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Web2.0時代のデジタルアーカイブ考

デジタルアーカイブに関しては、特に文化財が豊富な先進国での動きが先行したために、日本国の体面というのもある程度働いたと思われるが、かなり以前から補助金事業として進められたところもある。これは目立つ文化財が対象であったのだが、実際には目立たない文化財を抱えた公共施設が非常に多くあり、それらはどちらかというと置いてきぼりであった。そこに対しても総務省が財政支援をするように変わってきた。

文化財のような経済化しにくいコンテンツのデジタル化は非常に困難で遅々として進まないと思われがちだ。しかし実際には民間で勝手に進めているものはあるし、それらは特定分野では企業でも追いつかないくらいになっているものも多くある。例えば著作権フリーのテキストを集めた青空文庫が代表だが、オタク系も情報提供者は多い。ただし漫画を勝手にスキャンして交換するような形態では、デジタル化された内容も闇に葬られてしまう。

技術的にはWikiのように情報を纏め上げていく仕組みがあり、写真のflickr、動画のYouTubeなど膨大な情報を管理する無人の仕組みもある。こういう民間で自然発生した運用の仕組みと、知的財産権の処理、さらに、テキスト・静止画・動画コンテンツの関連付けなど、デジタル+ネットワークの知恵でうまくまとめれば、システムには殆ど金をかけずに、コンテンツに関してもボランティアベースで、アーカイブが可能になる。

実はアメリカの歴史を網羅する公的なアーカイブもコンテンツや作業に関してはボランティアで行われている。日本でも文化財のデジタルコンテンツを収集するのに、デジタルカメラやDVで撮ったデータを残していくなら拝観料はタダとか、それらを何かに使いたいなら、データのコピーとバーターで許可など、ボーンデジタルの時代に相応しい方法があるはずだ。

アーカイブをする場所も、文化財のある場所ごとに用意しなくても、地域なり分野でまとめてYouTubeのようなものを作ることはできるであろう。こういった分散したコンテンツを編集して、利用者に分かりやすい見やすいものにする簡単な方法として、Webサービスやマッシュアップが使えるようになるのが理想である。

クロスメディア研究会会報210号より)

2006/11/05 00:00:00


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