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CEATEC JAPAN 2006を考察する

CEATECとは

CEATEC JAPANは2000年から毎年1回10月に、千葉・幕張の幕張メッセで開催されるアジア最大級の情報・通信・エレクトロニクスに関する国際展示会であり、IT関係のIGASというべき位置づけにある。世界の情報・通信・エレクトロニクス関連の企業や団体が参加し、最新技術や製品を展示・発表、企業トップなどによるセミナーや講演を開催している。これもIGASに似通っているが、若い副社長クラスが細かい技術的な講演をしているのが新鮮に映る。
1999年までは、情報・通信関連の総合展示会「COM JAPAN」と、エレクトロニクスの総合展示会「エレクトロニクスショー」が行なわれていたが、両者が統合して2000年に始まったのがCEATEC JAPANである。今年は10月3日(火)から7日(土)まで5日間開催された。
※CEATEC=Combined Exhibition of Advanced Technologies

全体の印象

印刷業界では縁遠くなった千葉の幕張国際展示場で行われるCEATECだが、半導体や通信関係ではいまだに幕張開催が多い。国際展示会とはいえ、目に付く海外勢は何といっても台湾だ。大手二社(SAMSUNG、LG)の韓国に対して台湾は中小の部品メーカーのパワーに圧倒される。
次世代DVDも話題には違いないが、やはり会場を圧倒していたのは大型平面ディスプレイである。各大手電機メーカーが力を入れて展示していたのは言うまでもないが、その展示方法や表現の仕方にはかなり差があった。例えば日立製作所はディスプレイパネルの製造元としての技術力をアピールしているという具合だ。確かに高精細画面の精度は玄人筋をうならせる展示をしていたと思う。商売的に成功しているSONYと松下電産は、よりシェアを高めようとイメージ先行の展示方法が印象的だった。このところ何かとマイナス話題の多かったSONYだが、集客という点ではたいしたものである。改めてSONYブランドのすごさを体感した。「液晶の」というキャッチフレーズの付くシャープが、CMと同様に亀山工場を前面に押し出し過ぎて興ざめ感は拭えなかったし、二社に対して集客という点では水をあけられていた印象を受けた。液晶に対して「プラズマの」というイメージを持つパイオニアも、このところの調子を反映してか、しきりにオーディオメーカーとしての音の良さをアピールしていただけに思えた。日立と同様に保有技術をアピールしていた三菱電機は、派手さこそないが見ごたえのある展示が印象的だった。フルハイビジョンのプロジェクターの復活となった「DAIATONE」サウンドをプラスしての展示など、往年のオーディオブームで育った(私のような)人間には懐かしさも手伝って興味深かった。しかしスーパーウーハ等のデジタルサウンドに慣れきった若い人には、地味に感じてしまう音というのが正直なところだろう。広色域印刷の場合など、ただ派手な色だけの調子がない印刷物は論外だが、デザインの質と合わせて訴求力という点では印刷業界も再考すべきだ。

プラズマのがんばり

高品質ディスプレイが声高に叫ばれだしたころ、プラズマディスプレイ(PDP)の発展性に疑問が持たれ、「高品質は液晶」と思われていたが、PDPの品質も特に動画では見劣りしなくなってきた。液晶もここまで色が良くなってくると残像特性が気になり、総合的には互角の勝負になっている。得俵にかかっていたPDPが土俵中央まで押し返した感じだ。大手にパネル供給している日立など「プラズマ独特のツヤのある」などとアナウンスする始末で(光沢のある表面ということではなく動画での画質を言っているらしい?)、その表現の的確さは置いておき、「ツヤのある印刷物」のように「ツヤのあるPDP」と表現されるようでは、印刷のあり方を真剣に考える段階にきたと感じた次第である。ネガティブに考えるのではなく、どう他のメディアと共存し、印刷業をクロスメディア化するかというポジティブに考えてのことだというのは言うまでもない。しかしBlu-ray Discの情報量を考えると印刷に匹敵する解像感をディスプレイが持つということは否定できない。かつて「ハイビジョンになったらテレビからそのまま印刷できる」などといっていた時代が懐かしく思えるくらいだ。

ホームシアター

ウサギ小屋などといわれていた日本の住環境も欧米化しつつあり、リビングルームや個人空間が重要視されるとホームシアターの必要性が急速に高まってきた。もちろん大型の平面ディスプレイもホームシアターにはなり得るが、プロジェクターやリアプロ(リアプロジェクター=背面投影式モニター)が再度注目されだしているのである。そこで重要になってくる技術が、かつてのRGB三管(式)や液晶に代わるDMD(digital micromirror device)だ。米Texas Instruments Inc.が開発した投射型ディスプレイ向け素子で、 シリコン(Si)ベースの素子の上にごく小さな鏡を配列し、この微小な鏡の向きを調節し,光源からの光を画面方向に反射させるかどうかでON/OFFするものである。光強度は,鏡が画面を向いている時間で決まってくる。このDMD素子を使った投射型ディスプレイの技術をDLP(digital light processing)技術と呼んでいるが、今やDMDという基礎技術名よりDLPという商品名の方が有名になっている。早い話、アルプススタンドでPL学園がやる色色紙による応援と思えば分かりやすいだろう。このDLP、ホームシアターどころか商用の映画館でもずいぶん使われている。(最近は「ゲド戦記」などが上映)素子数の増加や高密度化はデジカメを見れば「倍々ゲーム」なのはお分かりいただけると思うが、70mmクラスの映画がDLP化するのも時間の問題だ。写真フィルムに次いで、映画からフィルムが消える日もそう遠くない。シネマコンプレックスの中をフィルムが走り回っている代わりに光ファイバーが張りめぐらされるのだろう。
今回個人的に一番注目したのが、三菱電機で参考展示(北米では2006年5月に発売済み)していたRGBCMY(6色)のDLP式リアプロモニターだ。光の三原色を利用しているCIE表色系準拠のモニターは色再現という点で問題がある。本来、光は分光スペクトルで表現すれば「色弱の人」とも「犬」とも情報を共有できるはずなのだが、そうならないのがCIE表色系の限界だったのだ。
プリンターの多色とは異なり、モニターの場合は分光という考えで色数を増やしていけば、スペクトルを近似できることになる。一説によれば8色とも16色ともいわれているが、ある程度の色数で近似でき、分光スペクトル的な色再現だって夢ではないはずなのだ。

DLNA

CEATECでは恒例となったDLNAの講演が今年も行われた。DLNAとは「Digital Living Network Alliance」の略で、ホーム・ネットワークでディジタルAV機器同士やパソコンを相互に接続し,動画,音楽,静止画像のデータを相互利用する仕様を策定するために設立された業界団体(JPEGのようなもの)である。マイクロソフト,インテル,松下電器産業,ソニーといった企業が参加している。
DLNAは2004年6月に最初の仕様である「相互接続ガイドライン1.0」(DLNAガイドライン)を定め、2004年10月に開催された「CEATEC JAPAN 2004」では、ディジタルAV機器とパソコンを相互接続して動画などのコンテンツをホーム・ネットワーク経由で再生するデモを見せ,来場者の注目を集めた。これに端を発してCEATECでは恒例化している。
DLNAガイドラインは,コンテンツを提供するサーバをDMS(digital media server),再生するクライアントをDMP(digital media player)と呼び,DMSとDMPの間の接続条件を定めたものである。このガイドラインに準拠した機器同士なら,単に線をつなぐだけ(実運用では無線が主体)で特別な設定なしに相互接続してコンテンツを共用できるようになるものだ。近未来のイメージもあるが自分の子供を見ていても、インターネットからディスクの中にテラレベルのコンテンツ(動画や音楽)を溜め込んでしまう事実は容易に理解できる。JAGAT内でも「インターネットから大容量のコンテンツを取り出すことが、現時点で特殊な例か?一般的か??」議論になったことがあるが、個人がテラレベルのコンテンツを溜め込んでしまう世の中がすぐそこに来ているのだけは確かな様である。
ここでのキーワードは
1.コンテンツの形式がパッケージからデータそのものになる。
2.個人が数テラの情報を管理するようになる。つまりDBが中心になる。
3.ネットワークは有線から無線が主役になる。11Nが始まり?

ということが挙げられ、印刷業界としてもこういう社会が来たときに情報ビジネスとしていかに生き残っていくかが課題だ。

2006/10/10 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会