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Microsoftの次世代Webアプリ戦略

〜「Web2.0時代のサイト構築」コンファレンス報告〜

PAGEコンファレンス、「Web2.0時代のサイト構築」は、Web2.0時代のWeb2.0時代のアプリ開発、サイト構築に必要なポイントを考察した。その中でWindows VistaやInternet Explorer 7の特徴、関連技術を用いたWebアプリケーション開発について、モデレータの小川誉久氏(モデレータ:デジタルアドバンテージ代表取締役)に解説してもらった。


RSS対応ブラウザを標準搭載

Microsoftが、新 OS「Windows Vista」を販売開始した。このVistaには新しいWebブラウザの「Internet Explorer7(IE7)」が標準で組み込まれている。Web2.0時代を考える上においては、ブラウザが新しくなったのは大きなポイントと考えている。
IE 7の一番重要なポイントは、RSSに対応したことである。一般ユーザから見ても、RSSというメディアのインターフェースは非常に身近になると考えている。ブログ購読などに使っていこうという人口は増えていくのではないか。

WPF(Windows Presentation Foundation)

Webアプリケーション開発という視点でVistaとIE 7を眺めてみると、リッチなグラフィックス・ユーザ・インターフェースが使える、視認性が高まるとか、操作性が良くなると言われている。しかし、実際どれくらい良くなるのかは、どんな新しいアプリケーションが出てくるのかということによる。また、リッチなグラフィックスを使うためにはハードウェア的に要求が高いと言われている。1年、2年かけてじっくり評価して、それから本格的に展開すると予想している。Windows95とかXPで起こったような劇的な早期の普及はなかなか難しいのではないか。
Vistaは.NET Framework 3.0の中のWPF(Windows Presentation Foundation)を使うことで、アプリケーションツールごとでリッチなグラフィックス・アプリケーションが可能になった。
WPFはVistaのネイティブアプリケーションを対象にしたインターフェースだが、MicrosoftはWPFのサブセット版としてWPF/Eを開発している。WPF/Eは、AdobeのFlashと同じような仕組みになると思う。サンプルを見るとWebマガジンというか、雑誌のページをめくるような操作ができる。またスプラウルというゲームソフトは、WPF/Eを使ってサーバからクライアントにプログラムをダウンロードさせて実行する。ほとんどWindowsのアプリケーションと変わらないことができている。

Ajaxを使ったアプリケーション開発も

例えばGoogle Mapなどに使われているAjaxというインターフェースを使ってWebアプリケーションを開発することもできる。Ajax向けの開発環境、ASP.NET AjaxをMicrosoftのVisual Studioという開発環境に追加インストールすることで、Ajax対応のアプリケーションを開発できるモジュールを提供した。したがって、Ajaxを使ったアプリケーション開発もMicrosoftのプラットフォームでできるようになる。
MicrosoftはOutlook Web Accessという、エクスチェンジサーバの上にあるメールソフトウェアにブラウザ経由でアクセスするWebアプリケーションを、Ajaxを駆使して作ったと説明している。外見はOutlookに見えるが、アドレスを入れると自動的にアドレス帳を探す、予定表の予定をドラッグ&ドロップで移動させる、右クリックメニューもアプリケーションのコンテクストで出すことができる。
Outlook Web Accessは、ビューのモードが2つある。IE向けのものと、FireFox等、別のブラウザを使う場合には簡易モードがある。Ajaxは、基本的にはブラウザに依存しないようなインターフェースということになっているが、リッチさを追求すれば、特定の環境に依存せざるを得ないような部分も出てくるようだ。
ブラウザに依存しない、なるべくジェネリックなものにするのか、それとも特定のIEなりのブラウザに依存してもいいからよりリッチさを追求するのか、そういう選択肢がWebアプリケーション開発者は判断として求められるだろう。

デザイナの領域を取り込む

Microsoftの今までの開発環境、Visual Studioは、プログラマがいて、C言語やC#などを使ってアプリケーション開発をしていた。しかし、Webデザイナ、グラフィックデザイナの領域は、Adobe製品を使っている人が多いと思う。Vista時代のリッチなアプリケーションをたくさん作って欲しい。そのためには、プログラマはもちろん重要だが、リッチなインターフェース、アニメーションとかパーツのグラフィックスなどを作ってくれるデザイナを何とか開発環境の中に取り込みたい。人を取り込むというだけでなく、開発環境としては統合化の方向にあるので、Expressionというツール群を使って作ったパーツを、例えばVisual Studioのディベロッパにそのまま持っていって使えるようにする。あるいは、ディベロッパが開発したパーツ群をExpressionに持ってきて貼れるようにするというように、開発環境の中で統合化を進めていくということであろう。
Expressionの紹介ビデオを見るとHTMLエディタだが、スタイルシート等、最新のものに対応しているし、標準対応を進めたと説明している。いろいろなブラウザのチェックができるという。Microsoftの大きな特徴としては、開発環境をずっと作ってきたので、例えばスクリプト開発などの部分では入力支援機能が、Visual Studioで洗練されたインターフェースがここでも使えるようになったということである。
Expression Webで作ったWebページの情報をVisual Studioに持っていくと、デザインしたばかりのWebページが開発者向けのVisual Studioでも見ることができる。Microsoftはこのようなツール群の開発を進めている。

開発環境は統合化の方向

VistaをベースにしたサーバOSも、2007年末か翌年出てくる予定である。つまり、リッチなグラフィックスを活かしたクライアントOSが広く普及してくる。 ユーザの視点で見ると、今までWindowsアプリケーションは非常にリッチで使いやすいが、Webアプリケーションはプアで使いにくい、遅いというのが一般的な認識だったと思う。そこの垣根が、今後、例えばWPF/EとかAjaxを使うことによって、だんだん見えにくくなってくる。ユーザから見ると、Webアプリケーションかローカルのアプリケーションなのかよくわからないという時代が、まもなくやってくると思う。
開発者の視点で見ると、今までWebアプリケーションを作るときには、全く異なるテクノロジーとか開発環境とか言語を使わなければいけなかった。Windowsアプリケーションもまた違った開発環境、言語を使って、インターフェースを使わなければいけないという形だったが、Microsoftとしては、これからはそこをなるべく統一化していきたい。
作るプログラムは、最終的にどういうテクノロジー、インターフェースを使うのかということに依存しないで、Webアプリケーション、WPF/E、あるいはWindowsアプリケーションとしてローカルにインストールすればいい。ただし、そこで必要となる開発スキルはメディアに依存するのではなく、あくまでも1本の統一されたものがあって、そこから派生的にいろいろ作り出すことができるというような状況になっていくと思う。

2007/03/10 00:00:00


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