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広告に見るマーケティング戦略

■マスマーケティングからの脱皮
 効果的な広告による訴求、集客、固定客化、には的確なマーケティング戦略に基づいて、マーケティングミックスの構成要素として、巧みな連動による展開が必要である。これまで、マーケティング戦略が、製品志向から消費者志向に変遷したように、広告戦略、プロモーション戦略も変革していかなければならない。21世紀のプロモーション戦略は、企業側からの情報の発信を乗り越え、特定の顧客との関係を構築するコミュニケーション戦略を構築して行く方向にある、と言えよう。20世紀に高度に発達したマス・マーケティングは、マス・プロダクションとマス・メディアから成り立っており、造れば売れる時代であり、広告は顧客への製品やサービスの認知に力点が置かれた。ここでは、需要が供給を上回っているため、生活者はその基本的生活レベルの向上に価値を置いたのである。

■多様化する21世紀の生活者
 そして21世紀、国民総中流といわれみんなが同じものを欲しがっていた時代は終わり、お茶の間に家族が揃って同じテレビ番組を見ていた時代も終わりつつある。一定の生活レベルに達した生活者は、さらに物資的に豊かな生活、または物質的に加え精神的な豊かさ、を求め始めた。一方で、生活者自身もシングルライフの増加、女性の社会進出、高学歴化、少子化、などを背景にそのライフスタイルを変化させてきている。そのために、利便性、健康、趣味、キャリア、などへ志向を転換させると同時に、いわゆる同一ニーズからニーズの多様化への方向へと、その価値を見出す視点も切り替わって来ている。さらに、現代では生活者一人一人が、全て異なる個性を持ち、違うことへのこだわりや価値が高まってきているケースも増加しつつある。

■広告、メディアの方向性は?
 テレビは相変わらず最強のマスメディアだが、かつて地上に君臨した恐竜のように大きな変革期に直面している。印刷メディアや新聞も、Webとは異なるアイデンティティを模索している。雑誌は、もう大きなヒットは難しく、フリーペーパーとの共存か競争かの渦中にいる。個別のニーズにきめ細かく対応可能とするIT技術の進歩、及び世代が変わった将来を見通せば、インターネット周辺がメディアの中心になっていくことは間違いないだろう。
 しかし一方で、折込広告、OOH(アウト・オブ・ホーム)メディア、ラジオなどに生活者のニーズによりきめ細かく対応が可能なマイクロ・マーケティングの可能性が拓けている。これまで主流であった既存の広告手段においても、その手法をより多様化、個性化への対応へと進化させている。そこには、基盤となるロジック、さらには実現可能性を高める具体的なストーリーが現れてきている。
 マス・リサーチでは足りない21世紀は、消費者の目線から先を読み、自社の顧客を見極め、全方位ではなくセレクトされた顧客に対して、優良で価値の高いコンテンツを造ること、提供することが大切になっている。ここには、的確なロジックや数値などによる、明確な戦略的なマーケティングストーリーに裏打ちされた広告の展開が求められ、それを可能とする企業が今後の業界をリードするのではあるまいか。印刷企業は、戦略的なマーケティングによる自社の戦略の構築のみならず、顧客のマーケティング戦略、広告展開を的確に見極め、顧客のビジネスを深く理解することで、収益の確保、利益の創出、人財の確保、などを目指す必要がある。

 来る8月30日JAGATでは、株式会社オリコムのJMAマーケティング・マスター シニアディレクター白土氏を招き、マーケティングにおける広告戦略の実態と展望についての理解を深化するために、「マーケティングと広告メディアの新しい動き」と題して,拡大ミーティングを開催する。

2006/08/10 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会