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印刷会社ができるクライアントのブランド価値の表現 ブランディング×デザイン力で印刷会社のソリューション力を高める (連載第6回)

掲載日: 2014年05月27日

ブランド・アイデンティティを策定するために重要なのが自社の立ち位置を明確にし、顧客の心の中に自社のポジションを築くことである。

  前回までに、印刷会社の取り組むべきブランディング活動の軸になる『ブランド・アイデンティティ』や、その策定のために必要なポジショニング等を伝えてきた。

ブランド・アイデンティティを策定することで、企業として競合他社との優位性や差別化のポイント、顧客に提供する価値を明確に表現する。印刷会社はクライアント企業のブランド・アイデンティティを共に策定することで、その企業のブランディングの戦略構築から関わることができ、関係も深く強いものができあがることになる。

ブランド・アイデンティティが策定され戦略が構築されてからは、その戦略を実行に移す必要がある。ブランディングの活動とは、企業の価値を顧客に伝え、それを誤りなく認識してもらい、購買行動につなげることである。

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ブランド・アイデンティティは、企業(又は提供する製品・サービス)について、顧客自身にとって「価値がある」ものとして認識されるために策定するものであるが、これは企業の戦略上のものであるために顧客自身は見たり聞いたりすることはできない。そこでブランド・アイデンティティを顧客が見たり聞いたりできるように形に表現することと、形にしたものを顧客と接触し実際に見たり聞いたりしてもらう機会を作る必要がある。ブランド・アイデンティティを“伝える”活動は、“策定”と同じくらい重要である。

ブランディングの活動では、形に表現することを『ブランド要素(brand element)』、顧客と接触する機会を『ブランド体験(brand experience)』と呼ぶ。

印刷会社が販促物のデザイン提供や販促活動の企画提案を行う際に、これらブランディングの考え方を取り入れることで、より効果的な、より説得力のある提案活動を行うことができる。
ブランド要素とは、ブランドを識別できる最少の単位とも言われていて、主に以下のようなものに当てはまる。
・ネーミング
・ロゴタイプ、シンボルマーク
・キャッチコピー、スローガン
・キャラクター
・色
・パッケージ
・音、ジングル
・匂い
・ドメイン(?.com等)

このようにブランド要素には、印刷会社のデザインや企画部門で行うことができるものが多くあることがわかる。

また、ブランド体験には、顧客とブランド(企業又は製品・サービス)が接触する全ての機会が該当する。接客や電話等、社員・スタッフと顧客との接触もブランド体験と言える。したがって、印刷会社が全てのブランド体験をサポートできるわけではないが、広告や販促の活動が、ブランド体験の構築において大きなウエイトを占めていることは言うまでもない。

クライアント企業のブランディング支援においては、ブランドを識別できる最少単位としてのブランド要素を作り、それらを組み合わせ、広告や販促活動の計画を構築しながら、広告物や販促物の制作・印刷につなげていくことになる。
クライアント企業からブランド・アイデンティティを共に策定していくパートナーとして認められれば、制作段階前の経営戦略やマーケティング戦略からクライアント企業に深く入り込むことができ、過度な価格競争に巻き込まれることがなくなる。また、その強みを伸ばしていくことで印刷会社の新たなビジネスの可能性になっていくのである。

次回は、具体的なブランディング支援としてどのようにブランド・アイデンティティを形に表現をして、顧客と接触する機会を作っていくかを見ていく。
 

   

連載第1回 印刷会社に求められる顧客ビジネス支援のブランディング

連載第2回 印刷会社がクライアントに提供すべきもの

連載第3回 印刷会社が取り組むべきブランド戦略構築の流れ

連載第4回 活動の軸になるブランド・アイデンティティとは

連載第5回  顧客の心の中で自社の占めるポジショニング

連載第6回 印刷会社ができるクライアントのブランド価値の表現

連載第7回  ブランドの価値は世界観とトーン&マナーでつくる

連載第8回 デザインを統一するトーン&マナーのつくり方  

 

 

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小澤 歩(おざわあゆむ)
有限会社グレイズ代表取締役  http://ozawaayumu.com/
(財)ブランド・マネージャー認定協会マスタートレーナー 
http://www.brand-mgr.org/

 

 

東京都江東区出身。広告販促制作会社等でのグラフィックデザイナー、アートディレクターを経て、2002年に広告制作会社として (有)グレイズを設立。様々な企業の広告販促物の企画デザイ 制作を手がけ、さらにブランディングやマーケティング、心理学等を踏まえたデザインの戦略を使いクライアント企業の成果を出す。現在は企画デザインだけで なく、デザイン戦略を軸にした企業全体の課題解決、価値を高め差別化をするブランディング、販売促進のコンサルティングのサービスも提供。
また(財)ブランド・マネージャー認定協会トレーナーはじめ全国の企業・団体等で、デザイン表現の戦略やブランディング、マーケティングを伝える研修や講師としても活動。

 

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