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近い将来、一般消費財分野のサプライチェーンに導入される次世代バーコード「GS1データバー」とは何か。
■広く普及したJANコード
JAN(Japanese Article Number)コードは国内で広く普及したバーコードの規格であり、共通商品コードとして流通情報システムの重要なアイテムとなっている。あらゆる商品に印刷されており、POSシステムや受発注システム、棚卸、在庫管理などに利用されている。さらに、公共料金等の支払システムでも利用されている。
国際的には、ヨーロッパのEANコード(European Article Number)、アメリカ、カナダで使用されているUPCコード(Universal Product Code)とも互換性のある共通商品コードである。
JANコードは、事業者コード(JAN企業コード)、商品アイテムコード、チェックデジットコードで構成されている。商品アイテムコードとは商品を識別できる最小単位(その商品そのもの)として、事業者が設定したものである。
■次世代バーコード規格
食品や日用品などの一般消費財では、トレーサビリティ(生産段階から最終消費段階あるいは廃棄段階まで追跡を追跡すること)や品質に対する意識が高くなっている。また製造メーカーや流通業者では、効率的な在庫管理と安全性の高い入出荷を実現するためのサプライチェーン構築を目指している。
そのため、バーコードには今までの商品アイテム情報に加えて、製造年月日、ロット番号、品質保持期限(賞味期限や有効期限)などの属性を埋め込み活用することが要求されている。しかし、従来のJANコードでは商品アイテム情報しか含むことができない。こうした背景から生まれてきたのがGS1データバーである。
GS1データバーは、流通システム分野の国際的な標準化機関であるGS1によって1990年代半ばに開発が始まり、2006年秋にISO/IEC国際標準規格となった。JANコードと同様に、POSシステムでも利用できる標準バーコードである。主な特徴は、JANコードと比較してスペースが小さくなり、商品アイテムコードの他に有効期限やロット番号などの任意につけられ、複数の商品属性情報を追加表示できる点である。
GS1データバーは、JANコードと同様に商品識別コードのみを表示するものと、商品の有効期間やロット番号などの任意の属性情報を複数表示可能なものがあり、表現できる商品属性情報(イメージ)は、最大容量で数字のみ74桁(英数字41桁)となる。
既にコンビニエンスストアでよく利用している公共料金や通信販売などの払い込み(料金代理収納で振込票に印字されている)では、コンビニのPOSシステム用に開発されたGS1データバー(GS1-128コード)が使われている。GS1-128コードは、商品関連情報(製造日、賞味期限、有効期限、使用期限、製造番号、ロット番号等)、企業間取引情報(注文番号、梱包番号、請求先企業コード、出荷先企業コード等)を表している。
さらに実用が始まっている分野に医療分野がある。日本医療機器産業連合会では、1998年に「業界統一商品コードとしてJANコードを、医療機器への印刷表示としてGS1-128バーコードを採用とする」との業界決定を行った。ヒトや動物を原料とする医薬品や医療材料など(生物由来製品)のトレーサビリティ管理(生産段階から最終消費段階あるいは廃棄段階までの追跡調査)が義務化され、その管理にGS1データバーが採用されている。生物由来製品は、2008年の工場出荷分からはすべての包装単位への新バーコード表示が義務づけられている。
■印刷での対応
JANコードは商品のアイテムコードであるため、商品とは独立した製造工程でコードを印刷することができた。つまりオフセット印刷でも十分に対応できていた。
しかしGS1データバーになると、商品の消費期限、製造ロット、製造年月日などの属性情報を埋め込むことになる。商品の属性情報が決まらないと、バーコードを印刷することはできない。
印刷での課題は、商品属性が決定した時点でいかに早く印刷できるかと言える。
GS1データバーを印刷するには、データの可変性、短納期、多品種小ロットなどに対応することが求められる。従来のバーコード印刷とは異なり、バリアブルデータの印刷に近い仕組みを考えていた方がよい。
例えば、パッケージではバーコードの部分だけをデジタル印刷機で追い刷りしたり、あるいはバーコードの部分をシールラベルにして後で貼るなどの対応が必要になってくる。
このような状況を踏まえるとデジタル印刷を上手く活用していくことが新しいバーコードの印刷の対応の一つとも考えられる。
(JAGAT 研究調査部 福原 節寿)
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