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文字の特性とフォント--フォントデザインの実際(1)

近年「フォント」という言葉が一般化されているため、そのデザインに関して「フォントデザイン」の表現を使ったが、本来ならば「書体デザイン」または「タイプデザイン」が正しい表現であろう。

従来の写植方式でも多様な書体が存在していたが、それ以上にDTPの世界では多種多様なフォントが市場に溢れ玉石混淆(ぎょくせきこんこう)の状態で、ユーザーとしても選択に困るほどである。しかしタイプデザインに関係するデザイナーを除いて、書体デザインに明るいユーザーは意外と少ないのではないか。そこで数回にわたって、印刷書体に関する「歴史的変遷」と「書体デザインの基本」「フォントの選択と使い方」「和欧混植の問題」などについて解説したいと思う。

元来「フォント」の意味は、欧文活字の世界における概念で、ある書体の一サイズの一揃え(セット)を表す言葉から発している。しかしデジタル技術の進歩と普及により文字のデジタル化が進み、デジタル文字の総称として「デジタルフォント」と呼ばれるようになった。現在コンピュータ関係やDTPなどで使われているフォントの意味は、欧文文字にかぎらず文字全体のことを表す言葉として慣用語になっている。

いままで印刷における「文字」は活字に代表されていたが、文字が光学式の写植機で使われるようになり印刷用文字の概念が変化してきた。特にデジタルフォント時代になり「タイプフェイス」と「フォント」が混同して使われている傾向にある。

印刷に使われる文字は、活字時代から長年の歴史を経て今日にいたっている。現在ではフォントの言葉で代表されているが、いままで印刷の世界では文字といえば「活字」を意味していた。日本語は漢字と平かな・片かな混じり文で表記するのが基本であるが、現代では英字・洋数字・記号などを加えた、世界に類を見ない特殊な言語である。

●文字の特性

文字に関しては「字体」「字形」「書体」の3要素がある。「字体」とは文字としての字画のあり方、つまり文字の骨格にあたるもので「略字体」「正字体」「旧字体」などが存在している。

「字形」は、字体に適用されたデザイン設計により具体化したものである。つまり字体は抽象的な概念であり、具体的には字形として表現される。「扁(へん)」と「旁(つくり)」のバランスが悪く、字の格好が良くない場合に字形が良くないという。よくこの字体と字形は混同して使われている。

「書体」とは、文字を活字として点・画をデザインし、一定の字形にまとめたものをいう。和文書体の例では明朝体、角ゴシック体、丸ゴシック体、楷書体、教科書体などがあり、欧文書体の例ではタイムズローマン、ヘルベチカ、ユニバースなどがある。この書体と字体も混同して使われている。次回は「印刷のメカニズムとフォント」について述べる。(つづく)

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2000/01/24 00:00:00


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