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JDFの規格動向と実装

PAGE2007コンファレンスE3セッション「JDFの規格動向と実装」では、成熟度を増しつつあるJDF規格と完成度が高まりつつあるJDFワークフローの実装状況について紹介した。


まず、今年9月に開催されるIGAS2007でのCIP4主催JDFイベントの企画運営委員会の議長を務める(株)プリンテクノの木村哲雄氏より、CIP4/JDFの概要とJDF1.4の検討状況について報告があった。

JDF1.4は、2006年3月より検討が始められ、今年の春には仕様への要求が締め切られ、IGASにおいて正式リリースの予定である。2008年春のdrupaでは、JDF1.4に対応した製品が展示される見込みである。
JDF1.4において追加される項目として、コンテンツ作成、レイアウト作成、パッケージ・ラベル関連等がある。原稿作成段階からのJDF利用が検討されつつある。


富士フイルム(株)の山下宏明氏からは、JDF/PDFアーキテクチャによるオフセット印刷とデジタル印刷の統合ワークフローについてお話があった。

現状の印刷物作成のワークフローでは、コンテンツデータはデジタル化され、各工程の生産性は向上している。さらに効率を上げるには、ヒトによる判断・意志決定力の向上が重要になる。その実現には、指示・伝達のデジタル化が有用である。デジタル化され蓄積された指示・伝達データを再利用することで工数の低減・簡易化が図れる。また、デジタル印刷の進展やWeb等の電子メディアへの展開にも対応する必要がある。
富士フイルムでは、こうした環境変化に対応する新しいワークフローシステムを提案している。そのコンセプトは次の3点である。

  1. 製造パラメータの自動化・スキルレス化によるコスト削減
  2. 早い段階での成果物の合意・校正の効率化による納期短縮
  3. データの一元管理により、ビジネス展開を可能とし、事業効率を向上

このシステムは、JDF/PDFネイティブアーキテクチャーを採用している。印刷物の構造(表紙/本文等)と製造手順・パラメータをJDFの仕様にあるような階層構造で表現し、それとコンテンツのPDFファイルとを関連づけながら、制作・進行管理を行う。
例えば、表紙はオフセット印刷機、本文(カラー)はデジタル印刷機、本文(モノクロ)は単色オフセット印刷機で印刷し、校正手法も部品ごとに異なるという場合でも、まず印刷物全体のジョブ登録(台割登録)、そして部品ごとのワークフローの設定をひとつのシステム、かつアイコンベースのわかりやすいインターフェイスで行うことができる。

また、製造パラメータの設定として、面付けパターンの自動選択、出力するメディア・デバイスに合わせたカラーマネジメントの適用などがある。
それから、Adobe PDF Print Engineをいち早く採用し、JDF/PDFを変換せずにダイレクトに処理することが可能である。


ハイデルベルグ・ジャパン(株)の本田雄也氏からは、JDFの対応状況として、CIPPIアワード受賞者の紹介とハイデルベルグ社製品のJDF実装状況、そしてハイブリッド・ワークフローの紹介があった。

CIPPIアワードとは、JDFを利用して印刷物製造を革新した企業にCIP4から送られるもので、次の3つのカテゴリーがある。


各カテゴリーの優秀賞と次点についての6つのケーススタディは、このアドレスからPDFファイルをダウンロードできる。
6社の内訳はドイツの企業が5社、ベルギーの企業が1社で、いずれも中小規模の印刷会社である。2005年のケーススタディは限定された範囲でのJDF連携の例であったが、2006年は、範囲が拡張され顧客まで巻き込んだケースがあったり、またJDFの投資効果を数値的に表現できるようになっている。例えば、最大のコスト削減効果を出した事例では、約7,350万円の投資に対し、1,827%の投資対利益率が得られる見込みという。
いずれにしても、欧米ではJDFは使える、使えないという議論はなくなっている。ただし、自動化のレベルは、まだまだ向上する余地がある。その中でも印刷会社がやれることは沢山あることをCIPPIアワードが証明したといえる。

ハイデルベルグ社のプリネクト製品のJDF対応状況としては、以下の内容については実装済みである。


また、オフセット印刷のワークフローとデジタル印刷のワークフローを統合管理するハイブリッド・ワークフローを「プリネクトデジタルプリントマネージャー」により実現する。

最後に、CIP4では日本語のユーザフォーラムを開設しており、ユーザの積極的な参加をお待ちしている。


デュプロ精工(株)の宮野氏からは、同社のワークフローオートメーションへの取組についてお話があった。

デュプロ精工は、UP3Iという後加工機のインライン接続のための標準規格制定のコアメンバーとなっている。UP3Iとは、Universal Printer Pre & Post-processing Interface の略称である。JDFもUP3Iも生産の自動化を目指すものであるが、決して競合するものではなく共存可能である。
JDFとUP3Iの概念の違いを表わす言葉に、In-line(インライン)とNear-line(ニアライン)というものがある。インラインとは、機器間(印刷機と後処理機)が物理的に接続されリアルタイムに通信を行って連動することを意味する。ニアラインとは機器間(印刷機と後処理機)が物理的に離れていても何らかの形態で機器間がコミュニケーションをとって協調することを意味する。インラインシステムは複数の工程を連結することで、作業者の負担を最小限に抑えるという利点があり、ニアラインシステムは、全体の最適化(群管理)と機器の追加、入れ替えをフレキシブルに行えるという利点がある。UP3Iはインラインの規格であり、JDFはニアラインの規格といえる。
UP3Iの接続製品例として、Oce社のデジタル印刷機とのインラインシステムがある。

UP3Iを利用したインラインシステムとJDFを利用したニアラインシステムの統合イメージを以下に示す。ニアラインシステムでは、デジタル印刷機と製本機の双方にJDFで作業指示が行われ、刷り本の認識はバーコードシステムなどを用いて行う。

デュプロ社製品では、製本機のDuplo Booklet Maker と断裁機のDuplo DC-645 がJDF対応している。また、OAI   SYMBIO   という製品がJDF対応コントローラとなる。デジタル印刷機や後処理機へのJDFジョブチケット発行、断裁のトリミング指定、筋押しのパラメータ設定などをJDFジョブチケットの形で指示を出すことができる。
JDFを利用したワークフローモデルを以下に示す。

PDF入稿の場合は、OAI   SYMBIO  上で、人が作業条件を指定してPDFにJDFジョブチケットを添付して、作業指示をするし、PDF入稿+MISからJDFが発行される場合は、そのまま自動セッティングされる。紙の伸縮対応などの微調整は後処理機のコンソール画面で行うことができるので、フレキシブルな運用が可能である。

2007/03/03 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会