印刷業界のサプライチェーンマネジメントに関する考察(2)
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中間段階がSCMのイニシアチブを取ることが多い理由
SCMを構築していくに際して、流通業界や自動車業界のように上流や下流から協力要請していくのは、強力なバイイングパワーを行使できる企業の場合が多い。一般的に中間段階の卸売が主導権を取ることが多いのは、流通の中間段階にあり、上流から末端までの情報が集中、中立な立場にあり、ROIの観点から効率化によるメリットを最大限に享受できる立場にもあるからだ。例えば、顧客やメーカーが作ったシステムそれぞれに卸が個別対応していては全体最適にならないので、何らかのデファクトスタンダードが卸が用意することが望ましい。
印刷業界のSCMの進み方は?
それならば、印刷業界のSCMはどのように進むと予想されるのか。
印刷業界は、川上にシェアの大きい製紙会社があり、川下にもシェアの大きい印刷会社がある。中間段階にも、規模の大きい用紙卸売会社がある。
つまり印刷業界で流通各段階をまたがるようなSCMを構築していこうとするとき、川上・中間・川下のすべてにSCM構築イニシアチブを取るに値する実力の会社があり、メーカー主導型・卸売主導型・ユーザー主導型のいずれもが考えられる。
用紙受発注EDIが進まない理由はどこに?
印刷会社は受注生産型が多く、もとより定期出版印刷以外のものの生産計画や、需要予測は難しいのかもしれない。それにしても用紙受発注EDIが進展しないなら、要するに用紙受発注コストより用紙受発注システム開発コストが大きいことを意味するのである。
それならば、「用紙の種類が少ないから、用紙受発注EDIへの投資はROIの観点から非経済」と言い換えるべきであろう。
しかし用紙の種類は数十万種類とも言われる。これが多いか少ないかの受け取り方は様々あるとしても、果たして、用紙受発注EDIが進展しない理由はどこにあるのか。
次々と用紙値上げが打ちだされる現在こそ、流通の部分最適より業界の全体最適を優先し、合理化益を流通各段階で分配するようなシステムの構築に取り組む時期であることは言うまでもない。そうでなければ、今後も用紙価格は原油価格と製紙会社業績に左右されるだけの他人任せ相場によって決まってしまう。
印刷業界のサプライチェーンマネジメントに関する考察(1)
2006/11/29 00:00:00
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