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デジタルワークフローに求められる検査のルール化と自動化

印刷物の製造工程は、DTPやCTPがなくてはならないまでに普及した。印刷会社では、この10年生産設備や人員配置を含めワークフローが大きく変わってきたのではないだろうか。
DTPによる生産手段が従来の環境と大きく異なる点は、「だれでも比較的容易に1人でできる」ことである。したがって、プリプレスというハードルが大幅に下がり、プロとアマの境界もなくなりつつある。

例えば、かつて文字組版は、写植機をはじめ電算写植やCTS(Computerized Typesetting System)など、だれにでもできるシステムではなく、手書き原稿やテキストデータをプロのオペレーターが専門の技能を駆使して組版した。画像処理も同様、スキャナによる色分解や集版、レタッチに至るまでプロの仕事であった。

しかし、DTP環境では、アマの参入が容易になり、安価なハードとソフトでかつてのプロと同等なデータ作成が可能になった。Photoshop等では、以前の製版では不可能なことまで簡単にできてしまう。ただし、できるということと、印刷用原稿としての適正は別問題である。

例えば、不具合のデータには、アウトライン化されていない欧文フォント使用の問題 や、プリントされたハードコピーではスミに見えていた罫線がデータ上では4色ベタに分版されていたというようなケースもいまだにあるという。

このように、現在でも印刷会社には印刷用原稿として適さないミスや不具合のあるデータが日々入稿されてくる。これらのデータが、工場の現場に流れると生産がストップするだけではなく、段取りやスケジュールまで変更せざるを得なくなり、大きなロスになってしまう。

これらを防ぐため、ある印刷会社では、入稿センターと呼ばれるセクションを設け、クライアントから受け取るデータをすべてチェックして、後戻りしないワークフローを構築しているケースもある。
入稿データは、数年前に比べるとミスや不具合は減少傾向にはあるが、それでもいまだ1割程度のデータに上記のような何らかの不具合があるという。その不具合の度合いに応じて、イエローカードやレッドカードといった分類(フィードバック)もしている。

また、プリプレスの現場では、デジタル検版の使用もルール化、自動化している。ここでは、手間をかけずに訂正部分以外のデータを保障することにより、確認作業の効率向上を実現する。

DTPでは、従来の製版に比べ1人で作業することが多いため他人のチェックが入るケースが少なくなった。よって、作業者のスキルがそのまま品質に直結する。まして作業者は、自分のおこなった作業は正しいと思う傾向もあり、自ら校正してもミスは発見しづらい。

さらに、デジタルの成熟による短納期、低コストの要求に応えるため、できるだけ手間やコストがかけられない現状もある。したがって、ミスや印刷事故を防止するためには、データのチェックポイントを明確にして、検査のルール化、自動化を確立する必要がある。


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 【デジタル時代の品質管理】

2007/04/16 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会