■フォントとDTPアプリケーション
国内フォントベンダーのほとんどが、既にOpenType製品をラインアップの中心としている。OpenTypeの最も重要な意義は、MacとWindowsで同じ文字セットのフォントが使えるためクロスプラットフォームを実現できることと、PostScriptフォントと違いプリンタフォントを必要としないホストベースフォントということである。OpenTypeに対応したDTPアプリケーションには、アドビの最新アプリケーションの他にQuarkXPress 6.5やEDICOLOR8.0がある。
フォントワークスのLETSと同様に、モリサワでもフォントライセンス契約「モリサワパスポート」が提供されている。PC1台分のフォント使用権を1年単位で購入するもので、100以上の書体が使用可能となる。ユーザにとっては、多種類のフォントを使用する際のコストを大幅に削減できること、OSやハードウェア変更の際のフォント移行が楽になることが、大きなメリットである。
アドビの主要DTPソフトウエアの統合パッケージとして、Adobe Creative Suite 2(以下Adobe CS2)が発売された。主要アプリケーションは、それぞれPhotoshop CS2、Illustrator CS2、InDesign CS2、GoLive CS2となり、Acrobatのバージョンは最新の7.0 Professionalとなっている。Adobe CS2には、新たなアプリケーションとしてAdobe Bridgeがパッケージされている。Bridgeは、アドビアプリケーションのファイルやPDFの整理、検索、プレビュー一覧表示することができる。一般にDTP作業をおこなう場合、複数のファイルを開き、複数のアプリケーションを頻繁に切り替えることがあり、その待ち時間は作業の20-30%を占めると言われている。Bridgeを使用することによりアプリケーションの切り替えを減らし、作業性が向上する。
クォーク社から最新版の「QuarkXPress 6.5日本語版」が発売された。動作環境がMac OS X、Windows2000/XPになり、複数の印刷用ドキュメント、HTMLドキュメントを1ファイルとして扱う機能など、クロスメディアパブリッシングを強化したものとなっている。6.5では、Adobe Photoshopのネイティブファイル(PSD形式)をインポートし、さらに、フィルタの適用・色調節・色変換などのイメージ操作をQuarkXPress上でおこなう画像編集機能が追加された。また、OpenType・CIDフォントのダウンロードにも対応している。他にExcelファイルをインポートできるなど表組機能が強化されている。
■入力の多様化とXMLパブリッシング
XMLパブリッシングは、印刷物制作のためにデータをXML化することより、再利用が容易な形でデータを管理し、印刷物やWebなど多様なメディアに情報を発信する手段として注目され、徐々にあるべき姿が明確になってきたと言える。
XMLが印刷業界で注目された当初、専用エディタ等でタグ付きテキストを入力することもあり、入力の難解さが最大のネックと言われていた。昨今は、顧客サイドでWebブラウザからフォーム形式で入力する仕組みやWord入稿を利用したXML入力が普及し、それらの問題は過去のものとなった。Webブラウザを利用する場合、利用者が専用アプリケーションをインストールするなどの必要もなく、特別なスキルも必要ない。
XMLパブリッシングの例として、製品マニュアルや法令集を出版するシステムが増えている。あるパソコン・メーカーの製品マニュアルは、ライターが執筆したWordやテキスト原稿から、DTPレイアウトをおこなっていた。しかし、校正担当者が校正紙に赤字を入れ、DTPオペレータが修正するという実質的にアナログ作業と同等の校正プロセスであり、修正・校正の手間や時間がかかるものであった。新たにデータ構造を定義し、保存データをXML化することで、XMLパブリッシングを実現した。Word入稿された原稿は、XMLに自動変換し、データベースに登録される。データは一元管理され、テキストベースでの校正をおこなう。校正完了後に、自動組版や目次・索引の自動生成をおこなう。印刷物だけでなく、Webサイトへの情報発信などマルチユースも迅速におこなえる。アプリケーションやOSに依存したデータ保管から脱却し、将来的な活用を妨げないといったメリットがある。
ある出版社の六法全書は、以前は原稿や赤字校正を制作会社とやり取りしながらフルDTPによって編集し、出版していた。また、Web上にて法令サイトを運営しているが、そのデータはDTPとは別に用意していた。データをXML化し、編集部内のWeb環境で編集・組版と校正をおこないたいという要望があった。これを実現するため、Web入稿したデータをすべてXMLデータとして保管し、自動組版をおこない、印刷にもWebにも使うシステムを構築した。このシステムによって、編集部内のPCでの検索・閲覧と改定・編集作業が、必要なときにすぐできるようになった。データを修正し、組版結果をPDFで取り出せる。すでに、4,800ページもある六法シリーズが数冊も出版されている。
■PDF/Xの利用動向とAdobe Acrobat7.0
PDF/Xは、印刷データ入稿の信頼性向上のためにPDFの機能を制限することを目指し、米国の広告業界によって検討され、後にISO規格となったものである。たとえば、PDF/X-1aではフォント埋め込みとCMYKカラーが必須である。そのため、PDF/X-1aであればフォントの有無や色空間の違いによる入稿トラブルは起こり得ない。
国内における一般的な印刷データ入稿形式は、アプリケーションファイル入稿である。これは、印刷会社が入稿データの修正を行うことが多いためである。この方法では、データ制作サイドと受け取る側のアプリケーションのバージョンや、OS、フォント環境などを合致させることが必要であり、これらの差異に起因するトラブル発生は少なくない。アプリケーションファイルの互換性を保持するために、最新のハードウェアやOS環境によるパフォーマンスや拡張性・信頼性を享受することができないという問題がある。
新しいアプリケーションやさまざまなOS・フォント環境に適応する手段として、PDF/X-1aによるデータ入稿が望ましいと言われている。アプリケーションやOS・フォント環境に依存せず、環境に依存するトラブルが発生しない。特に雑誌広告・新聞広告などの分野では、将来的にPDF/X入稿が普及する可能性が高い。
PDF生成ツールであるAdobe Acrobat 7.0 Professionalでは、印刷関連の機能が「印刷工程ツールバー」としてまとめられており、操作も分り易い。インキ総使用量、RGB画像、オーバープリントを検出することができる出力プレビュー機能や、ヘアライン修正、裁ち代やトンボを付加する機能が新たに搭載されている。
また、プリフライトの結果をエラーメッセージではなく、ビジュアルに表示することが出来る。たとえば、PDF/X-1aを設定してプリフライトをおこなうと、問題のあるオブジェクトに注釈を付けた状態のPDFが生成される。このPDFを見ると、どのオブジェクトに透明が設定されているとか、RGB画像であるためPDF/Xでは問題となることが、誰にでも理解できるし、修正の手順も容易に理解できる。
■出典:JAGAT 発行「2006-2007 グラフィックアーツ機材インデックス」 工程別・印刷関連機材総覧
2006/08/19 00:00:00