従来型の機器のままでFA化しようとすると、MISや支援サーバーは各製造装置などとの煩雑なやり取りに対応しなければならないなど、MIS・工程管理・オペレータの負担が大きいと思われる。さらなる自動化を進めるためには、製造装置をもっとインライン化・クローズドループ化をすすめることによってMISや工程管理負担を軽減して、間接業務の削減やフレキシブルな生産体制への対応が向上するのではないだろうか。製造業の工作機械は1人のオペレータが複数台を操作するという状況の中で、印刷FAの行方を探った。(PAGE2007コンファレンス セッションE6 報告)
■プリプレス工程におけるFAの行方
大日本スクリーン製造(株) 企画統轄部 商品企画部 の原口氏から伺った。
1.製版工程のDigital化による作業の短縮
製版工程はDTP+CTPのデジタル化の進展で作業のが大幅に短縮されてきた。現在の自動化への取り組みは、入稿データチェック(Preflight)、台割り作成、プルーフ、検版、版出力をジョブチケットやホットホルダーを用いて自動化することである。ジョブチケットのテンプレートを仕事に合わせて組み合わせて選択して、自動処理を実現していく。また、面付け指示をMISで行う方向で進んできた。さらに、自動組版や自動画像最適化などの技術によって、処理そのものの自動化が促進される。 これらはTrueflownetとして取り組んでいる。
2.製版工程の作業内容
入稿データチェック(Preflight)・台割り作成・プルーフ・検版・版出力を、JOB Ticketのテンプレートを仕事に合わせて組み合わせたり、HotFolderによって自動処理を実現する。面付け後の検版として、製版工程でのプルーフ出力と刷版でのCTP最終出力との検版もおこなう。
しかし、製版工程におけるFA化の課題は、デザイン、印刷条件、製本仕様が決まっているわけではないことが多いという日本の事情がある。これへの対応は、プルーフ(文字校正、色校正、モアレ確認、修正後の確認)は「レスプルーフワークフロー」と言って、デザイン制作工程で、印刷結果を事前にシュミレーションすることにより、プルーフ工程の短縮を図る(出力回数の減少)ことである。
また、面付けへの対応では、面付け作成における変更(急な印刷機スケジュール変更、紙サイズの変更、製本仕様の変更など)は、急な刷版面付け変更を容易に対応できるようにして、刷版面付けを自動化していく。
日本の事情とは違うかもしれないが、CIP4における欧米型の面付けは、面付け指示をMISで行なうの方向性でJDF規格が進んでいる。
3.ユーザー事例
ある出版系のユーザーでは自社開発のソフトウエアーとHotFolder、JOBTicket、ファイル名ルール化によって、中古車雑誌のプリプレス工程の自動化を行っている。1日で最高で約3000ページの自動組版で処理しているが、入稿デジカメ画像の自動最適化変換(CGDC)は1日に1万5千点に及び、ページごとにPostScriptを出力して、面付け、校正出力も自動化されている。これらのプリプレス処理を、わずか2〜3名のスタッフが行なっている。
4.今後の方向 これからは、Web受注からFAへの方向であり、CTP-オフセットとデジタル印刷のどちらにも出力対応する、Hybrid Printing Workflowで受注から製本までが処理されていくだろう。
1.市場の変化と「ものづくり変革」
時代のトレンドは、個人が中心の時代にドンドン移っていて、作る側の事情から使う側の事情に重心が移ってきた。そして主役はメーカーからユーザーへと移行する中で、ユーザーの要求を創り込める会社が生き残るとすると、製品に、そして生産システムに「ものづくり変革」が求められているのが、社会の一般的な状況である。
印刷以外の製造業における工場の生産技術のトレンドは、能率の時代から個性を創る生産へ、製品開発サイクルの短縮に対応できる生産方式へと移行していて、多品種少量生産すなわちマーケティングや販売情報から設計・生産する方法の変革が求められてきた。モジュール設計と称して、多様なニーズへの変更容易にし、在庫を抱えない。機種間の共通性を上げてモジュール単位で量を生むような方向である。
製造のデジタル化では「情報」と「もの」の一致、すなわち、『情物一致』が重要である、印刷製造でもバリューチェーン全体の最適化が必要となってきた。
2.印刷機の自動化の状況
近年、オフセット印刷機の自動化は相当に進んできている。省力化装置としては、洗浄装置(インキ・ブランケット・圧胴)、自動刷版交換装置、ワンプ開梱紙積み機、リールシーター、さらにマテハンではAGV+自動倉庫などがある。また、プリセット装置としては、紙サイズプリセット(給・排紙)、印圧(紙厚)プリセット、インキキープリセットなどがある。
そして、計測・検査装置として、欠陥管理装置(インラインカメラ)、色調管理装置(カラーバー式,絵柄式)などがある。
今後は、MISからのデータにもとづいて行なうプリセットについて、過去の実績をデータベース化することによって、さらに高度なプリセットが出来るようになる。そして次なる技術的方向性としては、絶対値制御、安定化(一旦決めた色で同じものが複製)、一定濃度化に向かうことになる。
3.計測・検査自動化の限界
FA化では計測・検査自動化も重要であるが限界もある。色調管理でカラーバーによるオフライン式の絵柄読取では全数検査はできないので、人手による抜き取りのインターバルを決めておく必要がある、OKシートなどのターゲットとの濃度差のインキキーへフィードバックなどにも課題がある。
輪転機のインライン式検査装置を枚葉機に利用しようとすると、紙の尻側が浮いてあばれる問題があり、計測が難しいのが現状である。
4.FA化の課題
FA投資の気がかり事項としては、ITとの競争やボーダレス化の中でペイできるかの投資判断が難しい。IT投資や機械の自動化、さらに検査装置の付加で設備コストが上昇する。一気に更新できない設備や外注先もあり,総合的な効果が出難いだろう。
5.技術的方向性
(1)絶対値制御
センサー精度や制御プログラムの性能を高めて、制御対象が増やす方向である。
(2)安定化
一旦決めた色で同じものが複製できること、小ロット化ではロングランの安定性よりも立ち上がり重視されている。
(3)一定濃度化
材料の面から紙面インキ膜厚の変動に対して基準濃度付近の濃度変動が少ないインキが出来ないかということもある。
米国のACTION PRINTING社では、平均準備時間が、従来の中とじ機で68分であったものが、自動セット機で34分に、さらにネットワークされた機種で28分に短縮され、月平均の用紙節約額は約2,000ドル、生産性は35%改善されたと報告されている。
製本加工におけるJDFの項目は、製品の寸法(天地、小口、厚み)、断裁寸法(天地、小口、断裁代)、針金綴じ寸法(種類、寸法、本数)、積み出し情報(積高、レイヤ)などがある。
ポストプレスのJDFへの壁は、定義する項目が多いこと、装置の自動化が進んでいないこと、MISが普及していないこと、専門装置メーカーが多数あること、専業加工会社が多数であるなどの課題がある。
これに対してミューラー・マルティニでは、「ミニMIS」とデジタル印刷における統合型マシン「シグマライン」などを用意している。
ミニMISは製本機の操作パネルに次のような情報を表示できるようになっている。
(1)時間集計(準備、生産中断、空転、故障)
(2)JOBカウント(部数、開始、終了予定、製品数、損紙数/率、平均速度)
(3)オペレータ選択
シグマラインは、デジタル印刷と無線綴じ機や中綴じ機をインラインで接続する、世界初の産業用一貫生産のブックオンデマンドラインである。システムを管理する「シグマコントロール」は、ウィンドウズベースのIPCで、タッチスクリーンTFT、JDF対応、プリプレスシステムとのイーサネットリンク、プレスおよび各機器へのイーサネットリンク、製品トラッキングおよびジョブ管理、ジョブエディター機能、さらにインライン、ニアライン、オフラインのそれぞれに対応している。
2007/03/12 00:00:00