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ダイレクト・マーケティングの視点から販売促進を支えるさまざまなツールを開発

株式会社ウイル・コーポレーション

ウイル・コーポレーションは情報・印刷事業と、ダイレクト・マーケティング事業の2つを事業の柱にしており、これらの事業に関連して、特徴あるDMやチラシなどのさまざまなSPツールを開発している。これらのSPツール開発に当たって、同社の取り組みと開発製品について、同社情報・印刷事業部 営業開発部アカウントディレクター平戸理英氏にお話を伺った。

レスポンスを上げるツールという視点

同社のダイレクト・マーケティング事業では、通信販売を10年以上にわたって手掛けている。この通信販売では主に、ヘアケア・化粧品、美容食品、健康補助食品、生活関連用品(雑貨)のカテゴリーで、さまざまな商品を取り扱っている。これらは特徴ある商品であるにもかかわらず、十分な販路を確保できないという理由もあり、同社独自のブランドを付けて販売している。通信販売を行っている理由の一つには、顧客の声を反映した形でのSPツールを作る必要性があると考えたからである。そのためには、通信販売という形でダイレクト・マーケティングを取り入れていくことで、じかに顧客の反応を蓄積していくことができる。これらの事業を生かして、同社では、以下の手順でさまざま製品開発を行っている。
まず、顧客の声をダイレクト・マーケティング事業部で集めて、そこから課題を抽出して情報・印刷事業部に提示する。情報・印刷事業部ではこの課題を解決するべく新製品の開発を企画する。
その後、この新製品は実際に効果があり、課題を解決しているのかについて、ダイレクト・マーケティング事業部で実際に検証し、テストマーケティングを行う。その結果、課題が解決でき、レスポンスが良かった、顧客の評判が良かった物を情報・印刷事業部の顧客に提案していくという流れである。そして、またこの顧客の声をフィードバックして、開発につなげる。このようなシナジー効果を生み出す仕組みを構築してきた。
同社が企画・開発する上で、目指したのは一つにダイレクトレスポンス広告と呼ばれる物である。例えばチラシであっても、返信用はがきが付いているスタイルの物や、DMでも送りっぱなしではなくて、消費者側とコミニュケーションできるツールとなる物を多く開発してきた。
もう一つの特徴が、ワンライン加工ができるフィニッシングシステムの導入である。商業印刷の分野では、同社がいち早く導入した。
「販売促進を担当する人がいろいろな企画を立てても、後加工が多くて納期に間に合わなかったり、コストが非常にかさんだりして、これまで断念してきたような物もありました。そこで輪転機からそのまま加工機に直結するようなフィニッシングラインを作りました。これによって、糊付けや抜き、ミシン目、製本などをワンラインですべて行うことができます。その結果、納期短縮や制作コストカットなどを実現しました」(平戸氏)

消費者心理に基づいた企画開発

では、レスポンスの上がるSPとはどのような物であろうか。同社が考えているのが、広告宣伝やマーケティングでは基本的な知識として知られる「消費行動」のプロセスに関する仮説である「AIDMAの法則」に沿ったSPツール開発である。
「消費者の心理プロセスに注目して、いろいろなSPがある中で、手に取ってもらえる物や、興味をもってもらえる物を、何か違和感をもって、「あれっ」と思ってもらえるような形状の物などいろいろと考えて開発してきました」(平戸氏)
その例として、オープンワイドに広がる圧着チラシ、インライン加工で制作したさまざまなDM、レスポン君(R)、プル・トップ型のDMなどがある。
次に消費者の心理的プロセスでその製品が欲しい、記憶に残るという点では、企業姿勢を示すようなSPツールがある。つまり、この企業から購入したいと思わせるような、個人情報保護に対応した物や環境問題に配慮した物である。この視点で開発した物として、糊面同士を貼り合わせた形状で、台紙のない(剥離紙がない)ラベルのためにゴミが出ない、ごみゼロラベル(R)、ホチキス止めがない糊綴じのグルー製本などがある。また、印刷されている返信用はがきに特殊加工を施し、こすれば簡単に個人情報部分などを目隠しができるはがき、チラシなどである。
次の行動段階という視点では、レスポンスという、アクションに結び付くものを意識する。そのためには消費側のハードルを少しでも低くする必要がある。例えば、最もシンプルな形としては、返信用はがきなどの切り離し部分にミシン目を入れることがある。これだけでも、消費者側にとっては切り離すためのハードルは低くなる。
「レスポン君(R)(B2チラシを折り畳んで封書化し、その中にクーポン券やはがきなどを封入するDM。宛名も個別メッセージも可変印字で対応)のようにハサミを使わないでも簡単に開封できて、広げるだけで大きなチラシになる物、あるいは申し込みはがきであれば、あらかじめ差出人の住所氏名が印字されているような物。目隠しはがきなどでも、ただ、糊代と書いてあるだけでは、糊が必要になりますが、こするだけで簡単に糊付けできて目隠しできるような物であれば、消費者側のアクションは少なくなります。とにかく、なるべく消費者側に手間を掛けさせないということで、レスポンスを少しでも上げていくことが必要になります」(平戸氏)

『プリンターズサークル』9月号より一部抜粋

2006/09/06 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会