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中国・大連JapanWeek報告

中国の東北地区遼寧省大連市(写真1)のシャングリラホテルで、「中日国際人材友好交流大会」が、さる5月24日から26日までの3日間行われ、JAGATからは大鹿洪司会長、小笠原治常務理事、郡司秀明研究調査部長が招待された。これは、「DTPエキスパートin大連」講師募集の記事にあるように、2006年11月に大連市が東京で「大連Week」を行った際に、中国大連市でのDTPエキスパート試験実施に向けてJAGATが協力していくことを決めたが、今回はその一環として具体的な進展をするために、日本からエコーインテック株式会社の尾頭豊社長と同社の大連側法人である大連英浩信息技術有限公司の張立副総経理も加わって式典及び立ち上げ準備作業が行われた。

大連市は、記事「若い力でDTP・ITビジネスの飛躍を」にあるとおり、今高度経済成長まっしぐらの町で、外国企業が10000社ほどあり、そのうち日系企業は3486社にのぼり、製造業だけでなく、ソフトウェア開発、インフラ・建築などさまざまな面で活躍している。24日のJapanWeekのレセプションでは、松下電器産業会長中村邦夫氏が挨拶するなど、大企業系列の現地法人が中国市場および世界市場を対象に大きなビジネスをしている雰囲気が伝わってきた。後日に現地のDTP現場をいくつか見学(写真2)したが、どこも若い多くのオペレータが黙々と仕事をしており、特にインターネットの利用によって日本と全くタイムラグなく(あたりまえだが)スムースに仕事が進んでいる。パソコンを利用したこの種の職業は、設置されているマシンから見て、どこもだいたいここ3年くらいの間に整えられたように見える。CADやアニメなどはすでにいくつも専門学校や専科が存在するが、DTPに関しての公教育は今回JAGATが提携して行おうとしているものが初めてである。

JapanWeekレセプションには1000人ほどが招待され、その席上でJAGATと大連市がDTP人材開発を合作で行うことの調印(写真3 左:JAGAT大鹿会長 右:大連市外国専家局王元新氏)も行われた。中国国家レベルの国際人材交流協会の人の話では、中国には外国人専門家が34000人ほどいて、日本人は30%ほどである。大連の協会の人の話では、大連の外国人専門家の40%が日本人というように、日本が重視されている地域である。レセプションの式典では何十という中日提携の調印があったが、そのうちでもトップクラスの話題にDTPの学校立ち上げは入っていた。後日の大連電子学校での除幕式には地元のTV局の取材もあった。

5月25日には夏徳仁大連市人民政府市長(写真4 右端)との会見も行われた。大連は日本人が考える東南アジア的中国のイメージとはかなりかけ離れた町で、全般的に日本人には非常に好意的であった。町の雰囲気はサンフランシスコとかヨーロッパ的でさえあり、且つ安全である。大連の町の基礎はロシアが築きそれを日本が発展整備させた歴史的な経緯があり、そのことは今でもそれなりに評価されているようだ。元々この地は満族と朝鮮族の住むところで、近年に漢族が入ったため、中国風の古いものや猥雑なものは町の中にはない。こういった点も世界のTop500企業を誘致するのに役立っているように見える。バイクや看板の規制などもあり、徹底して美化をするという点ではシンガポールに近いものがある。

日本企業の中国進出に伴って、現地でのパッケージやマニュアルの印刷も盛んで、見学した海大印刷(写真5)はISO14000も取得している企業であって、工場内は日本にもってきてもきれいな部類で、しかも印刷品質も全く日本に劣らないものであった。日本メーカの食品や電子機器パッケージ印刷をしていて、印刷機自体は殆ど自動化オプションのついていないものだが、5色機を3人でまわしている。製本・後加工も全般を持っていて、それは相当人海戦術で行っている。CTPは入り始めたところで、まだプレートは高価なために普及はしていない。今は日本で作ったファイルを元に印刷しているが、DTPの現地化が進めば、翻訳から印刷までが一貫して大連でできるようになるだろう。この印刷会社以外で、パッケージ印刷工場予定や印刷団地計画などがちらほら聞かれた。工場はもう市の中心部に作る余裕は無く、周辺に移り始めている。

大連市はもともと大学などが多いところのようで、昔ながらの名前のいろんな大学がある。市中の開発としてはハイテクパークがいくつもでき、ベンチャー企業の孵化に力を入れている。これらはアメリカの西海岸的なもので、日本人でもうらやましいような環境が作られている。
また産業振興にともなって技術者育成が急務で、高専のような市立学校を増強している。ひとつはこれからDTP科が作られようとしている大連電子学校(Electronic School)で4000人の生徒を擁し、もうひとつは3000人を擁する大連計算機学校(Computer School)である。いずれもCADやアニメ、Webなどはすでに行っている。この地では企業が白紙からの教育をしないので、若者は先に職業に必要な基礎教育を経てから就職することになる。そのために職業訓練校的な要素ももっている。これ以外に民間でDTP教室などは先行しているが経営が不安定であったり、教室レベルではDTPという仕事を認知させることができないなどの課題がある。

今回の除幕式は日本から大連電子学校にDTPのできる人材を派遣して、まず教師を育成するためのもので、下記写真のように「人材培訓基地」という名称が使われている。写真右から2番目が校長先生、右から6番目が教育局、7番目が人事局、8番目が情報産業局の責任者の方々である。現在は教師用のテキストの翻訳が始まっていて、またこれから日本語DTPを学ぶに先立って、教師が日本語入力などを覚えることに取り掛かろうとしている。(2007年5月28日 小笠原治記)

現地の中国語の報告はここ

2007/05/31 00:00:00


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