印刷前工程は殆どデジタル化されて環境も整備されたが、印刷現場では薬品が使われているため環境対策は遅れている。薬品は作業性がよく安価なものという基準で選ばれる。しかし、環境面・作業安全面で適切でないものが使われているケースがある。最近はインキをはじめメンテナンス薬品でも環境対策品が開発され一歩進んで環境対策をとれるようになってきた。
- ■二極化されている環境対応
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今まで環境問題の法規制は規制的手法と経済的手法があった。最近の方向は自主的取り組みをして会社が自らアピールする方向に移りつつある。ここで環境問題へ自主的取り組みをするかしないかで二極化が起きてきている。
- ■対象範囲を拡大したNL規制
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印刷インキ工業連合会では1973年に食品用の包装材料用に使う印刷インキに関して内容食品の衛生安全性の保持を積極的に推進するために厳しいNL規制(印刷インキの自主規制)を制定した。
2002年11月26日にNL規制準拠マークを作り、2006年5月に大幅に改善した。
- ■VOC3大発生源と対応
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オフセット印刷でVOCの3大発生源がインキと湿し水と洗い油だ。
大豆油インキは大豆を搾り石油系溶剤の代わりに再生可能な大豆油を使ったインキでアメリカのオイルショック後に新聞インキから始まった。
最近ではノンVOCのインキも開発されてすでに上市されている。このインキは石油系溶剤がゼロでその分は植物油及び植物由来の溶剤になっている。
湿し水についても労働安全衛生法が改正され作業者の健康を守るためにIPAの使用も5%以下に規制され、各メーカーでもIPAを使わなくても印刷できるエッチ液を開発され、今では全くVOC含んでいない湿し水も開発されている。
環境対応型の洗い油も開発されているが作業性とコストの2つの問題をかかえている。作業性については渇きが遅くなり、カラ拭き又は水拭きの作業が必要になる。
- ■普及が期待される無処理CTP版
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工場からの廃棄物が地球環境に負荷のかからないことを目的にしたゼロエミッション化への取り組みも進んでいる。最近では無処理CTP版の開発が進み、無処理CTP版と湿し水濾過装置をセットにすれば廃液は製版・印刷工程からなくなる。
- ■RoHS指令が印刷業界にも影響
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欧州の規制でRoHS指令があるがこれは重金属を全く含まないものしか製造または輸入できないというものだ。日本国内でも各関連メーカーがこの指令の対策をとるようになり部材を調達する際には重金属が全く入っていないものを納品しかつ入っていない事を証明させる。印刷物も納品するには重金属を含んでいない材料で製造されたことを証明しなければならないことになる。
このためには化学物質管理が重要でありそのための規制がPRTR法(Pollutant Release and Transfer Register化学物質管理促進法)だ。これには354種の化学物質が指定されている。
- ■印刷される環境関連マーク
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環境マークにはさまざまなものがある。従来はR100とSOY INKの2つが印刷されているのが殆どだった。最近はそれだけではなく、この印刷物は環境に優しい工程で製造されたことをアピールする時代になった。工場に与えられるクリオネマークとグリーン基準をクリアした印刷工程に認定するグリーンプリンティングマークがあり2006年3月にグリーン購入基準の内容が改訂されている。
また1997年に日本環境協会のエコマークも2003年12月にVersion2に改訂された。
さまざまな認証制度の登場は印刷業界における環境対応が幅広く進められていることを告知するために有効であるが、判断に混乱が生じる懸念もある。
(JAGAT info4月号より抜粋)