光のモニタでも色の見え方が変わる。

LEDの普及

LED光源は、今時Xmasのイルミネーションをはじめ、いたる所で見かける。一般用の照明光源や携帯、デジタルカメラ、道路標識、交通信号灯など幅広く使われている。情報メディアでは、PC、スマートフォンをはじめに各種タブレット、屋外のデジタルサイネージなどでも使われている。

LEDは省エネ、長寿命、小型化など従来の照明光源と比べると数多くの長所がある。いいことずくめのLEDではあるが、色を評価するための標準光源としてはまだ課題がある。
青色LEDが最後に開発されたことで白色光のLEDを作成することが可能になった。例えば一般的な照明光源では白色LEDに蛍光体(黄色蛍光体、あるいは赤・緑蛍光体)を通して発色するものがある。

これらの方式では分光特性が、緑や赤の光の成分で不足してしまう。赤・緑蛍光体を使用したりRGBの3色LEDの混光で白色を作成するなどして改良しているものもある。正しい色再現を必要とする上での標準光源としては、多くのLEDで分光特性にいろいろな特性があり、十分な高演色性が得られなかったり、高価であったり、品質の安定性、バラツキなどで課題がある。

今後LED光源が普及することは間違いのないところである。LED光源の演色性はこのように独特であり、このように色や光源(LED)知識を活用できるかが新しいビジネス拡大に活用できるのではないだろうか。

カラマネの知識を活かす

こうした光源(強いては今まで経験してきたカラーマネジメント)の知識は、印刷物を客観的に評価する上では必要最低限の知識である。そのように期待したいところではあるが、少なくとも他のメディアを扱う業種、業界よりその認識は一歩進んでいる。

印刷物だけに留まらずクロスメディア領域への展開を考えるのであれば、色に対する知識や品質に対する責任は大きな武器となる。印刷物に限らずいろいろなメディアにおいて色をプロデュースする機会は増えることは間違いない。

こうした光源や色に対するスキル、評価する技術は、新しいメディアの領域への展開でも大きなアドバンテージとなるに違いない。

(JAGAT 研究調査部 福原 節寿)

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